beacon

戦いはこれから、仙台・関口「いい結果が出たとき泣こうと思います」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[4.23 J1第7節 川崎F1-2仙台 等々力]

 「故郷を取り戻すまで俺達は負けない!」「共闘」「巻き起こせ仙台旋風」「共に歩もう前を向いて」……。東日本大震災から復興を目指すベガルタ仙台のゴール裏スタンドには数々の横断幕などが掲げられていた。そしてウォーミングアップのために選手たちがピッチへ現れると大歓声と「ベガルタ仙台」コール。MF関口訓充は「サポーターの方がアップの段階から全てのコールをかけてくれて、歌ってくれていた。(気持ちは)自分たちにも伝わった。サポーターのためにも戦った」。

 震災によって甚大な被害を受けた街から駆けつけたサポーターの声援を力に戦い、逆転勝ち。それも過去7戦で1分6敗だったアウェー、等々力陸上競技場での勝利だ。それだけに試合後、選手たちは感謝の言葉を繰り返していた。エースのMF梁勇基は「みんな喜んでくれていたし、笑った顔とか見れてうれしかった。勝って帰るとキャンプが始まったときから思っていた。(川崎Fと)100パーセントの力でぶつかりあえたことを満足しているし、勝ったんでなおさらうれしい」

 今季鹿島から獲得したFWマルキーニョスが、東日本大震災のショックを理由に退団。元日本代表FW柳沢敦も、膝の手術を受けるため離脱した。だが「気持ちという部分で負けたくなかった」と関口が振り返ったように、チームは前半半ばから川崎FのMF中村憲剛を中心としたパスワークとMF登里享平らスピードあふれる突破にゴールへ迫られる回数を増やされていたが、それでもCB鎌田次郎が、MF角田誠が厳しいスライディングタックルでその攻撃をストップ。前半37分にサイドをえぐられて失点したが、その後は相手に決定的なシュートを打たせなかった。梁勇基は「タフな試合になるのは覚悟していた。出し惜しみはしたくなかった」。全員がフルパワーで相手と戦い、勝ちきった。

 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督が見つめる中での一戦。関口は「代表のことは考えられない状況だったし、上手いプレーよりも気持ちを前面に出して内容よりも結果にこだわったプレーをしようと思った」。個人のことは頭に置かず、とにかくチームのために、地元のために戦った。

 そして後半残り20分間からの2得点で逆転勝利。鎌田の決勝ゴールが決まった瞬間、これまで応援してくれた人たちへの感謝の気持ちで「泣きそうだった」という関口だが、この日は涙を流さなかった。「優勝争いしていい結果が出たときに泣こうと思います」。アウェーで強豪・川崎Fに勝った仙台たが本当の戦いはこれからだ。この日のように一丸となって戦い、復興を果たす。そして苦難のシーズン終了後、サポーターと共に歓喜の涙を流す。

[写真]仙台MF関口

(取材・文 吉田太郎)

TOP