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寄付の目標額100万円突破で世界選手権出場へ ロービジョン日本代表戦士の感謝の言葉

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ロービジョンフットサルの日本代表戦士。後列左端が角谷

日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は弱視の選手がプレーするロービジョンフットサル世界選手権2019(12月7~14日)に日本代表を派遣することを決定した。遠征費調達のため、9月よりJBFAの運用する個人寄付会員制度「ブラサカみらいパートナー」などを通じて募った寄付が目標額を達成したため。最終的に、個人寄付会員加入者が111人(目標100人)、単発寄付額が158万5184円(目標100万円)が集まった。

 ロービジョンフットサル日本代表はこれまで2011年、13年、15年、17年の国際大会に参加。今年5月にはスペインで開催された「アンダルシア国際フットボール大会 B2/B3クラス」でスペイン代表から勝利し、初めて欧州勢から勝利をあげるなど少しずつ成果をあげていた。

 これまで日本代表が参戦していた国際大会は年1度。しかし5月に続き、急きょ12月にトルコで開催されることが決定した。代表チーム内で話し合い、「出場したい」と結論は出たものの、世界選手権への出場に関する予算は5月の分しか確保されていなかったため、協会内で協議。遠征費用600万円のうち、360万円は予算化できる目途がたったが、残り240万円が不足することがわかり、月1000円から支援できる個人寄付会員制度「ブラサカみらいパートナー」と、金額を自分で決められる単発での寄付を募り、目標を達成した。

 18歳のときから12年近くプレーする日本代表の角谷佳祐が明かす。

「支援しようとしていただいている気持ち、賛同してもらっていることについて純粋に感謝の気持ちが一番ですね。僕も知り合いに頼んで寄付してもらいましたし、代表チームでLINEグループを作って、常に募金額の短期目標を立てながら更新していました」

 角谷は生まれた直後から視神経が細い視神経萎縮症により、学校でも授業中は黒板の文字が見えずらかった。それでも運動は好きで、ソフトボールやサッカーにトライしたが、他の人と同じようにはできなかった。

「楽しくない時間も多々ありましたが、だからといってキャラ的に(他の人より)すごいできなくても立ち直れない、ということはなかったです。できないことを追求してもできるようになりませんから、いい意味であきらめたというか……。でも黒板が見えないなら教科書を自分なりに作って先生のいって言っていることを理解しようとしたり、補える方法は自分で考えて実行する努力はしていました」

 角谷は視覚障害があっても将来、リハビリテーション科で仕事ができる資格を取る大学を探し、筑波技術大学に進学。そこでロービジョンフットボールに出会った。

所属のGrande Tokyoでも攻守に奮闘する角谷佳祐(右)

 昨年、イングランドで行われたお掃除用品やサービスを展開するダスキンの障がい者リーダー育成の研修に、ほかのロービジョン日本代表選手と共に参加。海外でも「障がい者が生活しやすい」と言われるイングランドで、さりげないいたわりの気持ちに触れ、文化の違いを感じた。

「イングランドに向かうときの移動便で、座席の前のモニターをいじっていたんですが、見づらくてうまく操作できないときに、隣の黒人の方が『こうやるんだよ』と操作してくれたんです。(視覚障害のある)僕でさえ、『見えない人に手を貸さないほうがいいのかな』と勝手に思ってしまっていましたが、その外国の方はは教えてくれました。
向こうではロービジョンサッカーの代表コーチに方に話ができて、『やれること、やりにくいこと、できないことがあってそれを分けて考えるといい』と言われて、初めて今まで自分が無意識にやってきたことを言葉で整理することができたんです」

 健常者が、障がい者が身近にいることを常に意識できる社会、そのことにアンテナを張っている国に身を置くことで、たくさんの気づきを得た角谷がさらに続けた。

「日本代表になれれば、世界と戦える。目が見えない人たちでもこれだけ戦えるという、子供たちが夢に見れる場所があればいいなと思います」

 角谷が奮闘し続けるのは、自分と同じ境遇にある人の可能性を広げるためだ。ロービジョンサッカーの日本代表になれれば、目が見えなくても世界とサッカーができることだけでなく、海外の文化に触れて日本を知ることもできる。今回、世界選手権が行われるトルコは、切断障がい者がプレーするアンプティサッカーで数万人の観衆を集める土壌がある。なぜそれが可能なのか。そんな文化にじかに触れることができることだけでも、寄付金を集められたことはきっとプラスに働くはずだ。

(取材・文 林健太郎)

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