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世界規模のスカウトプロジェクト「THE CHANCE」関東ラウンド、精鋭12名がジャパンファイナルへ!

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 ナイキジャパンは16日、プロ契約を交わしていない若きフットボールプレーヤーを対象とした世界各国で実施されるセレクションプロジェクト「THE CHANCE」の国内選考会、セミファイナル「関東ラウンド」を神奈川県横浜市の横浜みなとみらいスポーツパークで実施し、元日本代表SB名良橋晃氏ら選考委員が「ジャパンファイナル」(7月21日、22日、都内近郊)へ進出する11名としてGK吉田稜(青森山田高)、GK川島滉(つばさ総合高)、DF楠本卓海(大成高)、DF西山雄介(横河武蔵野FCユース)、DF酒井隆也(日本工学院F・マリノス)、DF室田悠貴(市立柏高)、MF木曽航平(中央学院高)、MF岡田朋也(常磐大学高)、MF岡庭裕貴(横河武蔵野FCユース)、FW寺田和之(早稲田ユナイテッド)、FW高橋将道(府中東高)、FWマーフィー・ショーン輝(早稲田ユナイテッド)を選出した。

 東北、九州、関西に続き4回目であり、最後のセミファイナルとなった今回のセレクションには、前橋育英高(群馬)や八千代高(千葉)などの名門校の選手を含め、最多88名が参加。うち、38名は跳躍力測定、20m測定、計8本の5対5(1本7分間)の行われた午前のセクションだけで振るい落とされるという、熾烈なサバイバル合戦となった。

 各選手、技術レベルでの大きな差はなかった。選手によっては自分の力を発揮できず、悔しさをにじませながら会場を後にした選手もいた。短い時間でアピールすることの難しさを改めて感じさせていたが、それでも5対5では埼玉県新人大会準優勝の浦和西高MF山崎勇輝とMF富岡優斗の精度や動き出しの速さが目立ち、日本クラブユース選手権出場の横河武蔵野FCユース(東京)のエースである岡庭と木曽、MF渡辺隆太郎(旭高)、MF郡侑也(大成高)が個人技、FW佐野樹生(横河武蔵野FCユース)やFW中澤海斗(小山西高)、DF宮川凱多(中央学院高)といった選手たちが強さなどそれぞれの武器でアピールしていく。また声で周囲を圧倒していたFW小杉正貴(神代高)や海外でのプレー経験を持つMF狩野宏征(無所属)が独特の雰囲気で関係者たちに自らを印象付けていた。

 そして午後のポジション別テストで33名まで絞られた選手たちは、3チームに分かれて30分間3本のゲームテストで「ジャパンファイナル」へのチケット12枚を争った。まず、「全体のレベルは高かったですね。どんどん上がって(人数が絞られて)いくにつれて、レベルも上がっていたと思います」と周囲のレベルの高さについて語っていた岡庭、マーフィー、室田、吉田のいたAチームと寺田と岡田、西山の出場したBチームが対戦。先制したのはBチームだった。素早い動き出しから相手の弱点を的確についていたMF加賀谷翼(前橋育英高)が左サイドを抜け出すと、その折り返しを寺田がつないで最後はFW小川大輔(旭高)がゴールへと押し込んだ。さらにBチームは6分にもDFの背後を突いた寺田のゴールで加点。抜群のスピードを持つ小川が決定機に絡むなど押し気味に試合を進めたBチームに対し、Aチームは山崎とMF宮川裕二郎(前橋育英高)のダブルボランチを軸に対抗する。そして16分にはマーフィーが豪快な右足ミドルをゴール左隅へ突き刺して1点差とした。だがBチームは20分、鮮やかなパスワークでAチームのDFを攻略すると、岡庭がフィニッシュ。3-1とリードしたまま試合を終えた。

 Bチームと川島、酒井、楠本、木曽、高橋のCチームとが戦った2本目は、8分に高橋が20m強の距離から技ありのループシュートを決めてCチームが先制する。このゴールでジャパンファイナルへのチケットを手繰り寄せた高橋は「最後まで走りきったこととFWとして決められたので、そこを評価されたと思います」。また、CチームはMF芝尾直樹(横浜市立東高)が攻撃の起点となり、渡辺のラストパスから高橋が決定的な形で合わせるが、Bチームは危ない場面をつくられながらも「セレクションは1日かけて自分のベストをどう発揮するか。それを意識していたんですけど、午前中とか凄く暑くてできる試合、できない試合とかがあった。それでも午後も合わせたら全体的に自分のプレーができたと思います」という西山が絶妙なカバーリングを見せるなど2点目を許さない。Bチームは、プレッシャーを受けながらも正確なパスを通す岡田を中心に反撃すると27分、小川が左サイドを抜け出し、最後は加賀谷が同点ゴールを決めて1-1で引き分けた。

