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2年連続途中離脱の苦い思い出払拭!明治大主将FW佐藤亮「優勝した瞬間にすべてが報われた」

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佐藤亮は大会4得点で得点王になった

[9.7 総理大臣杯決勝 明治大2-1法政大 ヤンマースタジアム長居]

「いつも佐藤亮ばっかり。もうガッツポーズは見飽きましたよね」。以前、栗田大輔監督は愛弟子の活躍を冗談交じりに目尻を垂れさせながら称えていた。信頼を絶対的なものにする主将が、当たり前のようにこの日もゴールを決めた。

 時間帯も絶妙だった。前半23分に先制点を許したわずか2分後、MF中村健人(4年=東福岡高)とMF中村帆高(4年=日大藤沢高/FC東京内定)のコンビネーションで右サイドを崩すと、主将FW佐藤亮(4年=FC東京U-18)が右足で流し込む。「コースも見えていた」という完璧なシュートがチームに勇気を与え、後半の逆転劇に繋がった。

「優勝した瞬間にすべてが報われた。悔しい思いをした経験を経験のままで終わらせずに糧としてやってきて、本当に幸せだなというか、やってきて良かったなと思います」

 前人未到の5年連続決勝進出、初の連覇を果たし、近年の総理大臣杯を席巻する明治大だが、佐藤亮にとってはあまりいい思い出のない大会になっている。2年時の決勝では先発メンバーとしてピッチに立ったが、前半16分で左足首を痛めて負傷交代。のちの検査で靭帯断裂の大怪我だったことが判明した。

 そして個人的なリベンジの思いを持って臨んだ昨年の大会では期間中に体調不良に見舞われると、決勝前日に腹痛のために病院に直行。尿膜管遺残症と診断され、合計3度の手術も余儀なくされた。何で自分だけが――。大好きなサッカーが嫌いになりそうになったこともあったが、家族や仲間の支えがあり、何とか気持ちを繋いできたという。

「自分の中である意味プライドを捨てて、自分はこれまでの選手なんだという風に言い聞かせて練習に励んできました。今年もシーズンインしてからなかなか上手くいかなかったけど、もがき続けた結果がこうして結果として反映されると思います」

「去年の岩武(克弥=浦和)キャプテンのように、何年間もレギュラーで出て信頼され続けるとことが一番いいのかもしれないけど、苦しい時に自分で努力し続けていたキャプテンもいたよね、と後輩たちが思ってくれれば幸せなこと。後半のシーズンも貫いていければいいのかなと思います」

 総理大臣杯で4得点を決めて得点王。関東リーグでも得点ランクトップを走るが、進路はまだ決まっていない。サッカーを続けたい思いはもちろんある。

 中学時代からのチームメイトであるMF安部柊斗(4年=FC東京U-18)がFC東京への帰還を決め、今夏ユニバーシアード代表として金メダルを獲得したMF森下龍矢(4年=磐田U-18/鳥栖内定)と中村帆もJ1クラブへの入団を勝ち取るなど、チームメイトの進路が次々と決まっている。

 現状をどう思っているのか。意地悪な質問にもまっすぐな目をして答えてくれる。それが佐藤亮という男だ。

「確かに悔しい思いの方が強い。何でだろうと思うこともあるけど、でもそれが自分の3年間を物語っているのかなと。仕方がないことだと思うので、それよりも4年目で頑張って結果を出していることを見ていただけるチームがあるのであれば、しっかりと感謝したいと思います」

 大臣杯は「最後のアピールの場」と強い思いを持って臨んでいた大会だった。企業から内定も貰っていることから、クラブ選びには一定の基準を設けた上で選定したい考えでいる。「オファーが来なければきっぱりと諦めて、就職して第二の人生を歩んでいければいい。それはそれで幸せなことなので、あとは身を任せたい」と決心もついている。

 今季の明大サッカー部は『挑越』をスローガンに掲げている。すでに今季はアミノバイタル杯と総理大臣杯の2冠を達成。関東リーグでも前期でだけで勝ち点30を獲得して首位を独走。史上最多勝ち点記録の54超えも十分に期待できる。さらに冬のインカレと、今季の大学タイトル全制覇も夢ではない。

 伝統ある明大サッカー部の歴史をも『挑越』した史上最強チームに。そのチームのキャプテンともなれば、必ずや伝説になるはずだ。「相手は自分たちを研究すると思うし、それでも強いチームは勝ち続けないといけない」。もう怪我に苦しめられた姿は過去のもの。“頼れる男”になった主将が、全力でチームをけん引する。

(取材・文 児玉幸洋)
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