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[MOM2887]尚志FW染野唯月(3年)_11本目のシュートで決勝点…苦闘も最後は「半端ない」FWが主役に

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優勝を決めて笑顔の尚志高FW染野唯月

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.2 インターハイ福島県予選決勝 尚志高 2-1(延長)学法石川高 Jヴィレッジスタジアム]

 この日11本目のシュートで仕留めた。尚志高の仲村浩二監督は延長戦の末果たした福島10連覇に苦笑。決勝点を決めたU-18日本代表FW染野唯月(3年)については「これじゃあ、プロで活躍できないと言っているんです」とボヤいていたが、それでも「決めるんですよね」。1月の選手権で優勝校の青森山田高相手にハットトリックを達成するなど得点王(他2人)に輝き、今年のプレミアリーグEAST開幕戦(対柏U-18)で圧巻の3発を決めているストライカーが一撃で「全て持っていった」。

 試合開始直後の右足FKに始まり、得意の切り返しのからの一撃や強引にDF間へ潜り込んでポスト直撃の左足シュートを放つなど、相手の脅威であり続けた。警戒されている中でも個で守備網を切り裂いてPAまで持ち込み、ポストプレーで何度も味方のチャンスを演出。憧れの日本代表FW大迫勇也(ブレーメン)同様に「半端ない」と言われるストライカーは、一段階違う力、何かを起こしそうな雰囲気をこの日も表現していた。

 味方が彼に頼ってしまう部分も多く、前線で競り合う回数が増加。マークした学法石川CB大津平嗣(2年)も健闘していたものの、脅威的な跳躍力を持つ背番号9は相手に自由なクリアをさせず、半数以上は競り勝っていた印象だ。

 ただし、相手の執拗なマークと、思うようにラストパスが入って来ない、こじ開けようとしても決まらない展開の中で気持ちが少しずつ下向きに。その姿からは苛立ちの色が見えていた。仲村監督は影響力の大きな選手だからこそ、より堂々とした立ち振舞いや気持ちの強さを求める。

 それでも、したたかにゴールを狙い続け、最後の最後に決めてしまうところはさすが。延長後半8分、「来るかなと思って走ったら本当に来た」とDFを出し抜く形で入れ替わり、MF菅野稜斗(2年)の浮き球パスを頭でゴールにねじ込んだ。シュート後にGKと接触し、勢い余ってゴールラインの内側にまで入るような執念の一撃。この日は接触プレーで腹部を強打し、決勝点のシーンで左足も負傷した染野の身体はボロボロだったが、それでも自分のやるべき仕事はやり切ってピッチを後にした。

「決めるところをポストに当ててしまったり、決めなきゃいけない場面だったんですけれども、そこで決めてチームを楽にして上げられなかったのは自分の責任ですし、ゲームキャプテンとしてチームを冷静にさせてあげられなかったのも自分の責任だと思っている。その中で自分が点を決めて勝たせるということをできたことは良かった」。

 そして、「CBの(中川路)功多とかが『仲間を信じろ』と言ってくれて、それを信じられて、あのクロスも信じて飛び込むことができた。(決めた瞬間は)素直に嬉しいという気持ちがあった。みんなと勝ちを喜べたのは、自分にとっても、チームにとっても良かった」と仲間の力も借りて決めた決勝点に笑顔。この日11本目のシュートは鹿島、浦和、FC東京と練習参加してプロのFWから学んだゴールへの執念を表現する一撃でもあった。

 インターハイで全国制覇に再チャレンジ。常に注目される中でのプレーになることは間違いない。「プレッシャーをいいように変えて、(公式戦は)『自分ができるんだ』と証明できる場なので、それをやっぱり全国でもやっていければいい。(そして、)勝ち続けることができるチームを作っていかないといけないので、強い尚志をまた見せられたらいい」。プロで活躍するための“鋼のメンタル”も身につけて全国へ、真の「半端ない選手」へ。世代を代表するゴールハンターは、どんな苦境にも折れずにゴールを目指し続けて目標を実現する。

延長後半8分、尚志高FW染野唯月が決勝ヘッド


(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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