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震災から練習再開の鹿島「勝つことで勇気付ける」

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 鹿島アントラーズが復興へ向けて第一歩を踏み出した。11日に発生した東日本大震災によってクラブハウスの断水などライフラインに影響が出たことを理由に活動を休止していた鹿島が28日午前、茨城県鹿嶋市内のクラブハウスグラウンドで練習を再開。午前午後の2部練習でみっちりと汗を流した。

「みんな元気に集まったのでいいスタートが切れた」。MF本山雅志がホッとした表情で話していたが、地元の宮崎でトレーニングを積んでいたFW興梠慎三やMF増田誓志ら選手たちはそれぞれ4月6日のAFCチャンピオンズリーグ水原三星ブルーウィングス(韓国)戦へ向けてコンディション調整をしていただけあって、負荷をかけたランニング中心のメニューにも問題なく対応。帰国中のオズワルド・オリヴェイラ監督をはじめとするブラジル人選手とコーチングスタッフ、日本代表対Jリーグ選抜のチャリティーマッチ(29日)に出場するMF小笠原満男らは不在だったが、20人の選手たちが緑の芝の上を元気に走っていた。

 鹿嶋市内では依然断水している地域があり、周囲の町では電柱が倒れたり、建物が傾いている場所もある。また鹿島のクラブハウスは天井などに傷跡が残り、グラウンドなどにも多くの影響。そして市内ではこの日も体感する地震が複数回発生するなど、不安な日々が続いている。それでも選手たちはこの日、クラブでサッカーを再開しただけでなく、それ以外の面でも今できる活動を始めた。

 震災によって大打撃を受けた地元・岩手県大船渡市の状況を自らの目で確認した小笠原の呼びかけによって、選手たちはこの日、ジャージや子ども服といった支援物資を持参。より大きな被害を受けている東北地方への支援活動をスタートした。鹿島の井畑滋社長が「(復旧から)前を向いて活動していかなければならない時期になっている」と語ったように、まずは地元の復興を第一に考えながら、クラブ、選手個人も支援活動を行っていく計画だ。

 その中で迎える公式戦。チームは練習再開からわずか一週間あまりでACLを戦わなければならない。準備期間はほとんどないが、選手たちは何をしなければならないかを理解している。MF野沢拓也は「(震災による暗いニュースを)打ち消すくらいの力をアントラーズは持っている。茨城県全体で助け合っていきたい。(アントラーズが)優勝することが『みんなで頑張れた』という形になる」と勝利で地域を勇気付けることを宣言。DF中田浩二も「サポーター、被災地を勇気付けられるように勝つことが一番なんでしっかり戦ってきたい」と誓っていた。

 Jリーグの再開は4月23日に決定したが鹿島は4月6日にアウェーでの水原戦を行うほか、同13日に同じくアウェーでシドニーFC(オーストラリア)と戦うことが決定的。また4月19日にはホームの水原戦を国立競技場(デーゲーム)で行うことを調整中だ。震災によって大きな被害を受けたクラブであるにも関わらず、すぐに公式戦3試合を行わなければならない。ホーム・カシマスタジアムのスタンド、照明などが被害を受けていることもあり、井畑社長の言う「復興のシンボルとして(カシマ)スタジアムでゲームをする」という目標達成もまだ先となりそうだが、興梠が「やるからには全力でやる」と語ったように、チームはまず今ある環境の中でベストを尽くす。
 
(取材・文 吉田太郎)

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