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J屈指の人気を誇った小倉隆史監督、今は地域リーグ監督兼理事長「やりがいある」

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FC.ISE-SHIMAの小倉隆史監督

 全国地域チャンピオンズリーグ(地域CL)の決勝ラウンド初戦で、FC.ISE-SHIMA(輪番枠1/三重)がFC徳島(四国/徳島)に1-0で勝利した。同大会は4チーム中2位までに入れば、JFL下位チームとの入れ替え戦に回ることができる。小倉隆史監督も「1次ラウンドの初戦は引き分けているので、勝ちが最低限だった」と大きな白星発進にニンマリした。

 レフティーモンスターが地元・三重から新たな風を吹かそうとしている。四日市中央工高時代に高校選手権を優勝し、鳴り物入りでプロ入り。アトランタ五輪最終予選直前に負った大怪我が歯車を狂わせることになるが、悲劇もまた代名詞。明るいキャラクターもあって、J屈指の人気選手として活躍した。

 引退後も解説者として引っ張りだこの生活を送り、TBS系のサッカー番組「スーパーサッカー」では長らくコメンテーターを務めた。人気を不動のものにしたかと思われたが、15年に古巣・名古屋グランパスのGM補佐に就任。「5人目まで連動するサッカー」をコンセプトに掲げてチーム強化を図ったが、まさかの大不振に陥ってしまう。シーズン途中で休養が発表され、シーズン後に契約解除となり、しばらく表舞台から姿を消すことになった。

 ニュースになったのは17年春のこと。高校時代に「四中工三羽烏」としてともに活躍した中田一三氏の設立したFC.ISE-SHIMAのクラブアドバイザー就任が発表。中田氏が京都サンガF.C.の監督に就任したことで、19年度より理事長職に就くと、今年度よりついに、理事長職を兼任して監督に就任することになった。

 13年に地元クラブを引き継ぐ形で立ち上がったFC.ISE-SHIMAだが、最初は凸凹のあるグラウンドで試合を行うなど苦悩も多かったという。しかし小倉監督らの尽力もあり、ようやくJFL挑戦権に王手をかけるところまで力をつけてきた。資金面ではまだまだ苦しいところが多いようだが、胸スポンサーに三重県津市に本社を置く「おやつカンパニー」の主力商品である「ベビースター」が入るなど、主力DF中田永一も「小倉さん効果。三重県全体がどこでも応援してくれる」とその存在の大きさを再確認している様子だ。

 今のやりがいは何か。そう問われた小倉監督は「Jリーグに上げるというところで来た。そういう意味ではクラブを育ているというところでは大変ですけど、やりがいはあります」とキッパリと話した。「楽しいかって?楽しいもいろいろですが、楽しいっちゃ楽しいですよ」。小倉スマイル全開に豪快に笑った48歳は、地元三重から“Jリーグ再挑戦”の夢を追い続ける。

※今季のJFLは17チームで行われたが、来季は16チームに戻るため、昇格チームはJ3への昇格チームの数で条件が決まることになる。いわきFCが昇格を内定させているが、100年構想クラブで上位2位のヴェルスパ大分がJ3ライセンスを持たないために、JFLの昇降格は入れ替え戦で決めることになる。

 組み合わせはこの地域CLの1位のチームがJFLで最下位が決まっているFC刈谷と、同2位がJFLで16位のチームと対戦することになる。

(取材・文 児玉幸洋)

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