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今年はデフフットサルのワールドカップイヤー! アジア予選にむけた日本代表合宿を打ち上げ

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2月の短期合宿を経てタイへ向かう

 聴覚障害のある人がプレーするデフフットサルのワールドカップ(W杯)が11月9日~16日にスイスで行われる。そのW杯出場国を決めるアジア予選が2月15日からタイで開幕。3大会連続の出場をめざす日本代表は14日、埼玉県内で行われていた3日間の合宿を打ち上げた。最終日は健常者のフットサルチーム・デルミリオーレクラウド群馬と30分3本の練習試合を行い、1-10と大敗したが、前回大会も出場経験のある主将の東海林直広は前向きにとらえた。

「(13日に右太ももを強打して欠場した)僕も含めて3人の主力が抜けて、選手層の薄さが出てしまった。出た選手たちは、合宿にかかげたテーマを遂行しようとしすぎたところもあった。欠場した主力が戻ってくればこういう結果にはならないと思いますが、2月のアジア予選は大会中にけがで一時的に主力が抜ける可能性もあるので、いい経験になりました。負けたことで、逆に大会に向けた心構えができたと思います」

主将の東海林は試合中に仲間にアドバイスを送る

 W杯初出場の2011年は16チーム中14位、前回2015年は11チーム中7位。前回大会を経験し、世界の厳しさを痛感した東海林はこの4年間、より質の高いトレーニングを求め、どん欲になった。フットサルより球際の厳しさを求められるデフサッカーにも挑戦し、日本代表に選ばれ、主力として先発出場できるほど成長した。

「サッカーでいうショルダーチャージがフットサルだとファウルになる。実際の試合の中で意図的にやろうとは思いませんが、(ゴールを奪われそうなピンチで)絶対に必要な場面は出てくると思っています」

 昨年12月には日本代表として初の海外遠征を敢行。フットサルの競技人口が約100万人いる大国・スペインへ9日間、武者修行した。選手側から「W杯の予選前にぜひ遠征したい」と申し入れ、日本代表・川元剛監督のネットワークを使って実現にこぎつけた。各選手は遠征費として必要な約40万をすべて自腹で捻出。生活が苦しくて貯金ができない選手も存在し、ある選手は自らクラウドファウンディングを立ち上げて100万円を集め、スペイン遠征や今後の代表活動費に回して何とかやりくりしている。東海林が振り返る。

「スペインでは、最高位の資格を持っている指導者の方に教わりました。パス交換では、出し手以上に、受け手がどの位置に立つのかが重視され、考え方の違いは勉強になりました。練習試合でも、ピンチで危ない場面になるとユニフォームを引っ張るほど勝ち負けににこだわってきた。この遠征で戦える選手と戦えない選手の違いも感じられましたし、いい経験ができたと思う」

平日は足のつま先が凍るような寒さの中、練習を行う(撮影協力 埼玉県公園緑地協会/埼玉スタジアム2002)

 東海林は、中古の車やPCなどのTV、インターネットオークションを運営する「オークネット」の社員として、8時間の勤務時間を変えずに両立を目指してきた。都内で仕事を終えた後、所属する埼玉・AVASOL/SORDOの一員として、予約したフットサル場に移動して、夜8時から練習するような生活。働いた後の限られた時間を目一杯、練習にあててきたため、昨年の完全休養日はわずか14日間。時間も貯金も削ってきたからこそ、アジア予選で勝ちたい思いは強い。

「シンプルにアジアで優勝したい。準備の質が高いチームがつくれてきたので、やってきたことを結果につなげたいです」

 予選の組み合わせはまだ決まっていないが、参加国のイランや開催国・タイは世界の2強と言われている。念願の初のアジア制覇によって、世界一への視界まで開けてくる。

(取材・文 林健太郎)

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