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[総理大臣杯]スター不在の“ダークホース”流通経済大、チーム一丸で決勝進出!

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[8.15 総理大臣杯準決勝 流通経済大1-1(PK5-4)福岡大 長居]

 15日、第37回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント準決勝が長居スタジアム(大阪府)で行われた。福岡大(九州2)対流通経済大(関東3)戦は流経大が1-1で突入したPK戦の末、5-4で勝利。決勝(8月17日)進出を決めた。

「今大会は関東の3位として出てきたダークホース的な存在。これまでは『いい選手を抱えて、いいサッカーをやらなきゃいけない。ただ勝つだけじゃなく、魅力あるサッカーをやらなきゃならない』という気持ちがあったけど、今はまず皆が一生懸命やるということをベースにしたチーム」。

 中野雄二監督の言葉通り、立ち上がりこそ、FW山崎凌吾(3年=玉野光南高)ら高さとパワーを備え、個の力で上回る福岡大の攻撃陣にシュートを許す場面もあったが、流経大はCB藤原雅斗(1年=C大阪U-18)らDF陣がしっかり身体を張った守りで対処。守備からチームのリズムを作り、後方からの丁寧なボール回しから今大会ここまで3ゴールを挙げるMF江坂任(3年=神戸弘陵高)、FW久保武大(4年=福岡U-18)ら攻撃陣の動きを引き出し、徐々に試合の主導権を握り始める。

 試合が動いたのは前半32分。「大阪に来る前の合宿でスローインからいかにチャンスを演出するかをテーマにして、かなり練習してきた」(中野監督)という狙い通り、流経大は右サイドの高い位置でスローインからのパスを受けた右SB湯澤聖人(2年=流通経済大柏高)のクロスをゴール前でFW久保が合わせて、先制点を奪い、前半を終える。

 1点リードで迎えた後半は、「前半までの自陣に深くとって守る戦い方でここまで来たけど、どこかのタイミングでその力を前にかけるのを狙っていた。後半は日陰に入ったので、これまでの2試合と違って体力の消耗もしていないし、『ボールを高い位置から奪いにいきたい。攻撃も思い切って行きたい』と選手たちが言い出した。その力を思う存分出してくれたと思う」(乾真寛監督)という福岡大が、反撃を開始する。

 4バックから3バックに変更し、後方から高さのある山崎、途中出場のFW加部未蘭(1年=山梨学院高、前・ギラヴァンツ北九州)の2トップへと展開。ポストプレーからサイドへと開き、折り返しを狙う形でチャンスを作り、後半10分にMF田村友(3年=九州国際大付高)のパスを途中出場のMF山道淳司(2年=東海大五高)がゴール左隅に決める。

「見事な同点ゴール」(乾監督)という一撃で追いついた福岡大はその後もチャンスを作ったが、GK八巻楽(4年=聖望学園高)を中心に粘り強い守備を見せた流経大がきっちりシャットアウト。両者、勝ち越し点を奪えないまま勝負の行方は延長戦へと突入するが、前後半計20分間の延長戦でもスコアは動かず、勝負の行方はPK合戦へと持ち越された。

 PK戦でも両者4人目までのキッカーがきっちり決めて、両者譲らず迎えた5人目。先行の流経大FW石井雄輔(4年=流通経済大柏高)が左隅に決めたのに対し、福岡大主将のDF大武峻(4年=筑陽学園高)のキックは無常にもクロスバー直撃。流経大が決勝への切符を掴んだ。

「今年のチームにはDF山村和也(現・鹿島)のようなスーパースターはいないけど、これだけやれるかなという手応えは予選の時からあった」。流経大・中野監督が今大会に手応えを感じた一番の要因はこの日もスタンドから、最後まで声を出し続けた応援団の存在だ。

 試合後、選手たちに声をかける応援団の姿を眺めながら、中野監督は「学生が『日本一愛される集団』になりたいって言い出して、試合に出られない4年生が率先して応援の風景を作ってくれている。ピッチの11人がうんぬんより、大学のサッカー部としてのちゃんとした組織体がチームを勝たせていると凄く感じる」と頬を緩める。

 また中野監督は「プレーしている選手よりも、あの応援を見てもらいたかったので、決勝に進めてホッとしている。高校サッカーでは一生懸命応援するけど、大学に来ると試合に出られない部員は応援がダメになっちゃう。流経の学生がこれだけのモノを示してくれると、また新しい考え方が出来ると思っている」と加えた。

 決して上手いチームではないが、ここまで一枚岩となり、勝ち進んできた流経大。目指す“日本一愛される集団”だけでなく、“日本一強い集団”まであと一歩。残り1試合、頂を目指し、チーム一丸となって戦う。

(取材・文 森田将義)
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