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[総体]強さと巧さ示し、難敵乗り越えた!昨夏全国4強の関東一が東久留米総合振り切り、全国王手:東京

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[6.11 総体東京都予選準々決勝 東久留米総合高 1-1(PK3-4)関東一高 駒沢2]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)への出場2枠を懸けた東京都予選の準々決勝1日目が11日に行われ、昨夏全国4強の関東一高が1-1で突入したPK戦の末、4-3で東久留米総合高に勝利。関東一は18日の準決勝で駒澤大高対東大和南高戦の勝者と対戦する。

 PK戦の末、薄氷を踏む準決勝進出を決めた関東一の小野貴裕監督は「久留米さんとはいつも大事なところ、肝となる試合で当たる。きょうも行けそうで、行けない。選手は苦しい試合だったと思う」と振り返った。この日、関東一は怪我明けの注目10番、MF冨山大輔(3年)がベンチスタート。だが、今大会主将を務めている注目CB鈴木友也(3年)とCB石島春輔(3年)が危なげない守りで相手にシュートシーンを作らせない。そしてFW重田快(2年)が前線でキープ力を発揮して相手の守りを押し下げると、同サイドをコンビネーションで繰り返し崩しにかかる。

 コンビネーションの中で見せるスペースへの質の高い動きとそこへ通す長短のパスの精度。強豪対決は、左FW林健太(3年)と右FW新藤貴輝(3年)の突破力も活かして攻める関東一が攻め続ける展開となった。それでも4-4-2システムで3ラインを引いて守る東久留米総合からチャンスを作りながらも決め切ることができない。タッチライン際から入れられるクロスは合わず、跳ね返された。一方、東久留米総合はボールを奪った流れで逆サイドに展開。MF今井凱斗(3年)やMF小菅友寛(2年)が攻め上がり、スペースでボールを引き出すFWコナテアマウ大吾(3年)やFW纐纈隆輝(3年)が仕掛けを見せる。だが東久留米総合の齋藤登監督は「奪った後の攻撃が悪すぎた。まともな攻撃ができなかった」。攻撃色の強い東久留米総合は指揮官が「守備を固めてサッカーをやろうとは思っていない」というように、守りに入ることは考えていなかった。だが、押し下げられたことで間延びしたチームはスペースを狙ったパスの精度も低く、そこで関東一と大きな差をつけられてしまう。結果、守勢に回る展開になってしまった。

 32分、関東一は右サイドから攻めると、最後は混戦からMF藤原友哉(2年)が右足ボレー。だが東久留米総合はGK村松健太(3年)が好反応ではじき出す。関東一は40分にも新藤の突破から林が決定機を迎えながらも決めきれなかったが、その直後に待望の先制点を奪う。右クロスのこぼれに反応した左SB根本佑(3年)がダイレクトボレーで鮮やかに決めてリードを奪った。

 関東一は鈴木が「前半に『これ、行けるな』と思ったんですけど、これで簡単に行かないのが東京のトーナメント」と説明したように、試合を優勢に進めたが、そのまま勝ち切れるほど甘くはなかった。東久留米総合は後半10分、DFと入れ替わった小菅がゴールへ迫るが、関東一は石島が判断良くカバー。逆に後半も相手のプレスを剥がしてボールを押し進める関東一は23分、重田、林が粘って最後は根本が右足シュートを打ち込み、31分には高速エラシコでDFを鮮やかに抜き去った林が決定的な右足シュートを放つが東久留米総合DFに阻まれてしまう。CB谷海斗(3年)や右SB内山隆弘(3年)らが必死に守る東久留米総合だが、相手のパスワークに走らされた影響か、後半半ばから足を攣らせる選手が続発。攻められる時間が長い中、苦しい試合となったが、1点差で食らいついたことが試合最終盤に歓喜をもたらす。

 37分、自陣FKから村松が蹴りこんだフィードを起点に左サイドへ抜け出した交代出場FW岡野雅也(3年)がGKのファウルを受けてPKを獲得。前後半を通して強さを見せていた関東一はこの場面、完全に対応が遅れて痛恨のシーンとなった。東久留米総合はこの絶好機でMF坂本泰雅主将(3年)が右足シュートをゴール右へ蹴りこんで同点。土壇場で試合を振り出しに戻した。

 試合展開からすると、関東一にとってこの失点のショックは大きかったに違いない。だが、攻守両面での奮闘光ったMF石井賢哉(3年)が「最初から簡単に勝てるチームだとは思っていなかった。延長になっても100分全て使って勝とうと思っていた」と振り返ったように関東一は揺るがない。失点直後にエース冨山を投入。また小野監督が「ただじゃ終わらないと思っていたけれど、ただで終わらなかった。でも動ける選手を後半に残していた」という関東一は1-1で突入した延長戦でもう一度ギアを上げる。その前半6分に重田が強引なターンから決定的な右足シュートを打ち込み、10分には冨山のスルーパスからFW堤優太(3年)が右サイドを打開して篠原が右足を振りぬく。だが東久留米総合はGK村松がこの日数度目のファインセーブで得点を許さない。関東一は冨山が見せる独特の間、DFをわずかに外すパスが得点の予感を漂わせていたが、それでも勝ち越し点を奪えないまま決着はPK戦に委ねられた。

 このPK戦で関東一はGK内野将大(3年)が魅せる。先攻・東久留米総合の1人目、攻撃の軸を担う今井のシュートを左へ跳んで完璧にストップ。関東一は1人目の堤から4人目の石島まで決めると、最後は東久留米総合の5人目・守備で奮闘した内山の右足シュートを内野が再び止めて決着をつけた。鈴木は「内野をもう信じていたので。やっぱりやってくれた。ホッとしたというよりも嬉しすぎた」。難敵を振り切った関東一が全国出場決定戦へ駒を進めた。昨夏全国4強へ進出したチームとはまた違う手応えがある。鈴木は「去年はどっちかというと前線の選手など個々がいけていた。今年は全員で守って、攻めて、去年よりは繋いで崩していけていると思う。後ろから見ても面白い崩しをしているので、後ろは信じて守りたいと思う」。この日、厳しい試合を勝ち切ったことは間違いなくプラス。石井が「まだまだ満足している選手は誰もいないと思う」というように意識高く大一番への準備を進めて、まずは今年も全国切符を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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