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[高校総体]前橋育英、初戴冠の要因は強烈な個性の調和

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[8.8 全国高校総体決勝 前橋育英 2-0 米子北 橿原公苑陸上競技場]

 前橋育英(群馬)がついに悲願の全国制覇を果たした。しかし、他チームが羨むほどのタレントを抱えていたとはいえ、プリンスリーグ(U-18)関東では2部に降格するなど、ここまでのチームの歩みは、決して順風満帆ではなかったのも事実。「インターハイの前までは個性が強すぎて、チームがバラバラでした」と、主将の小山真司は優勝後の取材で振り返っていたが、ではその個性の強いタレント集団に一体何が起こり、今回の優勝へと至ったのだろうか。

 4月に開幕したプリンスリーグでは、小島秀仁のパートナーを務めるもう一人のボランチと、代田敦資と組ませるセンターバックが決まらず、その結果あれこれ様々な選手を試すといった各選手のポジションが定まらない状況が続いていた。さらに、中美慶哉が暫定的に腕章を巻いて試合には臨んでいたものの、長らく続いた「主将不在」も影響し、それが小山の言うところの「チームがバラバラだった」という状態につながったのだろう。

 そんなチームに変化をもたらすキッカケとなったのは、小山と三浦雄介の存在である。彼らはプリンスリーグでは、レギュラーはおろか、関東大会に臨むBチームの選手だった。だが、そのAチームから落選した悔しさをバネに下から這い上がり、高校総体直前にAチームへと引き上げられ、三浦はボランチに定着。小山はCBのレギュラーを掴んだだけでなく主将の大役をも任されることになった。
 小島は三浦とのコンビを「とてもやりやすい」と話している。以前は、小島が攻撃の起点になろうと高いポジション取りをした挙句、中盤の底にスペースが生じてしまうなど、全体のバランスの悪さが目立っていたが、三浦が前目で、小島がやや後ろでバランサー、プレーメーカーとしての役割が明確になったことにより、総体ではチーム全体の安定度が一気に増した。また、守備の要にまで成長した小山はプレーの面以外でも、主将という立場からも「強烈な個性」を見事にまとめ上げた。したがって、夏を境にタイガー軍団はチームとして機能。それが大きな結果を呼ぶことになったのだ。

 監督就任25年目でようやく手にした“日本一”の栄冠にも、山田耕介監督は「あまり実感が沸かない。今日は内容が良くなかったから…」と首を傾げていた。だが、この夏の戦いで手にした「個性」と「チーム」の調和によって、おそらく今後の戦いへの大きな手応えを掴んだことは間違いないだろう。秋の全日本ユース(U-18)選手権、冬の全国高校選手権。夏の王者がどのような戦いぶりを見せてくれるのか、今後の戦いぶりに注目したい。

(取材・文 鈴木潤)
高校サッカー・09全国高校総体特集

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