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[デフフットサルW杯アジア予選決勝]日本は世界王者・イランとの再戦で0-4と完敗。目標のW杯優勝にむけ、課題が浮き彫りに

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銀メダルを金メダルに変える戦いはすでにはじまっている

11月にスイスで行われるデフフットサルワールドカップ(W杯)の予選を兼ねたアジア太平洋ろう者フットサル選手権(タイ)に出場中の男子日本代表が24日、決勝で前回W杯優勝のイラン代表に挑み、0-4と完敗。19日のグループリーグ2戦目で0-4で敗れた雪辱を目指したが、全く同じスコアで返り討ちにあった。
 
 王者の壁はあまりにも厚かった。組織的な守備で相手に十分な攻撃をさせないプランがはまっていたが、前半16分に右サイドから個人技でねじ込まれると、後半は自分たちが攻撃に転じようとしたところのちょっとしたミスをつかれて同13分、15分、18分と立て続けに失点。川元剛監督が悔しそうに振り返る。

「イランの映像を繰り返して見てやりたいことがわかったので、そこには乗らずにわざと戦い方を変えて引いて守りました。そこはプラン通りにいって、戦っていてイランが焦っていくのがわかったんですが、選手個人のスキルの差は圧倒的です。日本国内のFリーグでも全然通用するレベルにいる。ボールを扱う技術、キックの技術が全然違うのはわかっていたので、そこを埋めて超えるためにこの4年間、フィジカルを鍛え、デフフットサルではあまり採用されない、前線から奪いに行く組織的な守備をずっと磨いてきたんですが……」

 試合前の突然の変更を追い風にできなかった。前日の準決勝の試合後、GK折橋正紀とFP仲井健人の2人は累積警告により、決勝は出場停止となると想定して準備をすすめていた。しかし、試合開始1時間半前の会議でグループリーグの累積警告は持ち越されないことが通達され、2人は突然試合に出られるようになった。

「英語で書かれた大会資料ではグループリーグでの警告が持ち越されると明記されていて、国際手話を通しての対話でも確認しているんです。ただ試合開始前1時間半前の会議にはアジアフットサル連盟の人が入ってきて、その人の見解で『ダメ』と言われていたものが、覆った。今の時点ではこちらでも『なんでそうなったか』を明確に答えられない状態です」(川元監督)

 大会主催者は聴覚障害を持った人の協会だ。そこでコミュニケーションをとる手段は国際手話で、日本で使われる手話とも違う。ただ今回の日本チームできちんと正確に国際手話を理解できる人はいなかったという。2人が試合に出られたこと自体は追い風だったが、試合開始1時間半前までは「心の準備」が整っていなかったはず。主催者側と正確なコミュニケーションがとれて準備できていれば、もっとイランを焦らせることができたかもしれない。W杯本番までに、大会主催者との関係強化もすすめ、正確なコミュニケーションがとれるスタッフを帯同させることも勝つために大事な要素となる。

 ピッチ内での課題をどうとらえているのか。川元監督が続ける。

「今まで、合宿のトレーニングマッチは相手チームのレベルを重視して組ませてもらいましたが、イランの戦い方は世界的に見ても稀です。イメージとしては圧倒的な個の技術を持つ選手たちによるミニサッカー。ですからこれからは、国内で練習試合を組むときも、たとえばFリーグの方に相談が必要ですが、リーグにいるブラジルなど個の強い外国籍選手の混成チームを作ってもらって胸を借りるとか、そういうことも実現できるのならやりたいと考えています」

 試合後、全体ミーティングを行い、その後、選手ミーティングも行われた。今回の日本代表の選手の中には、デフサッカーと掛け持ちの選手もいてフットサルのチームには所属していない人もいる。フットサルを通してしか培われない技術もあるため、その選手たちには必ずフットサルチームに加わるよう、伝えたという。きょう25日の夕方には帰国予定だが、すでにW杯にむけた戦いははじまっている。

【男子・大会組み合わせ】
≪男子≫
Aグループ
タイ(前回W杯準優勝)、モンゴル、インドネシア、マレーシア、カザフスタン
Bグループ
イラン(前回W杯優勝)、日本、シンガポール、中国

※タイ、カザフスタン、イラン、日本がW杯に出場

【大会スケジュール】
17日〇13‐1シンガポール代表
19日● 0-4イラン代表
21日〇11-0中国代表
23日〇3-2タイ代表
24日●0-4イラン代表

▼デフフットサル男子日本代表最終メンバーはこちら

(取材・文 林健太郎)

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