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自分たちだからこそ表現できる「広島スタイル」。70分間ひたむきに戦い続けた広島県が難敵に6-0快勝!

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前半21分、MF森本凜(瀬戸内高2年)の先制点を喜ぶ広島県の選手たち。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[10.1 国体少年男子準々決勝 富山県 0-6 広島県 北海浜多目的球技場]

「広島スタイル」を貫く――。第74回国民体育大会 「いきいき茨城ゆめ国体」サッカー競技少年男子の部は1日に準々決勝を行い、広島県が富山県に6-0で快勝。広島県は2日の準決勝で香川県と戦う。

 試合中、広島県の岩成智和監督(広島ユース)から選手たちへ向けて、幾度も「俺らしかできないことがあるやろ!」「俺らしかできんことをやり続けろ!」という声が飛んでいた。それは僅差の状況でも、点差が開いてからも一貫。「全力で、ひたむきにやり続ける」(岩成監督)という「広島スタイル」をやり通した広島県が、難敵・富山県を圧倒して2年ぶりの準決勝進出を果たした。

 富山県の先発はインターハイ準優勝メンバーのMF中川晟(1年)をはじめとした富山一高の7選手とキャプテンのMF宮下史吹(2年)ら富山U-18の4選手による11名。前日の初戦では前評判の高かった青森県を1-0で破って20年ぶり、国体のU-16化以降は初となるベスト8に駒を進めてきていた。

 対して、広島県はキャプテンのFW菅野翔斗(2年)ら広島ユースの9選手とMF森本凜(瀬戸内高2年)、左WB田部健斗(広島皆実高1年)が先発出場。2回戦では後半アディショナルタイムにMF棚田遼(広島ユース、1年)が劇的な同点ゴールを決め、PK戦の末に勝ち上がってきていた。

 ともに3バックを活用する両チームの戦いは個々の技術力高い広島県がボールを握って攻めたが、守備意識の高い富山県の守りは分厚く、ゴール前へのクロスを着実に跳ね返していく。それでも、3バックの中央に入ったDF西村岳(広島ユース、1年)やMF池田柚生(広島ユース、1年)を中心にショートパス、サイドチェンジを活用しながら攻める広島県は、富山県の守りにできたズレを的確についてゴールを連発した。

 前半21分、広島県は池田とのパス交換で前を向いた棚田が相手3バックのギャップを突くスルーパス。右サイドから斜めに走り込んだ森本がGKをかわして左足でゴールを破った。「2年生なので自分が決めて、試合を決めようと思って試合に臨みました。棚田遼と目が合って抜けることができたので点に繋がったと思います」という森本の先制点。早生まれの2年生MFが広島県を勢いづけた。

 先制された富山県は26分、FW大井優太郎(富山一高、1年)とMF杉本和真(富山一高、1年)の2人でカウンター攻撃を完結させようとしたが、広島県はGK波多野崇史(広島ユース、1年)が大きく飛び出してクリア。富山県は幾度か速攻にチャレンジしようとしていたが、MF藤野和樹(広島ユース、1年)をはじめ攻守の切り替え速い広島県の前にボールを奪われ、攻め切ることができない。杉本がロングスローを投じるシーンもあったものの、それもわずか。CKがゼロに終わるなど、青森県を仕留めたセットプレーの数を増やすことができなかった。

 一方の広島県は前半34分、菅野が右サイドを個で突破。中央でボールを受けた森本がDFを引きつけて左前方へ流すと、最後は棚田がニアに豪快な右足シュートを突き刺した。さらに後半1分、広島県は藤野のスルーパスから菅野が加点する。

 点差を広げた広島県は森本、棚田、菅野の前線3人による崩しや田部の飛び出し、池田のサイドチェンジ、そして切り替えの速い守備など良いところが多く出るゲームに。DF香取潤(広島ユース、1年)とDF豊田将大(広島ユース、1年)の両ストッパーも隙を見せずに守り続ける。

 そして後半16分、左クロスのこぼれ球を棚田が左足で決めて4点目。28分には右WB光廣健利(広島ユース、1年)の左クロスを交代出場MF高柳英二郎(広島ユース、1年)が豪快に決めて5点目を奪う。富山県も左WB富田脩平(富山一高2年)らが身体を張って戦い、交代出場のMF里見龍太郎(富山U-18、2年)中心にボールを繋いで攻め返していたが、FW辻功平(富山一高1年)の右足ボレーがGKの正面を突くなど得点を奪うことはできず。対して、最後までひたむきに走り続けた広島県は、アディショナルタイムに交代出場FW山根留偉(如水館高2年)が自ら獲得したPKを右足で決めてゴールラッシュを締めた。

 広島県は16年大会で選抜チーム大会移行後初となる国体制覇。続く17年大会も準優勝している。この数年間で明確な「広島スタイル」が確立され、それを継承。ベースにある「広島スタイル」が試合を通しての攻守におけるハードワークや切り替えの速さ、激しさ、運動量に繋がり、大分県戦のような「諦めない強さ」も生み出している。

 第二次世界大戦での被爆から復旧・復興を果たした広島県。岩成監督らコーチ陣は選手たちにその歴史を改めて説き語り、「悲しい過去をみんなの喜びに変えよう」「見た人が感動するようなサッカーをしよう」と広島県だからこそできることをチーム全員で表現しようとしている。

 森本は「切り替えを速くして球際とか強く行ったりして、(ボールを)取られた瞬間蹴らせないようにする。(この試合では)最後まで自分もできたと思います」と胸を張った。そして、「この勢いで決勝まで行って優勝できたらいい」。広島県は目の前の一戦一戦で全力を出し切り、人々の心を動かすようなサッカーを貫いて再び、頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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