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久保建英も10歳から継続! 木場克己直伝自宅でできる体幹バランストレーニング

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木場克己氏と久保建英、中井卓大

 長友佑都久保建英らのトレーナーとして知られる木場克己氏。世界で活躍する彼らに限ら木場氏の提唱するコバトレは、「プロから小学生まであらゆる選手に取り組んでほしい」という。何歳からはじめても遅くない、コロナ禍のいまだからこそはじめたいトレーニングとは?

ケガをしないための
トレーニング


 木場氏はサッカー選手に限らず、水泳の池江璃花子やJP日本郵政グループ女子陸上部など幅広い種目の選手のトレーナーを務めているが、トレーナーとしてのキャリアはFC東京の前身である東京ガスからはじまった。選手をケアしていく中で、体幹トレーニングの必要性を実感したという。

「東京ガスに入る前は整形外科やスポーツクラブ、整骨院に勤めていたのですが、ケガをしやすい選手は頭がブレやすかったり、足腰で上体を支えられていない、ということが挙げられます。そこを強化していくために体幹が必要なのではないかと思ったのです」

 木場氏は学生時代に柔道とレスリングを経験。相手と組むことが前提の柔道とレスリングでは、いかに体の軸をブラさず、バランスをたもてるかが重要になる。その学生時代の経験から、体幹を鍛えるトレーニングをサッカーに落とし込んでいく。

「スポーツ選手は相手だけでなく、自身のケガとの戦いでもあると思います。ケガをしたら100%の力でプレーすることはできませんし、プレーすることさえかなわないケースもある。才能やセンスの前に、ケガをしないことが重要ではないでしょうか。ケガをせずプレーできると自信もついてきます。ですから、ケガをしないような体づくりをサポートするのが、私たちのトレーナーの役目だと思っています」

FC東京のトレーナー時代。右は当時10番だった三浦文丈


コバトレって
どんなトレーニング?


 体幹トレーニングは体のどこを鍛えるものなのか? 体幹と聞くと、体の内側=インナーマッスルを鍛えるためのものだという印象があるが、コバトレはそれだけでは不十分だと指摘する。

「インナーマッスルはもちろん鍛えなければいけないのですが、上半身を支えるためのおしりからひざまわりまでしっかり鍛えることが重要です。私は“体幹バランストレーニング”と呼んでいるのですが、『コア(体幹)』『バランス(筋力)』『アジリティ(びんしょう性)』の3つの能力を高め、ケガをせず、強く、速く、うまくなるためにプログラムしています。選手たちからは木場のトレーニング=コバトレと呼ばれることが多いですね」

 もし“体幹が弱い”とスポーツ以外の場面でも悪影響が見られてしまうという。

「『最近の子どもは、まっすぐ立つ姿勢を続けられない』と耳にすることが多いのですが、これは体幹が弱くて姿勢を保っていられないことが原因だと思います。小学3年生(9歳)くらいから体幹トレーニングに取り組むのがもっとも効果的ですが、何歳からはじめても問題ありません」

 実際、久保は10歳、レアルの下部組織に所属する中井卓大は9歳からコバトレをはじめ、現在も継続している。

「彼らが外国人の選手を相手に大きなケガもなくプレーしているのは、体幹トレーニングを継続しているのがひとつの要因になっているのかなと思っています」

 木場氏は“いい選手”の条件のひとつに、ケガをしないことを挙げる。

「私が考える“いい選手”の条件は3つあります。まずケガをしないこと。つぎに、マジメであること。たとえば、地味な体幹トレーニングをストイックに続けられるかどうか。最後は、意識が高いこと。目標を設定してそこに突き進めるかどうかです。安心してほしいのは、みんな最初からこの条件を持っているわけではないということ。長友選手や久保選手のようになる可能性は誰もが秘めています」

育成年代で体幹トレーニングに取り組むチームは増えている


久保建英はどんな
トレーニングをやっていた?


