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[総体]【特別企画】“ユース教授”安藤隆人氏が語る全国総体優勝争い展望_其の一

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 ゲキサカでは夏の高校日本一を争う平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技が開幕する8月1日(1回戦は8月2日)までの間、連日特集企画を掲載します。その第1弾は“ユース教授”こと、サッカージャーナリストの安藤隆人氏による大会展望です。現日本代表の本田圭佑や香川真司、岡崎慎司の高校時代など、ユース年代を中心に取材を続けている安藤氏に、この夏の優勝を争う有力校、注目選手、ブロックごとの見どころと3本立てで語ってもらっています。今年も熱い夏になること間違いなしの高校総体(インターハイ)。まず“ユース教授”の見る今大会の有力校、優勝争いの展望とは?

 今年はずば抜けた優勝候補はいないと考えています。でも、ずば抜けたチームがいない分、総合力のある「面白い」チームというのは裾野が広がった印象です。夏の厳しい連戦の中で、続けて力を出し切ることができるか。だから、個の能力の高さに加え、持っているカラーの完成度をどこまで高めているかという点が優勝候補を挙げるポイントだと思います。あと、勝ち抜くための重要なポイントは守備。インターハイは35分ハーフなので守り切れてしまう。攻撃力が高くても守備力が計算できないチームでないと、勝ち上がることは難しいです。

 今大会の優勝候補の特性は、ふたつに分類されると思います。それは守備力が安定しているチームと、カラーがあり、それがよく磨かれているチーム。守備への信頼感が高いチームでいうと、青森山田高(青森)、広島皆実高(広島)、山梨学院高(山梨1)、星稜高(石川)、鹿児島実高(鹿児島)、市立船橋高(千葉2)、矢板中央高(栃木)。そして強いカラーを持っているチームとして東福岡高(福岡)、立正大淞南高(島根)、前橋育英高(群馬)、大阪桐蔭高(大阪1)、大津高(熊本)、尚志高(福島)、そして作陽高(岡山)の名前を挙げたいと思います。

 「守備」では特に青森山田と広島皆実に注目です。青森山田に関しては、まず黒田(剛)先生がトーナメントの戦い方を良く知っている。プレミアリーグも4年間全部出ていて、インターハイ、選手権と全国大会のトーナメント戦にも全部出ている数少ないチームです。そういうチームって少ないじゃないですか。その中でトーナメントの戦い方、リーグの戦い方を積み重ねてより深く理解されている。そして今年は3バックと4バック両方できることが強みだと思います。今年、彼らは春先からサンフレッチェ広島の3バックを採用して、それを継続してやってきました。守備時は5バック気味にしっかりと守って、そこから推進力を持って前へ出ていく。これまで青森山田はオーソドックスな4-4-2がメインだった中で今回3バックを取り入れて、サイドの押上げとかディフェンスラインのビルドアップを植え付けた。そのどちらでも対応できるという点は、大会を戦う上で、ボクはひとつのメリットになるかなと思います。

 そして、皆実はサッカーが洗練されています。プリンスリーグの作陽戦を見ましたが、奪ってからの展開が凄く速いし、よくトレーニングされているなという印象を受けました。斜めに入るパス、サイドチェンジが正確で、そして縦パスの強度が凄く強い。奪ってからポンポンポンとつなぐんじゃなくて、スパーン、スパーンと。皆実のスタイルは「堅守強攻」と言いますけど、本当にテンポが速い。加えて今年は守備がいいんですよ。藤原(大輔)というCBが中心になって、彼と北尾(涼)の2CBはいいですし、あとアンカーの油井(喬介)の存在も大きい。そして横路(翔太)佐藤(笑也)という飛び出せる“槍”も持っています。初戦が鵬翔(宮崎)で次が市船というとんでもないゾーンに入ってしまいましたが、ここを突破したら全国優勝もいけると思います。なぜかというと総合力が高くて安定している。攻守のバランスが本当にいいからです。

 この青森山田と広島皆実は守備が堅い上に、しっかり攻め込むこともできるという利点があります。この2チームに近い存在が山梨学院と星稜です。山学は何といっても2CB(渡辺剛大野佑哉)が凄い。高さと強さを兼ね備えています。地元開催関係なく、今年の山学はレベルが高い。そして天皇杯やプリンス、インターハイ予選と過密日程の中でターンオーバーじゃないですけど、チームとして戦い、2チーム分鍛えられた。選手層は確実に上がったと思います。地元開催プラス、前評判が高かったことプラス、チームの底上げができているという、勝つための3つの要素がある。守備が良くてカウンターを持っているという点では皆実と似ているなという印象です。

 星稜は全国準優勝を経験した昨年のメンバーが多い。特に守備面は鈴木(大誠)の存在が大きいです。そしてボランチに平田(健人)がいる。この縦ラインは強烈です。去年を経験したこの2枚看板がいるのはデカいと思いますね。時には平田と鈴木がCBを組んだり、高橋(佳大)と鈴木が組むこともある。SBの原田(亘)宮谷(大進)も守備力はあるし、2年生の坂口(璃久)もいいGKだと思う。また、昨年のレギュラーがスタメンから外されているというところが層の厚さを感じさせます。左利きのボランチの杉原(啓太)が成長したり、2年の阿部(雅志)とか、選手層は物凄く厚くなったと思います。経験者がたくさんいることプラス、それですらベンチに入れないという厳しさがあります。その部分は河崎(護)先生も手ごたえを感じていると思います。

 あと「守備」では鹿実、市船、矢板中央の3チームを挙げたいと思います。鹿実はゲーゲンプレッシングに注目です。前からハメ込んでどんどん、どんどん押し上げていくゲーゲンプレッシング。最近は苦しい時期の続いていた鹿実ですが、ボクは完全復活したと言っていいと思います。鹿児島県予選でも圧倒的に押し込みましたし、森下(和哉)さんは「自分たちの信じてやるやり方がはっきりした」と。森下さんはゲーゲンプレッシングを「進化」と言っています。持ち前のハードワーク、フィジカルの強さプラス、ゲーゲンプレッシングの「進化」がある。選手にも今、浸透しているのでやり切ったら面白いと思います。加えて10番の福島(立也)やCBの内屋(椋佑)奥村(泰地)、FWの前田(翔吾)とセンターラインがしっかりしている。サイドにもスピードのある選手や突破力のある選手がいるし、何より全員が良く動く。真夏の連戦ということを考えると、ストロングポイントを出しやすいのではないかと思います。攻撃力の高い盛岡商(岩手)と鹿実の試合は1回戦注目のカードですよ。

 市船は今、3バックでやっています。現時点では例年よりも厳しい状況だとは思うんですが、1年生でスーパールーキーが2人(MF高宇洋、DF杉岡大暉)入ってきていますよね。戦力は増してきているし、伝統的に守りが堅い。あと去年から出ている矢村(健)だったり、藤井(拓)、打越(大樹)、志村(滉)がいる。特に守備面において、GKに志村がいるというのは、ストロングポイントだと思います。彼がいれば、簡単には失点しないですからね。

 矢板中央は2年生の2CBに将来性を感じるので、期待値を込めて名前を挙げています。星キョーワァン川上(優樹)。彼らが順調に伸びてきたら、来年相当面白いチームになる。今年のインターハイで彼らがどこまで多く試合をして、成長するか。ともに180cm以上あって、空中戦も強い。去年から出ているということも加味すると、この夏に大きな伸びしろを期待できると思います。


続きは【其の二】へ。

[写真]安藤氏が守備の強いチームとして優勝候補に推す青森山田


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【特設ページ】高校総体2014

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