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内田がピンポイントクロスでアシスト、支えてくれた監督と涙の抱擁

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[12.5 J1第34節 浦和0-1鹿島 埼玉]

 代表仕込みのピンポイントクロスが炸裂した。DF内田篤人がMF小笠原満男からパスを受けた瞬間、FWマルキーニョスとFW興梠慎三の2トップが反応し、ゴール前に走り込んだ。「ここしかない」というポイントを狙ったアーリークロス。ドンピシャリのタイミングで上がってきたボールを興梠がダイビングヘッドで捉えた。

 ちょうど鹿島のベンチ前からクロスを上げた内田は、そのままオリヴェイラ監督と抱き合って喜びを分かち合った。「つらいときに監督に声をかけられて楽になったこともあった。監督に救われた。人にめぐり合う運があるのかな」。

 今季はコンディションとの戦いだった。昨年からチーム、代表でフル稼働してきたツケか、試合中に嘔吐することもあり、症状を抑えるため鎮痛剤を服用したら今度は胃炎を発症するなど体調不良に悩まされてきた。

 「今年はすごい大変だった。いろいろ上手くいかないときもあったし、ほんとホッとしてます」。終わり良ければすべて良し、ではないだろうが、苦しみが喜びに変わった試合終了後には思わず涙もこぼれていた。

 「周りは3連覇という目で見るし、なんとかそれを止めようという気持ちもある。そういう中で決められたのはよかった」。王者としての責任。21歳の若者にかかる重圧も大きかった。

 だが、まだ今シーズンは終わっていない。「まだ天皇杯がある。今年取れるタイトルはすべて取りたい。全部のタイトルを取ると言って始まったシーズンだし、みんなで気を引き締めてやりたい」と、早くも12日の天皇杯準々決勝へ気持ちを切り替えていた。

 来季に向けても「ACLとリーグを取るのは難しいし、それはやってみたい」とさらなる野望を口にした。飽くなき向上心と貪欲さ。まだまだ成長を続ける内田にとっては、史上初の3連覇も通過点に過ぎないのかもしれない。

<写真>鹿島DF内田
(取材・文 西山紘平)

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