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[総体]FW転向1年で高校選抜、U-18代表、熊本特別指定選手・・・大津FW一美が会心のゴール

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[6.2 全国高校総体熊本県予選決勝 大津高 3-1 熊本国府高 水前寺競技場]

 大津高は最高の形で決勝戦を終えた。1点差に詰め寄られて迎えた後半アディショナルタイムの39分、鋭いドリブルで抜け出したMF吉武莉央のシュートのこぼれ球をU-18日本代表FW一美和成(3年)が右足で押し込む。ゴールを確認すると、背番号9は渾身のガッツポーズ。そして、逆サイドにある味方応援席前まで駆け抜けて喜びを爆発させた。「やっぱり決勝は一番決めたかった。決めることがFWとしても、エースとしても役目だと思っていたので、最後決めることができて嬉しかったです」。

 3月には日本高校選抜欧州遠征メンバーに選ばれ、5月にはU-18日本代表にも初選出された。そしてロアッソ熊本の特別指定選手として登録されている。その注目FWは準々決勝から毎試合のように厳しいマンマークを受けてきた。ボールをキープしているときだけでなく、ボールを持っていない時も相手DFは一美のリズムを崩そうとして来ていた。その中で一美は立ち上がりに相手GKのキックをチャージするなど守備面で貢献したのに加え、強靭なフィジカルとテクニックを活かしたポストワークで攻撃の起点となり、相手に隙あればシュートへ持ち込もうとしていた。得点を奪うことはできていなかったが、前半27分と36分にMF原岡翼が決めたゴールはいずれも左FKのニアサイドで一美が潰れ役をして生まれたもの。「チームが勝つためにプレーするのがエースとして大事なことかなと思っている」という一美は無得点でもエースとしての重要な役割を果たしていた。

 だからと言って、ゴールを欲する気持ちがない訳ではない。「スコアも結構気にしています」と言うように、最後まで諦めずにゴールを狙い続けたことが勝負の行方を決定づける3点目のゴールに繋がった。今季のプリンスリーグ九州では10得点で得点ランキング1位。昨年5月にCBからFWへ転向した直後は「いきなりコンバートされたときは動揺もあった」というが、準優勝した全国総体では最前線で力強く、正確なポストワークを見せて存在価値を高めた。その全国総体は1ゴールに終わったが、現在はゴールをこじ開ける力がついてきている。大津の平岡和徳総監督も「一美もなかなか変態(スケールの大きなプレーヤー)でしょう?」と笑い、「こじ開ける力が出てきている。元々ボール持てない選手がストライカーになっているというケースが多いと思います。でも、こっち(一美)はボール持てる上にストライカーの技術をつけていくという、また違うタイプのセンターFWになっていくと思います」と期待する。今後、よりシュートへ移る動作、自身のシュートに結びつけるための連係が高まってくればよりスケールの大きなストライカーになりそうだ。

 一美はエースとして勝ち抜いた熊本予選を振り返り、「マンマークされるということは自分が注目されることなんでそれは嬉しいことなんですけど、やっぱりそれを跳ね除けるくらいもっと成長しなければいけないと思いました。高校選抜と代表に入ってFWとしてもっと上に行きたいな、という思いも出てきている。そういう面では毎日の練習が大事だと思っているので、それをしっかりとやり続けてもっと上に行きたい。得点力を上げて、もっとチームのために走ったり、守備したりすること。上手い選手よりもいい選手になれるようにやっていきたいです。ロアッソで今試合に出られていないですけど、野田とか出ている試合を見ていて自分も出たいと思ったり、凄い刺激になっている。インターハイ後にロアッソで試合に出たいなと思っています」と意気込んだ。FW転向後、まだ1年だが、その期間の短さを言い訳にはしない。より努力して力を磨き、目標を達成するつもりだ。

 全国総体へ向けては「去年は1点しか取れなかったんで、今年はエースとしてチームが勝てるように点取っていって、何が何でも全国制覇できるように。試合へ向けて頑張っていきます」。大会屈指のFWと評価される中で迎える全国大会。「(憧れは)岡崎選手とかです。点を決めて、チームのためにも走っているという姿が、自分に足りないところだと思っているので」と謙虚に語るFWが、今夏はエースとして得点を奪い、役割を果たし、チームを日本一へ導く。

(取材・文 吉田太郎)
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