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[総体]より攻撃色強めた昨夏の覇者・市立船橋、延長戦を制して全国へ:千葉

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[6.21 全国高校総体千葉県予選準決勝 市立船橋高 1-0(延長)暁星国際高 東総]

 昨夏の全国王者が激戦区・千葉突破――。平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)への出場権2枠を懸けた千葉県予選は21日、準決勝を行い、昨夏の全国王者・市立船橋高が延長前半8分にFW矢村健(2年)が決めた決勝ゴールによって暁星国際高に1-0で勝ち、2年連続24回目の全国総体出場を決めた。

 コンパクトで距離感のいい守備陣形を崩さず、ゴール前に入ってくる選手、ボールに対して主将のCB山本貴大(3年)や存在感を放った1年生CB藤井大輔が深いタックルや出足の速い守備をする暁星国際を仕留めるのにやや時間を要した。それでも日本高校選抜GK志村滉(3年)が「昨年よりも勝負強さがあると思っている。先制されても逆転して勝ち切る試合が多い。メンタル的に強いと思う」と評する市立船橋が、延長戦を制して全国切符を勝ち取った。

 決着をつけるゴールが決まったのは延長前半8分だった。敵陣でボールを奪い返した市立船橋は、最前線に張るFW磯野隆明(3年)が素早く前を向いて右前方へ走る矢村へパスを出す。これに走りこんだ矢村が「クロスでした(苦笑)。(シュートかクロスか)迷ったけれど、入って良かった。上げたのはいい判断だったと思う」と振り返りながらも強いボールをゴール方向へ入れると、「当たり損ね」の一撃がゴール左ポストに当たってネットを揺らし、決勝点となった。

 昨年は名門の「新たな色」として印象を残した連動したパスワークなどの多彩かつハイレベルな攻撃で史上最多8度目となる全国総体優勝を果たし、全国選手権8強へ駒を進めた。その名門が今回、全国進出を懸けた大一番で組んだ先発の3年生は、主将のDF藤井拓、志村、磯野の3人だけ。DF杉岡大暉とMF高宇洋という2人の1年生も先発した“若い”市立船橋は「(昨年よりも)攻撃的な厚みを出したい。昨年やってきたものからもっと積み上げていきたいというところを意識している」(朝岡隆蔵監督)という3バック、期待の2年生MF椎橋慧也の1ボランチという攻撃的布陣だった。チームは中盤の守備的選手の人数を削った攻撃的な陣容で「今までにないチャレンジ」をした昨年よりもさらに高みを目指し、リスクを消すために個々にハードワークを求める取り組みをしている。

 この日は中央の堅い暁星国際に対して外から攻略を図った。攻撃の精度で相手を上回る市立船橋はボールを左右に動かし、右の俊足MF永藤歩(2年)のスピードなどを活かしたサイドアタック。そして22分には空いた中央へ藤井がグサリとくさびを入れると、磯野の落としからMF古屋誠志郎(2年)が右足ミドルを打ち込んだ。そして23分には右CKをファーサイドで折り返し、最後は中央へ飛び込んだDF今村晃(2年)がヘディングシュート。34分にはMF下村司(2年)の左足FKがゴールを捉えた。

 一方の暁星国際はボールを奪うと少ないタッチで前線へ運ぶ。市立船橋守備陣を攻略するまでの精度はなかったものの、左SB石垣徳之(2年)の左足CKや縦パスがチャンスを生み出し、21分には相手DFを剥がしたFW山口尚輝(2年)のスルーパスで右サイドを抜け出したFWタファコリ・ショーギ・ファリド(3年)がシュートを放つ。F東京のエースとして活躍した「キング・オブ・トーキョー」アマラオ氏を今年4月からヘッドコーチとして迎え入れるなど強化を進める暁星国際は、好守を軸に市立船橋と渡り合っていた。

 後半は市立船橋の椎橋がセカンドボールを次々と回収し、古屋がポジショニング良く攻撃をコントロール。前半よりも押し込む時間帯を増やした市立船橋は永藤が右サイドを個人技で切り崩す。5分、永藤の決定的なクロスからニアサイドへ飛び込んだ矢村がヘディングシュートを放つが、これはGK村西空(2年)が素晴らしい反応でゴールの外へかき出す。市立船橋は12分にも鋭いターンから矢村が右ポスト直撃の右足シュート。31分には右CKからファーサイドの椎橋が決定的な右足シュートを放ったが、再び村西が立ちはだかってゴールを許さない。

 好守やスタンドでがむしゃらに歌い続ける控え部員たちが勢いを持たせた暁星国際はMF鳥海統偉(3年)のミドルシュートやショートカウンターからMF田中大和(3年)の放った右足ミドルなどで1点を狙う。ただ昨年の全国優勝メンバーである藤井、志村、後半から投入されたDF打越大樹(3年)ら市立船橋の堅守は簡単には揺るがない。暁星国際は延長戦まで持ち込んだものの、不運な一発に泣いて失点。それでも延長後半終了間際は試合の締めに課題を見せた市立船橋を攻め立てると、9分にDF小笠原峻太(2年)の右クロスがファーサイドでフリーのタファコリに届き、直後には右サイドから田中が出したスルーパスに走りこんだタファコリが右足を振りぬく。だが、今年の高校サッカーを代表する守護神・志村の牙城を崩すには至らなかった。

 藤井は「延長になったとしても勝ち切ったこと、全国を決められたことは良かった。(全国で勝ち上がれば)昨年のように、行けるなという感覚を得られると思う。一戦一戦頑張る」。特に攻撃面ではまだまだ連係面でチグハグな部分が多く見られた。若いチームだけに「底力、責任感が違う」(藤井)「まだ完成していない。攻守の質を引き上げていきたい」(志村)。ただ、技術、アイディアを持つ選手たちが揃い、ポテンシャルと期待感は大きい。指揮官も「今年は時間がかかると思う。しっかりと積み上げていくだけ」と語ったように、全国総体最注目の「市船」は焦らずにチームを構築していく。

(取材・文 吉田太郎)

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