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[総体]主軸不在時によりこだわってきた成長、昨夏全国2位の大津が日本一へまずは熊本制す!

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[6.2 全国高校総体熊本県予選決勝 大津高 3-1 熊本国府高 水前寺競技場]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技(兵庫)熊本県予選は2日、決勝を行い、昨年の全国総体準優勝校である大津高がMF原岡翼(3年)の2ゴールとU-18日本代表FW一美和成(3年)のゴールによって熊本国府高に3-1で勝ち、5年連続18回目の全国総体出場を決めた。

 今年は2月に九州新人大会を26年ぶりに制し、プリンスリーグ九州では無敗首位。今季、ロアッソ熊本の特別指定選手としてJ2で4試合に出場(うち3試合は先発フル出場)しているCB野田裕喜主将(3年)と一美のU-18日本代表コンビらタレント擁す大津は魅力的で強いチームになっているが、このチームにはライバルたちに決して劣らない、常に成長を目指そうとする姿勢がある。

 野田は総体予選初戦の一週間前に行われたU-18日本代表の韓国遠征から帰国した際に優勝を確信したという。「これで優勝できるなという実感がわきました。朝練でトップチームのメンバー全員、シュート練習があるんですけど、その質だったり、熱というのが凄くて、これはいけるなと思いました。残っているメンバーが凄く良くやってくれているので、帰ってきたらむしろ良くなっていたりする。(チームを離れる期間が長いが)そこは安心しています」。対してMF河原創(3年)は「(野田)裕喜が代表に行っている分、帰って来た時に前と同じレベルだったら置いて行かれるという部分もある。自分たちもレベルアップして、そこに裕喜たちが入っていいサッカーができたらいい」。野田と一美という大黒柱が不在だった一週間にチームはよりこだわって成長を目指し、これまで以上の練習の熱気をもって彼らを迎え入れた。

 最高に近い形で熊本県予選に突入した大津は準決勝までの4試合を24得点1失点。年々レベルの上がっている混戦トーナメントを横綱相撲で勝ち上がる。迎えた決勝の対戦相手は接戦をしぶとく勝ち抜いてきた熊本国府。新人戦と同じカードとなった決勝は2分、大津FW一美が熊本国府GKのキックをチャージ。こぼれ球を拾った10番MF吉武莉央(3年)がDFを外してからコントロールショットを打ち込む。さらに7分には左中間を抜け出した原岡が決定的な左足シュート。GK安部宏希(3年)にブロックされたこぼれ球を一美が狙うが、これは枠を外れた。

 大津はリスタートへの移行にも時間をかけず、平岡和徳総監督が「ウチの心臓」という吉武と河原のコンビやMF石坂竜哉(2年)を軸としたパスのテンポ、攻守の切れ変えも非常に速い。対する熊本国府は前半、DF田河雄大(3年)が相手エースの一美をマンマーク。守備に重きを置いたチームはファウルすれすれの厳しいチェック含めて大津に自由を与えない。奪ったボールを1トップのエースFW原口克俊主将(3年)にまで運ぶことはできなかったが、大津の一美や原岡、MF杉山直宏(2年)に危険なゾーンに入られても、最終局面で防いで得点を与えなかった。熊本国府の佐藤光治監督も「やられそうになりながらも上手く時間を使っていたんですけど・・・・・・」と振り返ったように辛抱強い試合をしていたが、大津はセットプレーで熊本国府ゴールをこじ開ける。

 27分、大津は河原が左FKを入れると、ゴール前で潰れ役となった一美の背後から現れた原岡がヘディングシュート。これで先制点を奪うと、アディショナルタイム突入後の36分にも同じ河原の左FKから2点目を挙げる。ニアサイドで一美がDFを引き寄せ、空いた中央のスペースに飛び込んだ原岡が右足でゴールを破って2-0と突き放した。

 熊本国府は後半開始から機動力のあるFW大林海心(3年)を投入。7分にはカウンターから原口が持ち込んでスルーパスを送る。これは大津CB眞鍋旭輝(3年)の好守に阻まれたが、クロッサーのMF尾上りつき(2年)を投入した後の18分にも尾上のクロスのこぼれ球をMF田中友巳(3年)が右足シュートで狙うなど敵陣で攻撃する時間を大きく増やした。だが、野田と眞鍋、右SB坂田直樹(3年)らが堅い守りを見せる大津は前線からのプレスも欠かさず、相手に決定的なシーンをつくらせない。逆に原岡の右足シュートや、怪我のSB大塚椋介(3年)に代わって先発した左SB山田透生(3年)の左足ミドルなどで3点目を狙った。

 熊本国府は32分にMF田中秀治(3年)の左足FKがゴールを捉えるがこれはGK前田勇矢(2年)が横っ飛びでキャッチ。それでも諦めない熊本国府は36分、FKのクリアボールをMF大津信太朗(3年)が技ありの左足ループシュートでゴールを破る。これで1点差となり、熊本国府に芽生えた勝機。だが、一瞬でそれは断ち切られた。上手く時間を使いながら敵陣で試合を進めた大津は39分、抜け出した吉武がDFを振り切ってGKと1対1となると、シュートのこぼれ球を一美が押し込んで3-1。この日一番と言えるような歓声とともに大津は優勝の瞬間を迎えた。

 大津の平岡総監督は今年のチームの強さについてまず守備面の強さ、献身性を挙げる。5試合で放たれたシュートは10本に達しないというほどだ。そして培った吸収力の高さ。また目標が身近にあることも大きい。平岡総監督は「目と耳がいいですから。見たものと聞いたものに対して、ちゃんと次の行動に移せるっていう連中。(目と耳を鍛えるということは)ボクはレギュラーであろうがそうでなかろうが、あと50年、60年ある人生の中の持たせられるお土産だと思っている。目と耳を鍛えると、諦めないという才能が生まれてくるんですよ。そこで顔つきが変わったり、目力が変わっらりするのでリンクしていますよね。それでサッカーの成長が加速する。また谷口彰悟が日本代表に選ばれたり、(野田や一美ら)代表のお手本がリアル。よそにないお手本がたくさんある」と頷く。

 昨年の悔しさも選手たちの力になっている。昨年の全国総体では同校史上初となる決勝進出。東福岡高との決勝でも1-0でリードしていたが、残り2分で追いつかれて延長戦で敗れた。そして選手権は全国舞台に届かなかっただけに、今年の目標は県内3冠、そして日本一。一美は「何が何でも全国制覇できるように」語り、野田は「今度は優勝」と誓う。自信はあるが、現状に満足はしない。野田は「順調に来ているときにそれで満足してしまったらサッカーの神様が試練を与えると思う。もっともっと、日本一という目標があるので、チーム全員でやっていく」。全国総体開幕まで、また全国総体期間中も成長を遂げて今年こそ日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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