beacon

ルーキーにまで注がれた“松田愛”、松本「マリノス最後の試合の日にも声をかけてくれた」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.6 J1第20節 柏2-0横浜FM 柏]

 改めて、故・松田直樹さんの後輩思いな面、人間の大きさを物語るエピソードが聞けた。この日、後半29分から途中出場し、今季初出場を果たした横浜F・マリノスのMF松本怜は「マツさんには本当によく声をかけてもらいました。毎日のように『お前はもっと上に行けるから頑張れ。攻撃力があるんだから、もっと上に行けるはずだぞ』と声をかけてくれていた」と明かした。

 松本は昨季がルーキーイヤーで、松田さんと一緒に練習、試合をしたのは当然、その年が初めてだった。だが、松田さんは、早大から入学したスピードが武器の攻撃的MFに対し、事あるごとに声をかけ続けた。当時の松本は怪我が多く、昨季は前半戦を棒に振ったが、松田さんの励ましで心が奮い立ったという。

 松本にとって今でも忘れられないのが、昨年12月4日の大宮戦後の出来事だった。松田さんにとって、横浜FMの一員として最後の試合となった一戦。松田さんはその試合後に、サポーターの前で涙ながらに別れの挨拶をしたが、そういう心境下の中でも、試合後に声をかけてくれたという。「マリノスで最後の試合の日にも声をかけてくれた。『お前はもっと上に行けるからな。頑張って続けろよ!』って」。

 十年来の友人や公私共にずっと親しくしていた後輩ならまだしも、まだ1年目の自分に気を使ってくれたことが嬉しかったという。偶然にも、松田さんが永眠されてから最初の試合で、今季2度目のベンチ入り&初の試合出場。松本は12月4日のことを思い出しながらピッチに飛び出した。当然、アドバイスを受けた通り、持ち味の攻撃力を発揮しようとした。対面はA代表候補にも入ったDF酒井宏樹だったが、持ち味のスピードで苦しめる部分もあった。

「きょうは、マツさんに言われてたこと(攻撃力)を意識してやりました。突破のところは見せられたかなと思う。でも、結果を出せなかった。逆転に導けるような動きをしたかった。今日は特別な試合だったので……」

 松本は本当に申し訳なさそうな表情を浮かべていた。これを見ると改めて、松田さんの影響力は、MF中村俊輔やDF栗原勇蔵らの主力だけではなかったと感じる。愛情は、まだ芽が出ていない若手にまで注がれていた。松本に限ったことでなく、多くの若手を叱咤激励してきたことだろう。松本ら若手たちがそんな“松田さんの魂”をしっかりと受け継いだ時、横浜FMは再び黄金期を迎えるかもしれない。

[写真]横浜FMのMF松本(18番)

(取材・文 近藤安弘)

TOP