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[Jユースカップ]川崎F U-18がダービーを制す。夏に得た粘りで、湘南ユースの猛攻を退ける

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U-16日本代表FW宮代大聖(川崎F U-18、左)とU-17日本代表DF石原広教(湘南ユース)のマッチアップ。宮代は「(石原は)強いし、上手い。でも負けたくなかった」

[10.9 Jユースカップ1回戦 川崎F U-18 2-0 湘南ユース 等々力]

 10月9日、Jユースカップ第24回Jリーグユース選手権大会の1回戦が全国各地で開催された。等々力陸上競技場では注目の好カード、川崎フロンターレU-18と湘南ベルマーレユースの“神奈川ダービー”が行われ、川崎Fが粘る湘南を振り切り、2-0で勝利を収めた。

 立ち上がりは昇格内定のMF田中碧を軸にボールを動かしたい川崎Fに対し、湘南が前からのプレッシングを狙うという構図。「(湘南が)前から来るのは分かっていた」(田中)とは言うものの、なかなか効果的に相手のプレッシャーを外し切れず、ボールを前に運べない時間帯が続いた。もっとも、「アグレッシブさが足りなかった」と湘南・貞富信宏監督が首をひねったように、湘南にとっても相手ボールを奪い切れず、なかなか速攻が結実しない流れは不満のあるもの。双方にチャンスらしいチャンスが生まれぬまま、時間が過ぎていった。

 試合が動いたのは前半も40分になってから。湘南が奪ったボールを繋ぐかクリアするか中途半端になったところから川崎F DF小川真輝がボールを奪還。MF大曽根広汰のラストパスから最後はMF道本大飛が冷静な右足シュートを決めて、試合を動かした。川崎Fの今野章監督が「最後の大会への思いがある3年生がやってくれた」と目を細め、湘南・貞富監督が「間合いを空けるような対応。ポッと守備が抜けてしまった」と落胆した一瞬の明暗を経て、こう着していた試合は動き出した。

 前半のシュート数は川崎Fの2本に対し、湘南は1本。どちらも形になる攻めは少なかったが、フィニッシュワークの精度の差が後半のスコアにも影響を及ぼすこととなる。4分、勝負の2点目を奪ったのは、川崎F。右サイドから大曽根のクロスに合わせたのは、U-16日本代表のFW宮代大聖。「みんなで2点目が大事だという話はしていたし、とりあえず(クロスに)突っ込んでやろうと思っていた」(宮代)というシュートが決まり、川崎Fが2点のリードを奪った。

 湘南は「タメを作れる、仕掛けられる選手(MF広石宗大、FW和田響稀)をベンチに残して後半勝負のイメージはあった」(貞富監督)だけに、この失点は痛恨だった。ただ、それで諦めてしまうようでは“ベルマーレ”ではない。エンジンをかけ直してアグレッシブに相手ボールを狩り獲り、セカンドボールを拾っての連続攻撃を仕掛けてゴールに迫る。交代出場の和田の仕掛け、U-17日本代表DF石原広教(昇格内定)の攻撃参加など厚みのある攻撃で相手ゴールを脅かし続けた。

 ただ、「夏の全国大会を経て、苦しいゲーム展開に対する免疫がついた」(今野監督)という川崎Fも粘る。何より、GK早坂勇希が再三の好守を見せたのも効いた。トップチームへの練習参加で大久保嘉人のシュート練習や中村憲剛のFK練習に付き合い、「漫画のようなシュートを観てきた」守護神にとって、ユースレベルでのシュートは「怖くなくなっていた」(早坂)。「5、6回はあった」(今野監督)というピンチ、後半だけで14本ものシュートを浴びながらも、守備陣と連係してシャットアウト。川崎Fが“神奈川ダービー”を2-0の快勝で制し、2回戦へと駒を進めた。

 一方、惜しくも敗れた湘南だが、終盤は川崎Fを完全に圧倒して底力は見せた。「最後の時間帯はウチのやりたいサッカーを体現できた」と総括した貞富監督は、「川崎Fさんのような強豪と普段から切磋琢磨できる環境を手に入れないといけない」と、残された宿題となる神奈川県ユースリーグ制覇とプリンスリーグ関東昇格というもう一つの目標達成を誓った。

(取材・文 川端暁彦)
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