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高校選手権に次ぐ日本一も、決勝はベンチ外…明治大MF中村健人「ひとりのサッカー選手として」

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[8.14 総理大臣杯決勝 明治大1-0順天堂大 ヤンマースタジアム]

 二度目の日本一は悔しさを伴うものだった。今冬の全国高校選手権では東福岡高の10番として優勝を経験した明治大のルーキーMF中村健人(1年=東福岡高)は、決勝・順天堂大戦はメンバー外。バックアップメンバーとして、スタンドで観戦したほか、試合前後には裏方に徹した。

 今大会で1回戦はベンチ入りのみ。2回戦・東海学園大戦では延長戦から途中出場すると、PK戦では3人目のキッカーを務め、無事に成功。1-1(PK5-3)の勝利に貢献した。準々決勝はベンチ外も、準決勝・桐蔭横浜大戦(2-1)では今大会初先発。前半のみプレーした。しかし決勝はメンバー外。初優勝をピッチの外から見届けた。

 試合後は「チームとして勝ったことは、とても嬉しく思います」と前置きしながらも、「でも相手(順天堂大)で怜央(旗手)とか浮田健誠が1年生なのに試合に出ている中で、自分は準決勝までは出してもらったんですけど、いいパフォーマンスはできず、決勝ではバックアップになって、個人的には悔しいです。自分がまたチャンスを与えられたときには、すぐにすっと試合に入れるようなプレー、準備をしていきたいと思います」と先を見据えた。

 今年1月の全国高校選手権で東福岡高の10番としてチームを牽引。日本一に立ったMFは、明治大へ進学。1年目からトップチームへ所属し、出場時間を増やすべく、奮闘している。選手層の厚い明治大において、1年目からこれだけトップチームに絡めているのは、その実力の証だ。

 明治大の栗田大輔監督は、決勝で中村がベンチ外となったことについて、「こういう場所を経験させていくことは大事。準決勝でも色々と出来た部分や出来なかった部分を感じていた。決勝はサポートに回ってもらったけれど、健人がどうこうよりも、順天堂大に勝てるメンバーを選ぶという意味で小野(雅史)を選んだだけ」と説明する。

「健人は勝者のメンタリティは持っているので。だからこそ、東海学園大戦のときは、PK戦の3人目で蹴らせました。一歩ずつ経験させながら、高校サッカーとは違う大学サッカーを積み重ねて、彼が2年後や3年後に大きく成長してもらうために、今は一所懸命育てているところです。明治大は層が厚く、いい選手が多いので、焦らずに自分のできること、できないことを日々振り返りながら……という感じですね」

 ヒガシの10番から紫紺のルーキーとなって、はや4か月が経った。中村は温かく大切に明治大で育ち、育てられている。今回の日本一は、満足いく形で得たものではないかもしれない。それでも、この悔しさは新たな原動力となって、中村を強く突き動かしていくはずだ。

 1年生MFは「チームが優勝したことは本当に嬉しいです。でも一人のサッカー選手としては、素直に喜べるような優勝ではなかったので。これから後期リーグやインカレ、来年へ向けて。自分が主役になれるくらいに試合に出られるようにやっていきたいなと思います」と強く誓った。

(取材・文 片岡涼)
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