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[総体]Bブロック展望:関東一シードの山は、市立船橋、長崎総科大附など強豪ひしめく大混戦

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平成28年度全国高校総体
「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)


【Bブロック展望】
滝川二高高知商高長崎総合科学大附高瀬戸内高市立長野高矢板中央高近大和歌山高福井工大福井高鹿児島城西高刈谷高山形中央高市立船橋高秋田商高関東一高

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)。前年度優勝で第1シードの東福岡の入ったAブロックの勝者と準決勝で当たるのがこのBブロックの勝者だ。シードされたのは前年度の総体で初の全国4強入りを果たした関東一高(東京1)。当時の主軸メンバーからはMF冨山大輔、DF鈴木友也が新チームの攻守2枚看板として残留しており、持ち前のテクニカルなサッカーに磨きを掛けてきた。今季はあえてメンバーを固定せずに競争を促してきたことで選手層に厚みが出ており、スタッフを含めて酷暑の連戦を勝ち抜いた経験値があるのも強みとなる。

 関東一の鈴木は、市立船橋高(千葉2)に敗れた準決勝で出場停止だっただけに、今大会へ強い意気込みを持っているはずだが、早くもリベンジの機会が巡ってくる可能性がありそうだ。何しろ関東一の初戦となる2回戦の相手は、その市立船橋と秋田商高(秋田)の勝者だからだ。もちろん、32回目の出場となる伝統校の秋田商は簡単な相手ではない。攻守の柱となるMF駒野谷海人を中心に、県予選で大暴れとなったパンチ力のあるMF伊藤岳歩、多彩なスキルを持つ田近晴登らの個性を生かして前年度準優勝校に挑む。

 その市立船橋は千葉県予選決勝で流経大柏に敗れ、ノーシードで1回戦からの登場となった。とはいえ、夏の舞台を常に選手を鍛える場として位置づける朝岡隆蔵監督ならば、これをネガティブに解釈してはいないだろう。陣容の上でも、昨季のチームに遜色ないどころか上を行けるだけのベースは整った。プロ注目の鉄壁コンビ、杉岡大暉原輝綺の二枚が最終ラインを固め、中盤には豊富な運動量と的確なポジショニングが光る高宇洋と奪えるボランチ・金子大毅が並び、攻撃陣は驚異の頑張り大男・村上弘有、技術と機転で魅せる西羽拓、走ってかき回し役となる阿久津諒、そして先発でも途中出場でも強烈な“一発”を持つ野本幸太など個性派がそろった。昨年の準優勝を知るMF太田貴也もここに来て調子を上げてきた上に、地力のある1年生も加わって層も厚みを増した。共にU-17日本代表の杉山弾斗桧山悠也が切磋琢磨を続ける左サイドが象徴するようにチーム内競争の激しさがチームを高め、強豪ぞろいの高円宮杯プレミアリーグEASTを首位で折り返す原動力ともなった。ノーシードとはいえ、間違いなく本命校の一つだろう。

 この3チームの勝者と当たる隣の山には福井工大福井高(福井)、鹿児島城西高(鹿児島)、刈谷高(愛知1)、山形中央高(山形)の4校が入った。丸岡OBの若き指揮官・徳丸敬紘監督の下で着実に力を付けてきた福井工大福井は「レスターやアトレチコを参考にしている」という2トップを生かしたカウンタースタイル。多田稜雅堀江悠太らFW陣から“バーディ”になれる選手が出てくるかがポイントとなりそうだが、対する鹿児島城西には大会屈指のDFがいる。U-17日本代表の生駒仁はベテランの小久保悟監督が「育てたい」と惚れ込む逸材。左利きの司令塔・永吉広大、ドリブラーの福島有貴など個性派の選手がそろっており、勝ち上がっていけるだけの地力は十分ある。また伝統の赤ダスキを引っ提げ、5年ぶりに総体に戻って来た刈谷も注目。FW田中亮輔、MF水野智大ら小柄ながら技と俊敏さで勝負するタレントで大会に旋風を起こすことを狙う。対する山形中央はDF三宅晴希を軸にした堅守をベースに、まずは初戦突破を目指す。

 Bブロックの反対の山には地元で行われた前年度大会で8強入りを果たした滝川二高(兵庫)が入った。日本代表FW岡崎慎司を輩出したことで知られる名門だが、今年の注目は何と言っても昨季からレギュラーを張るMF持井響太。高度な技術とアジリティの高さを活かした切り込み役として欠かせぬ存在となる。この滝川二と当たるのは長崎総合科学大附高(長崎)と高知商高(高知)の勝者。かつて国見高で黄金時代を築いた小嶺忠敏監督が率いる長崎総科大附は収穫を狙うシーズンとなる。パワフルなU-17日本代表FW安藤瑞季と高機動の両ウイング、右田翔宇高魁人で形成される3トップは強力無比。中盤で彼らを操るMF薬真寺孝弥も大会屈指の実力派。守備で効きまくるMF前野翔伍などサボらぬ脇役が充実しているのも強みで、九州大会では東福岡を撃破。自信を持って全国制覇に挑むこととなる。対する高知商は県予選で2度のPK戦を制した粘り強さと勝負強さを見せたい。

 この隣の山も隠れた激戦ブロックだ。まずは1回戦注目の好カードとなった瀬戸内高(広島2)と市立長野高(長野)。地元広島を代表して戦う瀬戸内はシーズン前から評判高かった期待の世代が全国に挑むこととなる。エースFW安部裕葵を軸に、組み立て役のMF中間俊亘など要所に人材をそろえて躍進を狙う。対する市立長野は長野パルセイロU-18の選手たちがシーズン前に移籍加入してきて戦力に厚みが増した。15年U-16日本代表FW新井光、実力派のGK吉田泰地が加わったチームは、県予選決勝で都市大塩尻高に4-1で大勝するなど県内で圧倒的な強さを見せた。予選で大爆発した10番FW宮嵜優が引き続き好調ならば、大旋風もあるかもしれない。

 この勝者と当たるのが矢板中央高(栃木)と近大和歌山高(和歌山)の勝者。質実剛健で知られる矢板中央は今年もスタイル貫徹。攻撃はエースFW澤野祐輝の出来次第の部分もありそうだが、関東大会や県予選の戦いを通じて守備が安定してきたのは大きい。とりわけ大会屈指の左SB真下瑞都の存在感は図抜けたものがあり、あとは期待のDF松井蓮之が夏の戦いを通じてもうひと化けしてくれればというところだろう。対する近大和歌山は就任3年目を迎える藪真啓監督の下で4年ぶりとなる総体出場。独特な要素のある夏の全国を経験している選手は不在だが、県予選4試合中3試合を1-0で制し、決勝も0-0からのPK戦で制した粘り強さは特筆モノ。DF九鬼拓己を中心とする守備陣が相手のエース澤野を抑えられれば、予選の再現もありそうだ。

(取材・文 川端暁彦)
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