JFA審判委、浦和のFC東京戦同点弾を説明…混乱招いた“ゴール確定→VAR再チェック”の経緯
日本サッカー協会(JFA)審判委員会は28日、都内でメディア向けレフェリーブリーフィングを開催した。今月17日のJ1第17節・浦和レッズ対FC東京における浦和の2点目について、明確なオフサイドやハンドの証拠がないとしてゴールが認められた最終判定を支持しつつ、8分以上を要したVARチェックの流れについては「改善をしなければいけない」と説明した。クラブに対してもVARが使用した映像を用いながら、今回の事象を説明したという。
この試合では後半30分、1点ビハインドの浦和DFダニーロ・ボザがペナルティエリア内中央からMF金子拓郎のクロスに飛び込んだ。ボールはファーサイドに流れてゴールイン。中継映像では当初ボザの得点とみられていたが、リプレイ映像を見ると、MF松本泰志が最後に触れていたことが明らかになった。
ただボザがクロスボールに触れていた場合、最後に押し込んだ松本は明らかなオフサイドポジションだった。また、ボールは松本の左腕に当たっていたようにも見え、オフサイドとハンドの可能性が浮上。VARチェックが行われて得点が確定するも、スタジアムが騒然とする中で再びVARチェックが始まる異例の流れを経てやはり得点が認められた。浦和はその後後半アディショナルタイムに逆転ゴールを奪い、3-2で勝利している。
争点となったのはボザがボールに触れていたか、松本の腕にボールが当たっていたかの2点。佐藤隆治JFA審判マネジャーは「はっきりとした明白な間違い」の場合のみVARが介入する原則から、「すべてのカメラ映像を1個ずつ出して確認して、それをもってしても『絶対触れている、腕に当たっているとは判断できない』として最後(ゴールを)コンファーム(確定)したことは正しい」との見解を示した。ブリーフィングではVARが使用した映像と会話音声も公開され、中継でも映されていたゴール脇両サイドカメラ、ゴールラインカメラ、コーナーエリア後方カメラ、逆エンドのゴール脇カメラなどあらゆる映像を用いたもののの、VARはいずれも明確な証拠がないとの結論を下していた。
その上で佐藤氏は、8分以上のVARチェックの流れについても説明。VARが当初松本のタッチを認識せずにVARチェックを終えていたことを明らかにしながら、一連の経緯を紹介した。
JFA審判委が公開した資料によると、得点直後の各審判員の認識は以下の通りだった。
主審: 松本がボールに触れている事実を把握している。
副審2(直接判定した副審): ボザはオンサイドで得点と判断。松本がボールに触れている事実は把握していない。
副審1(逆エンドの副審): 松本がボールに触れた疑いを持ちつつも、遠い位置にいることもあって確信はなかった。
第4審: 松本がボールに触れている事実は把握していない。
VAR: オフサイドの可能性でボザの位置を確認(触れているかは断定不可能)。松本がボールに触れている事実を掴んでいなかった。
そうした中でVARはボザの位置がオンサイドだと確認したため、主審に「チェックコンプリート。アイコンファーム、ゴール(ゴールで確定)」と伝達した。主審はこれを聞き、VARが松本のボールタッチを認識していないものとは思わず、ゴールで確定したことを示してしまった。
これについて佐藤氏は「(主審を)庇うわけじゃない」と強調しつつ、VARはオフサイドチェックのみではなくゴールに入るまでをすべてチェックして終了する原則があることから、主審から松本の得点だとする発信がなかったことについては理解を示した。
ところがFC東京ベンチ前の副審1はもともと松本がボールに触れた疑いを持っていたこと、1分ほどの短時間でチェックが終了したことから、VARに対して「最後は当たっていないんだな?」「そのままセンタリングが入っているの?」「ワンタッチもないんだよね?」と投げかけた。するとVARはゴール裏からのカメラ映像と中継のリプレイ映像を見て、松本がボールに触れていたことをついに認識。主審に「もう1回チェックさせて。ごめん。新しい(ハンドの可能性など)のが出てきた。最後触っている」などと伝え、再開を待つように伝えた。
VARは再チェックする過程でボザのタッチ有無を改めて確認するとともに、「最後触っている選手のハンドかどうか」も確認。多くのカメラ映像を用いてハンド有無もチェックしたが、明確な証拠はないとして現場のゴール判定を確定した。主審は最終判定後、両チームの監督を呼んで松本のタッチを把握せずに一度得点を確定してしまったことが「我々のミス」だと謝罪。また、オフサイドとハンドの明確な証拠がないため当初の得点判定で確定したことも説明したという。
佐藤氏は今回のVARチェックについて、VARに疑問を投げかけた副審1の発信は「ものすごく大きかった」と称えつつ、VARに対しては「プロセスは良くなかった」として不十分なVARチェックで混乱を招いたことを反省点に挙げた。なお2回目のVARチェックもキックオフ前に行われていたため、仮にハンドやオフサイドが認められた場合はゴールを取り消すことが可能だった。
また佐藤氏は「クリアな証拠がないときは現場の判定をコンファームするというのを原則にやっていかないと」と述べ、4月20日に行われた湘南ベルマーレ対柏レイソルでVARの過介入があったことも紹介。柏FW垣田裕暉が前半45分にゴールネットを揺らすも、オンフィールド・レビューの末にトラップ時のハンドで得点取り消しとなったシーンについて、垣田の手や腕にボールが当たったかは映像からも不明瞭なため、当初のゴール判定でチェックを終えるべきだったとした。
(取材・文 加藤直岐)
