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[総体]昌平が王者・東福岡撃破!自信持ってスタイル貫いた初出場校が“衝撃”勝利!

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[7.28 全国高校総体2回戦 東福岡高 2-3 昌平高 広島広域公園第一球技場]

 王者・東福岡、初戦で姿消す――。広島県内で開催中の平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(男子)は28日、2回戦を行った。昨年度全国2冠で全国高校総体2連覇中の東福岡高(福岡)は今大会初戦で初出場校の昌平高(埼玉1)と対戦。2-2の後半アディショナルタイムに昌平MF針谷岳晃(3年)が左CKを直接決めて3-2で昌平が競り勝った。昌平は29日の3回戦で前橋商高(群馬)と戦う。

 全国に衝撃が走った。埼玉の新鋭、昌平が史上初の3連覇を目指した東福岡を撃破。2試合連続となるCK直接ゴールで「ジャイアントキリング」の主役となった針谷は、東福岡について「めっちゃ強かったです。パス回しが速くて。オーラが凄かったです」。だが、その司令塔が「自分たちオーラないんで。弱そうなんで。でも(東福岡は)やれない相手じゃないと思った。同じ高校生だし、それをちょっとずつやっていったことが良かった」と微笑んだように、今年のシーズン前から前評判も高かった昌平が「やれない相手ではない」と感じた王者から大きな1勝。そして針谷は「これから歴史作っていかないといけないんで、優勝目指して頑張ります」と力を込めた。

 立ち上がりはスロースタートだった昌平を東福岡がスピーディーなパスワークで振り回す。そして6分にMF高江麗央(3年)が左中間を縦に割って入ると、FW佐藤凌我(3年)のシュートを15年大会得点王の10番MF藤川虎太朗(3年)がコースを変えてゴールネットを揺らした。先制した東福岡はその後も右MF福田湧矢(2年)の突破やラストパスからチャンス。17分にも高江からのパスを受けた藤川が左足を振り抜いた。厳しいチェックで相手のパスワークを停滞させるなど、給水タイムまではほぼ東福岡のペース。細かいミスもあったが、「王者強し」を印象づけていた。
  
 だが「強気でウチの強さを出そう、チャレンジ精神で行こう」(藤島崇之監督)と王者に臨んだ昌平はここから自分たちが取り組んできたパスワークにロングボールやドリブルを織り交ぜて試合の流れを徐々に引き寄せていく。左の10番MF松本泰志(3年)と右MF山下勇希(2年)が内側に絞ってパスワークに絡み、ダブルボランチの一角である針谷が「相手はアンカー1人だったので、ボランチが上がっていけば(相手の2シャドーは)ついて来ないと思っていた」と高めのポジショニングで相手1ボランチの脇のスペースを活用。前を向いた針谷がラストパスやミドルシュートを打ち込む。そして20分には試合を通して守備面での健闘光ったMF新垣理生主将(3年)を起点とした攻撃から松本のスルーパスでFW本間椋(3年)が独走。シュートは東福岡GK前島正弥(3年)のビッグセーブに阻まれたものの、決定機も作り出した。

 東福岡も両翼を起点とした攻撃から日本高校選抜MF鍬先祐弥(3年)や高江がシュート。だが、昌平GK緑川光希(2年)の好守などに阻まれると、後半6分に1-1とされてしまう。昌平は山下の右クロスをMF佐藤大誠(3年)がダイビングヘッド。こぼれ球を拾った松本がライナー性のラストパスを入れると、本間が左足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。このあと、互いにチャンスを作り合う。東福岡は交代出場FW藤井一輝(3年)のヘディングシュートが左ポストを叩くなど、再びリードすることができない。一方で昌平・本間のスピードを警戒しすぎたか、東福岡はDFラインが深くなり、相手の仕掛けに対するチャレンジもどこか後ろに重い。そして空いたバイタルエリアを針谷や松本にドリブルで突かれるなど、危うさを抱いた展開になってしまった。迎えた後半24分、昌平はゴール正面、PAやや外側から針谷がスルーパス。「映像とかも見て(藤島)監督からも自分のスピードなら行けると言われたんで、自信もって行けました」という本間が鋭い反転でDFの前に潜り込み、PKを獲得した。これを松本が右足で正確に右隅へ。残り11分、ついに昌平が勝ち越した。

 このあと、東福岡はCB小野楓雅(3年)を前線へ上げてパワープレー。昌平は正確なフィードも見せていたCB石井優輝(2年)とCB関根浩平(1年)中心に跳ね返すと、左SB塩野碧斗(2年)と右SB篠山立(3年)の抜群のスプリント力も活かしたカウンターから3点目を伺う。それでも個々が局面勝負で上回り、また正確にサイドへボールを運んだ東福岡は31分、藤川の右FKを左SB小田逸稀(3年)が圧巻の打点からヘディングシュートを突き刺して2-2。王者の執念が同点ゴールを生んだ。互いに決勝点を目指してオープンな攻め合いとなった終盤戦。勝敗を決定づける1点は昌平の司令塔、針谷の右足をもたらした。後半アディショナルタイム、昌平は左CKを獲得すると、針谷が右足を振りぬく。「(両チームの選手が)ゴール前に固まるんで、そこに落とす感じで蹴っている」というCKはGKの頭上を越えてファーサイドのポストを叩き、ゴールラインの内側へ。針谷の2試合連続となるCK弾が決勝点となった。
 
 敗れた東福岡はエース藤川が顔を覆ったままピッチに倒れこみ、CB児玉慎太郎主将(3年)や鍬先が座り込む。森重潤也監督は「弱いとしか言えない」と厳しく指摘。昨年の優勝メンバーたちを残しているが、相手を分析してしっかりと封じるべきところで封じきれなかったり、攻撃面含めて昨年からの成長を示すことができなかった。苦しみながらも勝ち抜いた昨年の再現をすることができず。「それが今のウチの力なんじゃないかな」(森重監督)。2年連続で最も長く夏を戦った赤いユニフォームは大会2日目に姿を消した。

 一方、昌平は2年前に選手権初出場を果たし、今回はそれ以来の全国。藤島監督は「2年前に選手権に出してもらった時、0-1で敗退だった。あの時は浮足立っていた。だから今回はチャレンジャー精神で『やれるから、やろう』ということだった」。自分たちのサッカーに自信を持ち、それを貫いた結果、手にした王者からの白星。まだ「自分たちはオーラがない」という昌平だが、目標の全国制覇、そして名門への階段を登る上で大きな関門を突破した。

(写真協力=高校サッカー年鑑)

(取材・文 吉田太郎)
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