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[もうひとつの高校選手権 敗れざる者たち]準優勝の永福学園・赤須主将が味わった「栄光」「試練」「無念」

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赤須勝一郎主将(右)は厳しいマークをにあった

[2.17 もうひとつの高校選手権決勝 東京都立志村学園 2-0 東京都立永福学園]

 優勝の歓喜に沸く志村学園のイレブンを見ることができなかった。2年前、1年生でこの大会に優勝した永福学園のFW赤須勝一郎主将(3年)は、黄色のユニフォームで何度も顔を覆い、肩を震わせ、泣き崩れた。

 永福学園と志村学園は同じ東京都同士のライバル。赤須にとって、志村学園の主力である石綿洵哉主将や梶原大輝(ともに3年)、1年生の渡邉仁暉は、東京都選抜でも一緒に練習する仲間で普段は仲もいい。この決戦を迎える前も「チーム同士の戦いではあるんですが、僕は彼らのことも意識しています」とライバル心をのぞかせていた。

 志村学園の守備は堅く、永福学園は相手ボールを奪ったら、相手の最終ラインの背後に長いパスを出して走りこむ作戦を繰り返したが、決定的な場面にはならず。2点リードを許した後半26分、同29分には約25メートルのFKで赤須が直接ゴールを狙った。2本目のFKは完全にゴールの枠をとらえたが、相手GK円谷光太にはじかれた。その瞬間、赤須は天を仰いだ。

 昨年、全国大会を逃した赤須は負けた選手をいたわり、その思いにも何とか応えたかった。決勝の約4時間前、準決勝で戦った愛知県立豊田特別支援学校には0-0で決着がつかず、PK戦の末に振り切った。その直後、会場を出るときに相手の森田晟弥主将(3年)の姿を見つけると、赤須は自ら手を差し出した。森田主将は、PK戦で永福学園GK丸陽孝にシュートを阻止されて、敗戦を背負うショックもあったはずだが、2人は最後、笑顔でわかれた。

「僕は森田選手とマッチアップする形で試合中ずっと競り合いました。試合が終わって本当に疲れましたし、いい選手だなって思ったので、自分から声をかけたんです。『決勝でも頑張って下さい』と言ってもらえました。PK戦はお互い、運(が左右する)の部分もありますから……」

 赤須は1年生で頂点に立ち、続く2年生では、全国の舞台に立てない悔しさにまみれた。そして今年、全国の舞台に戻ったが、頂点にはわずかに届かなかった。卒業後、調理関係の仕事に就きながら、サッカーは続ける。あらゆる立場に身を置いた赤須はきっと、栄光と試練と無念が「財産だった」と言える日が来るはずだ。

(取材・文 林健太郎)

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