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この試合では後半30分、1点ビハインドの浦和DFダニーロ・ボザがペナルティエリア内中央からMF金子拓郎のクロスに飛び込んだ。ボールはファーサイドに流れてゴールイン。中継映像では当初ボザの得点とみられていたが、リプレイ映像を見ると、MF松本泰志が最後に触れていたことが明らかになった。
ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) May 17, 2025
明治安田J1リーグ 第17節
浦和vsFC東京
2-2
⌚️ 80分
⚽️ 松本 泰志(浦和)#Jリーグ pic.twitter.com/kErKd11ZY7
ただボザがクロスボールに触れていた場合、最後に押し込んだ松本は明らかなオフサイドポジションだった。また、ボールは松本の左腕に当たっていたようにも見え、オフサイドとハンドの可能性が浮上。VARチェックが行われて得点が確定するも、スタジアムが騒然とする中で再びVARチェックが始まる異例の流れを経てやはり得点が認められた。浦和はその後後半アディショナルタイムに逆転ゴールを奪い、3-2で勝利している。
争点となったのはボザがボールに触れていたか、松本の腕にボールが当たっていたかの2点。佐藤隆治JFA審判マネジャーは「はっきりとした明白な間違い」の場合のみVARが介入する原則から、「すべてのカメラ映像を1個ずつ出して確認して、それをもってしても『絶対触れている、腕に当たっているとは判断できない』として最後(ゴールを)コンファーム(確定)したことは正しい」との見解を示した。ブリーフィングではVARが使用した映像と会話音声も公開され、中継でも映されていたゴール脇両サイドカメラ、ゴールラインカメラ、コーナーエリア後方カメラ、逆エンドのゴール脇カメラなどあらゆる映像を用いたもののの、VARはいずれも明確な証拠がないとの結論を下していた。
その上で佐藤氏は、8分以上のVARチェックの流れについても説明。VARが当初松本のタッチを認識せずにVARチェックを終えていたことを明らかにしながら、一連の経緯を紹介した。
JFA審判委が公開した資料によると、得点直後の各審判員の認識は以下の通りだった。
主審: 松本がボールに触れている事実を把握している。
副審2(直接判定した副審): ボザはオンサイドで得点と判断。松本がボールに触れている事実は把握していない。
副審1(逆エンドの副審): 松本がボールに触れた疑いを持ちつつも、遠い位置にいることもあって確信はなかった。
第4審: 松本がボールに触れている事実は把握していない。
VAR: オフサイドの可能性でボザの位置を確認(触れているかは断定不可能)。松本がボールに触れている事実を掴んでいなかった。
そうした中でVARはボザの位置がオンサイドだと確認したため、主審に「チェックコンプリート。アイコンファーム、ゴール(ゴールで確定)」と伝達した。主審はこれを聞き、VARが松本のボールタッチを認識していないものとは思わず、ゴールで確定したことを示してしまった。
これについて佐藤氏は「(主審を)庇うわけじゃない」と強調しつつ、VARはオフサイドチェックのみではなくゴールに入るまでをすべてチェックして終了する原則があることから、主審から松本の得点だとする発信がなかったことについては理解を示した。
ところがFC東京ベンチ前の副審1はもともと松本がボールに触れた疑いを持っていたこと、1分ほどの短時間でチェックが終了したことから、VARに対して「最後は当たっていないんだな?」「そのままセンタリングが入っているの?」「ワンタッチもないんだよね?」と投げかけた。するとVARはゴール裏からのカメラ映像と中継のリプレイ映像を見て、松本がボールに触れていたことをついに認識。主審に「もう1回チェックさせて。ごめん。新しい(ハンドの可能性など)のが出てきた。最後触っている」などと伝え、再開を待つように伝えた。
VARは再チェックする過程でボザのタッチ有無を改めて確認するとともに、「最後触っている選手のハンドかどうか」も確認。多くのカメラ映像を用いてハンド有無もチェックしたが、明確な証拠はないとして現場のゴール判定を確定した。主審は最終判定後、両チームの監督を呼んで松本のタッチを把握せずに一度得点を確定してしまったことが「我々のミス」だと謝罪。また、オフサイドとハンドの明確な証拠がないため当初の得点判定で確定したことも説明したという。
佐藤氏は今回のVARチェックについて、VARに疑問を投げかけた副審1の発信は「ものすごく大きかった」と称えつつ、VARに対しては「プロセスは良くなかった」として不十分なVARチェックで混乱を招いたことを反省点に挙げた。なお2回目のVARチェックもキックオフ前に行われていたため、仮にハンドやオフサイドが認められた場合はゴールを取り消すことが可能だった。
また佐藤氏は「クリアな証拠がないときは現場の判定をコンファームするというのを原則にやっていかないと」と述べ、4月20日に行われた湘南ベルマーレ対柏レイソルでVARの過介入があったことも紹介。柏FW垣田裕暉が前半45分にゴールネットを揺らすも、オンフィールド・レビューの末にトラップ時のハンドで得点取り消しとなったシーンについて、垣田の手や腕にボールが当たったかは映像からも不明瞭なため、当初のゴール判定でチェックを終えるべきだったとした。
(取材・文 加藤直岐)
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