 久保がコバトレに取り組むようになったのは、久保の父・建史氏が木場氏のところにトレーニングの依頼をしたことがきっかけだった。

「久保選手のお父さんが私のトレーニングに興味を持ってくださっていて、体験させたいと私の講演会にきてくださったんです。久保選手が私のところに最初にきたのは、小学校4年生のとき(10歳)でした。サッカーの技術的な部分は当時からすでに抜きん出ていて注目を集めていましたが、体幹の部分で言えば小学4年生でサッカーをやっている子と同じレベル。そこで、基礎的な体幹トレーニングからはじめていきました。ただ、トレーニングへの理解力と意識はとても高かったです」

 小学生から中学生の成長期にはオスグッド病になる選手も少なくないが、その予防としても体幹トレーニングは効果的だという。

「オスグッド病になりやすい選手としていくつか要因があるのですが、前ももの柔軟性が足りなかったり、股関節の動きが固かったり、腰まわりの筋肉で上半身を支えることができず太ももの筋肉に負担がかかったりしています。それを回避するためにも体幹を鍛えることをおすすめしたいです。久保選手はオスグッド病に悩まされずプレーに集中できていました」

 久保とのトレーニングの計画は10年単位で練られた。W杯や五輪など先の目標を立てて、そこから逆算して体をつくっていく。15歳でJデビューした同時も、ウェイトトレーニングをして筋肉をつけるのではなく、体幹を鍛えることでプロに負けない体をつくっていった。

「(2020年3月7日の)エイバル戦では利き足ではない右足のシュートでゴールを決めました。そのことについて久保選手とやりとりをしたのですが、体幹を鍛えたことで強いキック力が生まれてきていることを実感していました」

 コバトレ開始から8年以上経過した現在も体幹トレーニングは継続している。コロナ禍で試合ができない最中でも、木場氏と久保はLINEでやりとりをし、自宅でトレーニングに努めていつ再開してもいいような準備をしているという。

リーガ1年目ながら24試合出場3得点の活躍


自宅でできるコバトレを
動画で紹介


「体幹トレーニングは地味ですし、ボールの扱いが劇的にうまくなるような変化が起きるわけではありません。しかし、トレーニングを続けていくことで、球際で負けなくなったり、強いシュートを打てるようになったりといったプレーの質の向上が期待できます。それだけでなく、トレーニングを続けることで自然と集中力がつくので、練習や試合でも活かされるでしょう」

 ゲキサカYouTubeチャンネルではコバトレの動画が公開されている。動画は、それぞれのトレーニングの前半部分で木場氏による解説、後半では木場氏がカウントをとってくれる。トップアスリートをと同様のトレーニングを自宅でやることができる。



「まずは週に3回を3週間続けてみてください。そうすればトレーニングを習慣化することができます。レベル1からはじめて、余裕でできると思ったらつぎのレベルに進んでいってください」

 5月12日に発売する最新著作『実践!体幹バランストレーニング』(プレジデント社刊)では、動画の解説のほか、長友や久保らのトレーニングエピソードなどもくわしく紹介されている。

「もし選手が1週間トレーニングをしなかったら、元の体に戻すのには3倍の3週間かかると言われています。いまは自宅で過ごさざるを得ない中、いままでのようなトレーニングをすることは難しいですが、自宅でできることをやるのが重要です。いざサッカーができるようになったときに、自宅でのトレーニングが効いてきます。『継続は力なり』。まずははじめてみてください」

木場克己(こば・かつみ)
1965年、鹿児島県生まれ。KOBAスポーツエンターテイメント株式会社代表。KOBA式体幹バランス協会代表。
長友佑都、金崎夢生、土居聖真、久保建英らトップ選手から五輪世代、育成年代まで幅広い世代のサッカー選手のほか、水泳、陸上などさまざまな競技のトップアスリートのトレーナーを務めるほか、back numberなどの有名アーティストのコンディショニングをサポートする。現在、NHK『趣味どきっ!』の講師を務めるなど、テレビや雑誌などメディア出演も多く、企業の健康講演会、教育現場での体育指導など幅広い分野で体幹トレーニングを通して人々の健康づくりを支援している。5月に東京・亀戸のトレーニング施設の別フロアに治療院「COREトレSTUDIOwith接骨院」をオープン、トレーニングも治療も行える。
オフィシャルホームページ
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<書籍概要>
■書名:実践!体幹バランストレーニング
■著者:木場克己
■発売日:2020年5月12日
■価格:600円(税別)
■発行元:プレジデント社
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(取材・文 奥山典幸)

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