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【特集】[リレー総括]08年Jリーグを振り返る(第2回)

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08Jリーグ総括(第2回)
(セルジオ越後/サッカー解説者)

 今季のJ1で負けの数が1桁だったのは優勝した鹿島アントラーズ(18勝9分7敗)と3位の名古屋グランパス(17勝8分9敗)だけ。今までのJリーグではなかったのではないかというほどに上位の成績が悪かった。どこも連勝したあとに連敗ばかり。優勝した鹿島だって7試合勝てない時があった。ハイレベルなチームがいなかったから、それでも優勝できた。マルキーニョスが取ったMVPにしても決めるのが難しかったんじゃない? マルキーニョスは得点王を取ったけど、21ゴールは決して多い数字ではない(※00年の磐田・中山雅史の20ゴールに次いで歴代2番目に少ない得点王)。1年の「顔」と言える存在が本当に見当たらないシーズンだったね。

 鹿島はACLで負けてナビスコ杯も負けて、天皇杯も負けてリーグ戦に集中できた。ただ、タイトルはひとつしか取れなかった。日本代表のレギュラーは内田しかいない。小笠原のケガもあり、飛び抜けた強さを発揮した訳ではなかった。でも浦和レッズがワシントンに代えて高原やエジミウソンといった新しいタイプのエース候補を獲得して、チームを変えようとして失敗したのに対し、鹿島はマルキーニョスや岩政、内田など主力選手が昨年とほぼ変わらなかったのが大きかった。そして最後の3試合は全部1-0。展開によっては負けていたかもしれない試合で勝ち続けたこと、他チーム以上の勝負強さを持っていたことがチームにタイトルをもたらしたと思うよ。

 浦和は選手が代わった上に監督も開幕直後に代わった。バタバタしたままスタートしたチームは、一度は立て直しかけたが、終盤戦で一度リズムを崩すと止まらなかった。この1年の中で苦しい時期はどのチームにもあったはずだが、我慢できなかったチームは後退してしまった。そういう意味では浦和にしても、新監督にピクシーを迎えた名古屋にしても、つまらないところで勝ち点を落としてしまったね。名古屋に関してはマギヌンがけがした時や出場停止選手が出た時に選手層の薄さが出てしまったと思うよ。

 各チームの軸になっているのは日本人ではなく、外国人。この構図は今年も変わらなかった。大分トリニータがウェズレイとエジミウソンらブラジル人中心のチームを作りあげて上位に進出したのはいい例。大分はブラジル人に金崎ら若い選手が絡み成績を残した。2位に入った川崎フロンターレもジュニーニョ、ヴィトール・ジュニオールといったブラジル人3人が力を発揮したことが大きかった。浦和やガンバ大阪が外国人で失敗して順位を落としたのに対し、マルキーニョス、ダニーロの鹿島、ヨンセン、マギヌンの名古屋も含めて外国人で成功したチームが最終的に上位に来ている。これは昨年までと全く変わらない。特別に大きな驚きのあったシーズンではなかったね。


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