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[総体]全国V候補の一角・桐光学園を県2部の横浜創英が撃破!3年ぶりの全国へ!:神奈川

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[6.18 総体神奈川県予選準決勝 桐光学園高 1-2 横浜創英高 等々力]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)への出場2枠を懸けた神奈川県予選準決勝が18日に行われ、横浜創英高が2連覇を狙った桐光学園高に2-1で逆転勝ち。3年ぶり2回目となる全国総体出場を決めた。横浜創英は19日の決勝で慶應義塾高と戦う。

 プリンスリーグ関東に所属する桐光学園はJ数クラブが注目する左SBタビナス・ジェファーソン主将(3年)、10番MF鳥海芳樹(3年)という日本高校選抜コンビに加え、年代別日本代表候補歴を持つMF田中雄大(2年)やMF西川公基(3年)といったタレントも擁し、全国でも十分に優勝争いに加わることができるほどの戦力。その強豪を神奈川県2部リーグに所属する横浜創英が撃破した。前線で存在感溢れるプレーを見せたFW伊藤綾麻(3年)は「ボクたちチャレンジャーなんで。失うものは何もないんで、負けたら負けたで夏休みめっちゃ頑張って選手権狙えばいいだけだったんで、ここは全部出しきるつもりで試合に臨みました」。日本一を狙う桐光学園に負けない思いを持って戦った横浜創英は宮澤崇史監督が「10m、20mのパスをしっかり通すことをやっている」と説明する本来のサッカーを発揮できた訳ではないが、それでも昨年からの主力9人を残すチームはCB市原亮太主将(3年)が「(自分たちが試合に出してもらえていた一方で)一個上の先輩出れていなかった。この代で結果出さなきゃと話していた」と言う通りに結果を残した。

 11年全国総体優勝の桐蔭学園高や自力ある逗子開成高を破って勝ち上がってきた横浜創英の前評判も確かに高かった。だが、試合が始まると、市原が「(組み合わせが決まった時点から)桐光に勝てる練習をと言われてプレスをかわす練習をしてきた。ビビらずにやろうと思っていたんですけどプレスが速くて難しかった」と振り返ったように、経験したことがないような厳しいプレスに押し込まれてしまう。4分には右FKからタビナスにポスト直撃のヘディングシュートを打たれ、その後も連動したプレスからいい形でボールを奪う桐光学園の鋭い攻撃にPAを脅かされた。そして21分、自陣からポゼッションしようとした横浜創英は相手のプレスに完全にハメられると、DFがGKへ戻したバックパスの呼吸が合わずオウンゴールに。格上との戦いでリードを奪われる厳しい展開となってしまった。

 先制した桐光学園はスキル、読みのいいディフェンスでも違いを見せていた鳥海と田中がボールを前進させ、前半アディショナルタイムの41分にはカウンターから最前線まで走り切った右SB淡路昂宏(3年)の右足シュートがゴール左ポストをかすめる。守備でもほぼ隙のない戦いを見せ、横浜創英は劣勢を強いられていた。それでも横浜創英の宮澤監督は「関東大会予選で自分たちのスタイル貫き通して決定戦落とした経験が活きた。スタイル崩してでも勝ちを取りに行く。関東予選の反省を必ず活かしていかないといけないと思っていた」。関東大会予選準決勝(代表決定戦、対慶應義塾高戦)で自分たちのサッカーを貫いた結果、仕掛けのパスを何度も奪われて敗れている横浜創英は前半途中からリスクを回避しながらシンプルにボールを動かすことを選択する。本意ではなかったかもしれないが、勝つために続けた攻撃が実ったのは43分。PAでDFを背負ってボールを受けたFW木澤海智(2年)がPKを獲得する。これを市原が右足でゴール右隅へ流し込んで同点に追いついた。

 桐光学園は後半1分、MF佐藤太一(3年)の素晴らしい中央突破、スルーパスから鳥海が1タッチでゴールへ押しこんだが、オフサイドの判定。一方の横浜創英は前半から最前線で存在感を放っていたFW伊藤の危険度が増す。「監督から『オマエは体張って自分のフィジカル活かせ』と言われていた。来たボールをとにかく収めて、味方の上がりを待って、丁寧に使って、裏走って。自分、フィジカル強みとしているのでそれを活かしました」という伊藤はDFを背負いながらも泥臭くボールを収め、強引な仕掛けで最終ラインを突破するシーンも。後半3分にはDFを抜き去ってPAへ潜り込んだが、これはGK茂木秀(3年)がストップする。だが流れは横浜創英。9分には中央右寄りの位置から左SB福田崚太(3年)が蹴りこんだ右足FKがゴール前の混戦を抜けて左ポストを直撃する。そして12分には右サイドから攻めると、こぼれ球を拾ったMF稲積真樹(3年)がPAでファウルを受けて再びPKを獲得した。

 市原が右足で狙ったPKはGK茂木がビッグセーブ。絶好の勝ち越しチャンスを逃した横浜創英だったが、すぐに2点目を奪い取る。15分、相手のカウンター攻撃を阻止した福田が敵陣中央付近でFKを獲得。6分前のシーンと同じく、両校選手が密集するゴール方向へ向けて背番号3が右足を振りぬくと、今度は伊藤らが飛び込んだ先を抜けたボールがそのままゴール左隅へ吸い込まれた。「彼は頭がいいので、計算して蹴っていると思う」と宮澤監督も賞賛した福田の千金弾によって横浜創英が逆転に成功した。

 横浜創英は18分にMF住田智樹(3年)のスルーパスからMF中山陸(3年)が決定的な右足シュート。その後もスペースを突いてボールを収める伊藤を起点に、長い距離を走りぬいてくる右SB高橋祐飛(3年)らが絡んでシュートシーンをつくった。桐光学園もタビナスのポジションを上げて攻撃にパワーを加えるが、横浜創英はPAへのボールを跳ね返した市原と中山勇(3年)の両CB、1対1で強さを発揮した福田や高橋含めてDFラインが崩れない。桐光学園は36分に鳥海の突破からチャンスをつくるもシュートを枠に飛ばすことができず。攻め切れないまま80分間を終えた。

 試合終了の笛が鳴ると、横浜創英のグレーのユニフォームがピッチを走り回り、桐光学園の選手たちは膝をつき、芝の上に崩れ落ちた。市原は「全国大会はひとつの区切り。出場できて良かった」と語ったが、選手たちは自分たちのサッカーを展開できなかったことへの悔しさもにじみ出していた。宮澤監督は「創英スタイルでやりたかった。もうちょっとウチのサッカーを見せたかった。(ハイサイドを取って攻めるシーンもあったが)ゴール前に急いだところがある。まだまだです」。宮澤監督の母校でもある桐光学園を目指して準備し、最後まで走り抜き、勝ち切った。だが、全国で戦うためにはまだ足りないことを感じさせられた一戦。それだけに市原は「(全国までに)課題直してもっと創英らしくパスで崩していきたい」と誓っていた。

(取材・文 吉田太郎)
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