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横浜F・マリノスの知的障がい者チーム「フトゥーロ」が神奈川県大和市で講演「僕たちの夢」

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講演する横浜F・マリノスのふれあい事業部長・望月選氏

横浜F・マリノスの知的障がい者チーム「フトゥーロ」が20日、神奈川県大和市から招待されて、「障害者差別解消法」にちなんだ講演を行った。同クラブのふれあい事業部長・望月選氏やフトゥーロのFW外崎蒼紫、DF小林佑平が登壇した。

 横浜F・マリノスは1999年から知的障がい者などを中心に、障がいを抱えた人とともにサッカーをする活動を続け、電動車椅子サッカーの大会も開催。サッカーを通して障がいの有無に関係なく、その存在を認め合う社会づくりに一役買ってきたJクラブのルーツ的存在だ。

 2004年には日本で初めて「フトゥーロ」を立ち上げた。「フトゥーロ」はスペイン語で「未来」。「未来にむけて」「未来はきっと」という願いが込められている。2018年に15年目のシーズンを迎え、横浜市社会人リーグにはじめて参加し、2勝1敗と健闘。残り2試合のうち、1試合は2月23日に行われる。参戦のいきさつを望月氏が明かす。

「知的障がい者への理解を少しでも深めてもらいたい、という気持ちはありますが、それと同時に健常者のチームとあまり対戦したことがなかったのでどこまでやれるか挑戦してみたかった。海外に行けば、知的障がいを持ったプロのサッカー選手がいます。知的障がい者のサッカー日本代表を目指しながら、将来的にはJリーグのクラブに入れるような選手を輩出したいんです。そのことが、知的障がいを持ちながらサッカーをやりたい、という方々への夢にもつながるのではないかと思うんです」

 知的障がいを持つ人の中には、同じことをずっとやり続けてしまう人もいれば、空間認知能力が劣る人もいて、サッカーの試合中、ヘディングで相手選手と頭同士がぶつかり、けがにつながることもあるという。

「健常者に教えるときよりは丁寧に説明し、できなくても見守り続けるようなスタンスで指導を続けてきています。もちろん、してはいけないことをしたときは『ダメだ』と指導はしますが、一方的に怒るようなことはしていません」(望月氏)

右からフトゥーロの小林佑平、外崎蒼紫。左は横浜F・マリノスの望月氏

 現役のフトゥーロの選手である22歳の外崎と20歳の小林は社会人としてともに清掃関係の仕事につきながらサッカーを続けている。フットサルの日本代表候補選手にもなっている外崎は「高校の先輩にすすめられてフトゥーロの存在を知りました。もし、フトゥーロにいなかったら今、どうなっていたかはわかりません。サッカーで足りないことを練習で鍛えていきたい。日本代表にも行きたいです」と意欲を見せる。

 中学からフトゥーロに入った小林は、学校で障がいを理由にいじめられた経験を持つ。当時は感情のコントロールが難しく、逆上してけんかに発展してしまうこともあったという。

「中学のときは悔しい思いをしました。中学の部活とフトゥーロと両方参加していたんですが、どうしてもフトゥーロを優先しなければいけないときに部活の先生に相談に行くと『どっちが大事なんだ』と突き放されました。でもそんなとき、フトゥーロの存在が大きかった。とにかく僕たちとの距離が近いんです。特別な言葉があるわけではないんですが、いつもそばにいてくれる感じで、癒しに近い感情を持たせてくれました」

 そんな小林はマリノスの一員としてサッカーを通して、感情の制御の仕方も学び、日本代表候補に選ばれる選手にのぼりつめた。全国にサッカーをプレーする友人が増え、その自信が小林の人間性をたくましくした。

「マリノスを背負っているという誇りもありますし、そのことで代表に選んでもらったことも自信になりました。まずはマリノスで全国大会に行きたいです。代表では海外遠征にいくチームに選ばれたことがないので、そこに入ってみたい。できるかどうかはわかりませんが、海外で選手にもなってみたい。サッカー選手として1年でも長くやってみたいんです」

 クラブの思惑を超えて、選手の視線は世界に向く。障がい者サッカーの「ルーツクラブ」から、また新しい道が切り開かれるかもしれない。

(取材・文 林健太郎)

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