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「一人ひとりの良さを出す」、森下監督就任の九州産業大は高知大を3発撃破!

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先制点の関をチームメイトが祝福

[9.1 第41回総理大臣杯1回戦 高知大0-3九州産業大 長居]

 第41回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントが1日に開幕し、ヤンマーフィールド長居で行われた1回戦では、高知大(四国1)と九州産業大(九州1)が対戦。MF関恭範(4年=福岡U-18)の先制点を皮切りに3点を奪った九産大が勝利した。

 9年ぶりの大会出場となった九産大が、嬉しい白星を手にした。「前半はボランチの所で前が向けず、攻撃の組み立てが難しかった」と森下仁之監督が振り返るように立ち上がりは苦しい場面も見られたが、前半8分にMF末永巧(3年=東福岡高)からのパスを受けた関がドリブルから豪快なミドルシュートを叩き込み、先制に成功。

 以降も中盤でのビルドアップで苦戦しながらも、「あのゴールで気持ちが楽になったし、多少しんどくとも我慢できるようになった」(森下監督)と心理面で優勢に立つと、DF中島圭大(4年=東福岡高)を中心とした3バックから前線へと長めのパスを通し、チャンスを伺った。35分には、連携による中央突破からPKを獲得。キッカーに名乗り挙げたMF赤木翼(3年=東福岡高)のシュートはGK千歳吾朗(4年=加古川東高)に阻まれたが、こぼれ球を自らが押し込み2点差で前半を終えた。

 相手のプレッシャーが弱まった後半は、末永とMF高橋虎太郎(4年=東海大浦安)のダブルボランチが前を向いてパスを受ける機会が増加。二人を起点にボールを動かし、ゲームをコントロールすることで、「いつもは自分たちのミスで自滅する展開が多い」(森下監督)という不安を打ち消していく。

 それでも、ピンチがなかったわけではない。後半6分には、相手ゴール前でのパスをMF下園直輝(4年=東海大付五高)に奪われると、ドリブル突破を許した。自陣まで進入されたタイミングで、ゴール前へのパスを通され、ゴール前に走り込んだMF山崎一帆(4年=佐賀商高)に決定的なシュートを打たれたが、GK加藤大喜(4年=熊本ユース)が阻止した。

 ここからもFW勝田一秀(4年=C大阪U-18)らの飛び出しに苦しんだが、粘り強い守備で失点を回避すると、20分には、ゴール前に低く入った左CKを中島が決めて、3点目をマーク。「セットプレーから3点目を獲れたのが大きかった。あのゴールで試合が決まった」(森下監督)。勝利を早々と確定させてからは、危なげない戦いぶりで逃げ切り、3-0で勝利した。

 サッカー部の強化に励む九産大は今年3月から、J2ツエーゲン金沢の前監督・森下氏が就任した。森下監督にとって、大学サッカーは初めてのカテゴリー。130人もの選手を一人で見なければいけない難しさもあるが、学生コーチのサポートもあり、成果は早々と表れ、九州予選では首位通過を果たした。

 狙うのは、「選手一人ひとりの良さを出すサッカー」。型にハメるのではなく、今いる選手の特徴が引き立つスタイルを選手が考えながら作り出していく。全国大会でのやり方は変わらないが、「全国基準で見ればうちは身体能力がないので、1対1を仕掛けるのではなく、ボールを保持しながら常に2対1を仕掛けていく」といつも以上に数的優位を意識しながら、大会に挑んでいる。

 練習では選手の自主性を尊重するのが特徴だ。「自分がいかに楽をしようか考えている」と冗談交じりに笑うように、この日も森下監督はアップを見守るだけだったが、関が「森下さんになってからは、オフとオフがハッキリしている。緩むところは緩むし、厳しい所は厳しくやる。それが良い感じに働き、チームも上手くいっている」と証言するように、細部への拘りを感じさせるのも事実。

 特に、加藤が「練習から監督がラインの調整やウイングバックの立ち位置を調整してくれる」と話す守備面は指揮官が拘るポイントで、「自信を持ってボールを繋げるようになった、これまでは大舞台になるとボールを蹴ってしまってい、疲れから後半は足が止まって、負けていたけど、今年どんな相手でもちゃんと後ろから繋げている」(加藤)点は、監督が進める取り組みの成果だろう。

 就任から、わずか半年ながらも着実に成果は出つつある。2回戦で当たるのは法政大(関東4)。森下監督が「関東や関西のチームと対戦し、どれだけでやれるかで自分たちの現在地が分かるし、今後の取り組みや成長に活きる」と話すように、力量を知るには持ってこいの相手で、全力を出し切れば、全国2勝目も見えてくるはずだ。

(取材・文 森田将義)
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