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“ナビスコ男”大迫、3戦連発弾でMVP。「自分が試合に出て優勝するのは気持ちがいい」

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[10.29 ナビスコ杯決勝 浦和0-1(延長)鹿島 国立]

 真っ赤に染まった聖地で、スタンドからの視線を一身に浴びた。鹿島アントラーズのFW大迫勇也が延長前半15分に決勝弾を決め、9年ぶりのナビスコ杯制覇に導いた。名門に15個目のタイトルをもたらしてMVPも獲得。メインスタンドのテラスで表彰を受けた若きストライカーには、満面の笑みがこぼれていた。

「嬉しいです。自分が試合に出て優勝するのは気持ちがいい。こういうタイトルを積み重ねていきたい。ゴールの場面? 慎三(興梠)さんは僕しか見ていなかったので来ると思った。枠の中に蹴りさえすれば入るというボールだった。良いボールをくれて感謝してます。MVP獲得? みんなに感謝したいです」

 劇弾は105分目に生まれた。ともに退場者を出し、スコアレスのまま試合が進んでいた延長前半15分。左サイドでFW興梠慎三がFW田代有三とのワンツーで抜け出してグラウンダーのクロスを入れた。ファーサイドに走り込んだ大迫は、丁寧に右足を合わせてゴールネットを揺らした。まさに“ナビスコ男”。これで準々決勝・横浜FM戦、準決勝・名古屋戦とナビスコ杯3戦連発だ。大迫が優勝に導いたといっても過言ではない。

 FWにとっては、悔しい時間帯が続いていた。後半5分に浦和MF山田直輝が退場。鹿島は数的優位となり、圧倒的にチャンスを作った。後半18分にはMF遠藤康に代えてFW田代有三を投入。3トップに変更し、大迫は左FWに入ってゴールを目指した。外と中と、うまくボールを運んだが、引いて守る浦和の守備が堅く、うまくこじ開けられなかった。

 じれた展開が続く中、後半35分にDF青木剛が2枚目の警告を受けて退場。再び10対10になった。こういう場面、サッカーの神様はしばしば、勝利への風向きを変えるものだが、成長著しい背番号「9」は動じなかった。「調子はあまり良くなかったけど、こういうときこそチャンスが来ると思っていた」。言葉通り、ここぞの場面が車で集中力を切らさなかった。後ろで見ていたDF中田浩二は「若い選手がチャンスをつかんでいるけど、だんだんとゲームが読めるよになってきた」と評価した。

 これで“国立の無念”を完全に払拭したと言っていい。国立競技場では、鹿児島城西高3年時の全国高校選手権決勝で1得点に終わり、チームも準優勝に終わった過去がある。FW平山相太(国見)を抜いて選手権の通算最多得点記録を樹立したが、国立にはあまり良い思い出はなかった。そんな中、今年の元日の天皇杯決勝の清水戦。大迫にゴールはなかったが、2-1勝利に貢献して日本一に輝いた。そして、この日は自らの決勝弾で栄冠をつかんだ。“国立男”の襲名にまた一歩近づいた。

 今季は絶対的エースだったFWマルキーニョスが退団。外国人補強に失敗したところもあり、大迫や興梠、田代ら日本人ストライカーに期待が寄せられた。万能型で柱になれるタイプの大迫には、エースとして覚醒することが期待されたが、リーグ戦はわずかに4得点。チームも早々に優勝の可能性がなくなり、大迫は責任を感じていた。ひとまず“リベンジ”に成功した形だ。

 大迫には今後、クラブでの16個目のタイトルとなる天皇杯のほか、ロンドン五輪出場を目指すU-22日本代表のエースとしての仕事も待っている。現状、FW永井謙佑(名古屋)とポジションを争っている状態だが、ナビスコ杯MVPを弾みにレギュラーに定着し、アジア予選で活躍したいところだ。

「もっと結果を出さないといけないポジション。それに向けて準備していきたい。これを次に繋げたいと思う」

 表彰式後にピッチ上で行われた記念撮影では、大迫はMF小笠原満男にカップを手渡され、満面の笑みで天高く掲げた。くしくもナビスコ杯のMVPは、鹿島ではDFジョルジーニョ(97年)、中田(00年)、小笠原(02年)に続く4人目となった大迫。小笠原や中田ら黄金世代に支えられて名門の地位を維持している鹿島だが、今後は若い世代が中心になることが求められる。その先頭を走る男として、大迫にさらなる期待が集まる。

(取材・文 近藤安弘)

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