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「号泣するのが常だけど…」PK失敗の呉屋に指揮官の“愛あるイジリ”

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PK戦でボールをセットするFW呉屋大翔

[10.15 ルヴァン杯決勝 G大阪1-1(PK4-5)浦和 埼玉]

 重責を担ったルーキーを責める者はだれ一人いなかった。PK戦の末、涙をのんだガンバ大阪長谷川健太監督は試合後の記者会見でジョークをまじえながら、PKを失敗したFW呉屋大翔をかばった。

「決勝で負けると、悔しさはだんだんこみ上げてくるもので、大阪に着くときにはきっとマックスになって、『なんであのときこうしなかったのか』『なんで呉屋を(PKキッカーに)指名したのかな』と考えていると思う」

 1-1のまま突入したPK戦。その4人目のキッカーを大卒ルーキーの呉屋が務めたのは驚きでもあった。その理由を指揮官が自ら説明した。

「最初は他の選手に蹴らせようとしたが、決めていた選手が『蹴りたくない』と拒否して……。そのとき呉屋と目が合った瞬間、『蹴ります』と。なんて勇気のある、気持ちのある選手だろうと思った」

 ボールをセットした呉屋は落ち着いているように見えた。しかし、渾身のキックはコースが甘く、GK西川周作のほぼ正面を突いた。足で止められ、痛恨のPK失敗。浦和は5人全員が成功し、PK4-5で敗れた。

 PKキッカーに立候補したのが強心臓なら、PKを失敗したあとも肝は据わっていた。涙一つ見せずに悔しさをかみ殺した22歳に指揮官は「ただ、泣いていなかったのが……。新人で外したら、『すみません、すみません』と号泣するのがPKの常だけど」と苦笑い。DF藤春廣輝も「監督に逆にイジられていた。PKを外したら『すみません』とか言えよって」と、2人のやり取りを明かした。

 延長後半15分にはポスト直撃のシュートも打った呉屋。ヒーローになりかけたところから一転、悲運に見舞われた。DF米倉恒貴は「ヒーローになるかなと思ったけど、1年目で決勝でPKを蹴って外すというのはすごい経験だと思う」と指摘。「次は決めてくれると思う。泣いてなかったし、メンタルが強いんじゃないですか」と、その度胸に感心した。

 PKの名手であるMF遠藤保仁は「本来であれば、PKを外す経験はしないほうがいい」と前置きしながらも、「自信を持って蹴って外したら仕方がないと、蹴る前にみんなに伝えていた。大舞台で外す経験は僕もしている」と擁護。長谷川監督は「PKは外したけれど、ここから成長して、いつかガンバにタイトルをもたらしてくれると思う」と今後の成長に期待し、「呉屋の責任ではなく、決めた私の責任。ただ、彼が使いたくなるような、蹴らせたくなるような内なるパワーを秘めた選手であるのは間違いない。結局は私がもっていなかったということ」と、最後まで自らの責任を強調していた。

(取材・文 西山紘平)

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