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[MOM1066]桐蔭学園GK藤川誠人(3年)_元プロの父譲りのPKストップ

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.15 全国高校総体神奈川県予選準々決勝 桐蔭学園高 0-0(PK7-6)湘南工科大附高 等々力]

 長い戦いに終止符を打ったのは、渾身のPKストップだった。試合時間80分、延長戦20分を過ぎてもゴールは生まれず、PK戦も互いにノーミスでサドンデスに突入するという拮抗したゲーム。湘南工科大附高7人目のPKキッカーが右に蹴ったボールを、桐蔭学園高GK藤川誠人(3年)がセーブ。両手でしっかりと当てると、歓喜のあまり絶叫し、そのままピッチに突っ伏したままとなった。込めていた気持ちの大きさが伝わって来るシーンだった。桐蔭学園は、続く7人目がキックを成功させ、PK戦7-6で熱戦を物にした。主将として、守護神としてチームをけん引した藤川には、胸に秘めた思いがあった。「昨年の高校総体でも出場させてもらったけど、同じ準々決勝(横浜創英戦)でPK戦になって、止めることができなくて負けてしまったのがすごく悔しかった。今日、また準々決勝でPK戦になって、絶対にヒーローになってやるって口に出して言っていた。5本で決めるつもりだったけど、最終的に止められたので良かった。サドンデスになっても、ただヒーローになるということだけを考えた」と一心不乱に臨み続けていたことを明かした。

 藤川の父・孝幸さんは、V川崎(現・東京V)で活躍したGK。1995年に国立競技場で行われたゼロックススーパーカップでは味方の一番手が外したPK戦で2本を止めて勝利に貢献するなど、PK戦の強さで知られた。藤川は「父には全然かなわない」と話したが、父に影響を受けて幼稚園の頃からGK一筋で培った力が重圧に打ち勝った。プレッシャーとの戦いは、見る者にも伝わった。桐蔭学園の賎機徳彦監督は「うちは、PKではやられてしまうイメージがある。今日は、よくひっくり返してくれた。(感極まって)泣いてしまうのも分かる気がする」と主将の働きに目を細めた。

 強い精神力は、父の教えや桐蔭学園サッカー部のモットーによって築き上げられてきた。藤川は「父から具体的なプレーの仕方などは言われないけど、(試合で)自分を信じられるようにするために(普段から)できることをやれと言われている。メンタルは父によって鍛えられた部分があると思う。それに、桐蔭はサッカーだけじゃなくて学業とか私生活もやるべきことをやるチームだし、しっかりとやってきた。人一倍、努力をしているという自信がある」と胸を張った。主将としてチームの話し合いも率先して行い、仲間を信頼するチームにまとめあげたのも藤川だ。全国大会出場にあと1勝。頼もしい主将は「みんなが信頼し合っているから、絶対に勝てる」と言い切った。

(取材・文 平野貴也)

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