 最後のアピールタイムとなったCチームとAチームとの最終戦。暑さと強い日差しの影響も受けてか、運動量が落ち、両チームともになかなか違いを生み出すことができない。それでもCチームの左サイド、ボールタッチに優れた木曽と安定した守りを見せる楠本がアピール。中央では「(合格した要因は)戦う気持ちですね。それが一番自分の中で大きかったと思います」という酒井が声とボールへの執着心を発揮するなど、チームを統率して相手を無得点に抑える。Aチームもキック精度が武器の室田が評価を勝ち取り、1本目終盤の接触プレーで鼻から大量の出血をしていたマーフィーが「メンタルを切り替えて努力するしかないので100パーセントでまた入ってプレーしました」と前線から圧力をかける。終盤、特に目立っていたのはAチームの山崎。鋭いターンでDFを外してクロスバー直撃の左足ミドルを放つなど存在感を放ったが、決めきることができず、0-0で引き分けた。

 勝ち残ったのは自分の力を出し切った、ポテンシャルの高さを証明した12名だった。合格者発表では「勝ち残れるとは正直思っていなかった。素直に嬉しいですけれど、残れるとは思っていなかったというのが正直な感想です」という寺田や「最初の審査すら通る自信がなかったので本当にビックリしました」という川島らが自身も驚く選出。吉田は「GKは関西から1人だけ受かっていた。関東に参加できる権利があったので、チャンスかなと思ってもう1回受けました。絶対に勝ち取ってやろうと思っていました」と東北ラウンドに続いて2度目の挑戦で夢へ一歩近づいた。

 いよいよ次は「ジャパンファイナル」。国内スカウト総括の風間八宏川崎フロンターレ監督の下で行われる「ジャパンファイナル」には今回合格した12名らセミファイナル勝者計26名と、日本各地を訪問するナイキスカウトから参加権を得たプレーヤー24名を合わせた計50名が参加。その競争を勝ち抜き、“日本代表”に選ばれた3名は、8月にスペイン・バルセロナで行われる「グローバルファイナル」へ参加する権利を獲得する。海外でプロ契約を結ぶ夢を持つ選手たちにとっては大きなチャンス。木曽は「ジャパンファイナル」へ向けて「(自分の特長は)ボールキープとボールタッチとか足元の上手さ。自分の長所を出して3人に入れるように頑張りたいです」と気合十分の姿勢を見せ、楠本は「きょうは自分の本来のポジションであるセンターとは違うところでやったんですけど、どこでもできるように、誰にも負けないように頑張っていきたいと思います」。そして岡田は「ドリブルが得意なので、どんどん仕掛けていって、もっといいパスを出して、判断良くできればと思います」とそれぞれ意気込んでいた。

 セミファイナルを受験せずに、“シード”としていきなりジャパンファイナルから参加する24名を上回ることも彼らの目標。室田は「やってやろうという気持ちはあります。ジャパンファイナルから来る人もいる。でも自分たちもセレクションを経験しているので、そのシードで来るヤツを脅かしてやりたいですね」と笑った。名良橋氏は最終選考へ進出した選手たちへ向けて「もっともっと自分の良さを引き出していかないといけない。技術がどっこいどっこいだと、後は自分の良さを出している選手を選んでいくと思う。自分の良さをもっともっと出していってもらいたい。ジャパンファイナルに残ったメンバーというのはレベル的にもしっかりしている選手が揃ってきていると思うし、いかに自分を出せるかというところがスカウトの目に留まってくる。とにかく向上心を持って失敗を怖れずに。檜舞台じゃないですけど、楽しんでやるということを忘れずにやってもらいたい」とエール。精鋭50名が参加する「ジャパンファイナル」では世界を目指すタレントたちが、自分の特長を全力で出し切って夢へ前進する。

(取材・文 吉田太郎)

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