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[選手権]上を目指した敗戦(那覇西vs佐賀東)

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[1.2第87回全国高校サッカー選手権大会2回戦 那覇西(沖縄) 0(5PK4)0 佐賀東(佐賀) 西が丘]

九州勢同士の一戦となった那覇西(沖縄)と佐賀東(佐賀)の1戦は80分間で決着がつかずPK戦へ。サドンデス1人目に決着がつき、PK戦スコア5-4で那覇西が接戦を制した。インターハイベスト4の佐賀東は涙の敗戦。勝った那覇西は3日、国学院久我山(東京B)と対戦する。

最初から最後まで中盤が落ち着かない試合になった。ボールを繋ごうという意識は佐賀東の方に感じられた。その足元の細かさに初戦7-0で東海学園(愛知)を粉砕した力が見え隠れする。しかし、どこか歯車がかみ合わない。
一方、那覇西は大味な展開を試みる。スピードあるFW仲田一斗(3年)、FW城間清太(3年)の2トップをターゲットにボールを放り込み続けるが、こちらもピタリと合うパスがでない。前半から混戦状態はできあがっていた。

後半、風上に立った那覇西が裏を狙ったロングパスを通すように。この流れをしのいだ佐賀東はサイド攻撃の意識を徹底することで逆にペースを握る。そして試合が変わったのは26分。初戦1ゴール1アシストのエース、MF桃井宏和(3年)を投入。佐賀東がイッキに攻勢を強める。
「桃井は足が痛むと今朝も言っていたので、迷ったが先発を外した。試合状況によって万が一の場合は途中交代で使おうと思っていた」とは佐賀東の蒲原昌昭監督(38)。キープレイヤーを投入することでチームに一本の芯が通った佐賀東は33分にCKからMF中原秀人(3年)のヘディングシュートがバーを叩き、34分には桃井のシュートがゴールをかすめるなど好機を連発。しかしゴールには至らなかった。

「自分たちからプレッシャーをかけて奪ってから速くしかけていこうと言っていたができなかった。前の選手が動けていなかった」と勝利した那覇西の松田邦貴監督(35)は反省しきり。「自分たちと佐賀東と、やろうとしていたことは共通していた部分もあったと思う。その質で負けたくなかったが、満足はしていない。よく勝てたと思う」(同監督)。

確かに、プレーの細かさや選手たちの共通認識の徹底ぶりは佐賀東の方がより感じられた。しかしPK戦になって、これを決めれば勝利となる5人目のキックを上原諒也主将(3年)が外してなお落胆することなく勝ちきった。過去那覇西は選手権でPK戦を5度行っており、うち4勝。この勝負強さはトーナメントで強力な武器となる。

一方惜敗した佐賀東。「桃井の代わりにMF田中孝宏(3年)を入れたが、彼は本来ボランチの選手。その影響もあってか特に前半は連動がまったくなかった。攻めも単発だった。後半、田中に代えMF黒川輝紀(2年)を入れてある程度流れは修正できたけど物足りなかった。これは自分の責任、ミスです。最初から桃井を使っていたらもっと違ってたはず。でも選手権上位を狙っていたから迷った。もし今日PK戦で勝っていれば、明日は桃井をフルに使って間違いなく素晴らしいゲームができたはず。今日は上を目指すうえでの“賭け”に負けました」(蒲原監督)。

一見強気な言い訳に聞こえるかもしれないがそうではない。インターハイでベスト4に入り、全国に佐賀サッカーを知らしめようという野望を本気で持っていた。そのうえで桃井というキーマンの使い方に葛藤した監督の言葉は重い。試合には負けた。桃井の起用がその敗因というのも遠からぬ事実。では無理して最初から使って勝ったとして、その先はあったのか?正解など導けない判断の難しさと指揮官はいつも戦っている。

<写真>PK戦を制した那覇西イレブンが喜びを爆発
(取材・文/伊藤亮)

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