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JFA審判委がJ1リーグ2事象で誤審認定…横浜FM戦の川崎Fオフサイドは「PKで再開」と見解、争点は小林悠の“インパクト”

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JFA審判委が説明

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は23日、都内で今季3回目のレフェリーブリーフィングを開き、J1リーグ戦の2つの事象について誤審があったと認めた。

 説明に最も長く時間が割かれたのは今月9日に行われたJ1第5節の川崎フロンターレ横浜F・マリノスのPKに関する事象。川崎FにPKが与えられるファウルがあったとしてVARが介入するも、最終的にFW小林悠のオフサイドと判定された場面について、佐藤隆治JFA審判マネジャーは「インパクト(影響)を与えているとは判断しない」として「PKで再開」すべきだったという見解を示した。

佐藤隆治JFA審判マネジャー

 この試合では前半45+1分、川崎FのMF河原創がワンタッチで前線の小林にパスを出すも、小林の手前でDF諏訪間幸成にカットされる。ただセカンドボールをMF大関友翔が拾った流れからMF伊藤達哉がMFジャン・クルードと接触し、ペナルティエリア内で転倒。主審はノーファウルと判定した。

 この事象を巡ってVARの介入が入り、御厨貴文主審はオンフィールド・レビューを実施。佐藤氏によると、主審は当初、上半身の接触を見てノーファウルと判断したというが、映像を見た結果右足の接触がファウルに該当すると判断したという。ところが続けて小林にパスが出た場面を確認。最終的にはPKではなく、その前に小林のオフサイドが成立していたとして横浜FMの間接フリーキックでの再開とした。

 小林はボールに触れていなかったため、争点になるのは諏訪間に「影響(インパクト)を与えたか」。競技規則第11条では「自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。または、相手競技者がボールをプレーする可能性に明らかに影響を与えるような明白な行動をとる」場合、オフサイドの反則となるためだ。

 また「影響(インパクト)を与えた」かどうかは以下の基準を満たすかどうかで判断される。

①攻撃側の選手がオフサイドポジションにいる
②ボールがオフサイドポジションにいる選手の近くを通過する
③オフサイドポジションの選手が影響を与えた相手競技者の近くにいる
④オフサイドポジションの選手がボールにプレーしようとしている(あるいは避ける動きをする)

 佐藤氏はまず小林の位置について「明らかにオフサイドポジションにいる」と前置きした上で「オフサイドポジションにいること自体は反則ではない」と強調。その中で小林の位置と動きに着目した。このシーンで小林はボールに向かって明確にアプローチするというより、その場でトラップしようと待つ形だった。小林と諏訪間の間には接触もなく、またボールとの距離に関しても「すごく近いかといったらそうでもない」と判断した。

 続けて諏訪間のパスカットについては「自分でボールに向かっていってプレーしている」との見解。もっとも小林が諏訪間の背後にいることによって、諏訪間はパスカットするために右足を伸ばしており、プレーにはインパクトを受けたとも思われる。ただ、そうした“心理的なインパクト”について佐藤氏は「(オフサイドを)考えるときには加味しない」と説明。「(オフサイドポジションの攻撃側選手が)もっと大きなアクションをした場合、例えばスルーをしてそれによってプレーができなくなったり、GKの前に立ってジャンプしたりした結果、後ろにいる(守備側)選手の反応が遅れたというまさに“物理的なインパクト”があるときがオフサイド」とし、背後にいることのみによってオフサイドが成立することはないことを示した。

 類似事象としては今月2日に行われたプレミアリーグ第30節のリバプール対エバートン戦の事例が挙げられる。後半12分に決まったリバプールのFWディオゴ・ジョタの決勝点は、MFライアン・フラーフェンベルフがオフサイドポジションのFWルイス・ディアスに縦パスを出し、ディアスの手前にいるエバートンDFジェームズ・ターコウスキーがスライディングでボールに触れたことから生まれていた。

 ここでのターコウスキーはディアスがいることによって体勢を崩しながらクリアを試みた形だが、現地審判組織のPGMOLは今月22日、「ディフェンダーの後ろで何もしていなければ、ペナルティは科されない」との見解を発表。「もし(ターコウスキーとの)接触があったとしたらルイス・ディアスにペナルティが科せられていたはず。しかし、実際には接触はなかった」としてゴール判定を支持していた。

 守備側選手にとっては厳しい基準だとする意見もあるが、佐藤氏は「攻撃側の選手からすると、最後に触ったのがディフェンスでも依然としてオフサイドになるケースもある」と攻撃側の立場にも言及。もし小林がこぼれ球を直接拾っていた場合、諏訪間は「反射的に体を伸ばした」状況でのプレーとなっていたため、オフサイド要件の「意図的なプレー」とは判断されず、オフサイドが成立したとみられる。

 加えて“たられば”ではあるものの、もし諏訪間がボールに触れずにボールが流れるか、パス自体がサイドに出ていた結果、諏訪間と小林が並走するような形になっていた場合は「オフサイドポジションの選手がボールにプレーしようとしている」と判断され、オフサイドが成立したとみられる。

 なお今回のブリーフィングでは、今月2日に行われたJ1第8節・セレッソ大阪ファジアーノ岡山でC大阪にPKが与えられるべきだった場面があったことも示された。

 この試合の後半8分、FWルーカス・フェルナンデスがペナルティエリア内から折り返したボールにFWラファエル・ハットンが反応。シュートを打つ直前、DF立田悠悟に後方から接触されて転倒するもノーファウルの判定を受けていた。佐藤氏は後ろからのチャージによるファウルでPKが妥当だったという結論を示した。

 扇谷健司審判委員長によるとこの日のブリーフィングの内容は22日、各クラブの代表者に共有されたという。

(取材・文 加藤直岐、竹内達也)

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