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[MOM4015]青森県DF山本虎(青森山田、2年)_本来いるべき場所へ…後輩をサポートし、先制ヘッド

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青森県のチームリーダー、DF山本虎(青森山田高、2年)が快勝に貢献

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.2 国体少年男子1回戦 青森県 3-0 長崎県 下野市大松山運動公園 陸上競技場]

 今年の青森県は、メンバー全員が青森山田高の選手。同校の黒田剛監督が「鍛えて、また日本一を狙いたい」と期待を寄せる1年生が顔を揃えるが、長崎県との1回戦では高校に入って初めての全国大会ということもあり、プレーからは緊張感が見られた。自陣からボールを繋ごうとする相手に対し、前からの守備がハマらず、前半は押され気味の展開となったが、後半に入ると唯一の早生まれであるキャプテンのDF山本虎(青森山田高、2年)が大仕事を果たした。
 
 Aチームでスタメンの座を掴めていないが、プレミアでは3試合に出場し、インターハイにも出場した。「経験はこのチームで1番あると思っているので、伝えられるようにコミュニケーションを取りながらやっている」。そう口にする山本は前半から、普段通りのプレーができないチームメイトに対し、優しく声をかけ、持ち味が出せるよう働きかけた。プレー面でも、売りである左右両足から放つロングフィードでアタッカー陣への配球を続けた。

 硬さがとれた後半は長崎陣内でのプレーが増えながらも、1点が奪えないまま時間が進んだ。それでも、後半21分にはMF山口元幹(青森山田高、1年)が上げた右CKを山本が頭で合わせて先制ゴール。「今季は1度セットプレーから決めていたので、同じようにイメージしていた。今日も絶対1回は自分に来ると思っていた。ヤマゲン(山口元幹)が良いボールを上げてくれたので、あとは自分が競り勝つだけでした」。頼れる主将のゴールで勢いに乗ったチームは、23分、25分と山口が連続ゴールを奪って、3-0で勝利した。

 青森山田中時代から高身長とロングフィードを評価され、コンスタントに世代別代表に名を連ねてきた山本だが、高校に入ってからは納得のいくプレーができずにいた。「青森山田高では泥臭さが求められる。昨年は三冠した代の中で練習をやらせて貰ったけど、強度がとても高かった。筋力や守備の部分でも苦労しました」。加えて、昨年9月に右足の第五中足骨を手術し、戦線離脱。年末には実戦復帰したが、コンディションが上がり切らず、年明けにスタートした今年のチームから出遅れた。

 青森山田のAチームは同日にプレミアリーグの横浜FCユース戦を戦っている。明日3日に初戦を迎えるAFC U17アジアカップ2023予選のメンバーに選ばれたため、今回の国体の出場を回避した同年代の選手も少なくない。立ちたかった舞台に立てない悔しさが、今大会で山本が奮い立つ原動力になっている。「プレミアで、スタメンで出られない悔しさはもちろんある。今、U-16日本代表がアジアで戦っているのも凄く悔しく思っている。でも、国体で活躍して優勝したら絶対、自分にもチャンスが来るはず。あと4試合全部勝ったら優勝なので、悔しい気持ちを切り替えて頑張っています」。

 怪我の間にフィジカルを鍛え、ひ弱だったこれまでの印象からは変わりつつある。無失点で試合を終えながら、「前半と後半の最後にシュートを打たれてしまった。前半は失点してもおかしくない場面があったので、PAに侵入させないようにゴール前はもっと相手にアプローチして、ゴールを隠す守備をもっとやらなければいけない」と悔しさを滲ませる姿からは、青森山田のCBが発する逞しさも感じる。2回戦以降も成長した姿をプレーと結果で示せれば、彼ら本来いるべき場所へと戻れるはずだ。


(取材・文 森田将義)
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