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13年ぶり全国大会出場の歓喜!徹底して個の技術磨く五條が王者・一条を4-0撃破!:奈良

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13年ぶりの優勝を喜ぶ五條高イレブン

[6.2 インターハイ奈良県予選決勝 一条高 0-4 五條高 奈良県フットボールセンター]

 6月2日、奈良県フットボールセンターで令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)奈良県予選の決勝が行われた。決勝戦まで無失点で駒を進めてきた一条高五條高が4-0で下し、13年ぶりの歓喜に沸いた。

 序盤から優位に立ったのは、五條だった。3連覇中の一条がボールを持てば、臆することなく素早く寄せてボールを回収すると、裏を狙ったパスやドリブルで相手陣内に入り込む。22分、MF瀬羅威吹が蹴ったCKからのこぼれ球をキャプテン・MF池田達哉が押し込んで先制点を挙げた。

 後半の立ち上がりは一条も前半に比べて距離感も縮まりボールを回せるようになったものの、五條は辛抱強くボールの奪いどころを狙い、10分ほどで再び自分たちのゲームに戻した。その証として後半13分にFW井澤悠がドリブルで中に入ってきて追加点を奪うと、さらに五條の勢いは増し、再三ゴール前に迫ってはチャンスを作っていく。

 28分には瀬羅からのボールを受けて再び井澤がゴールに流し込み、3点目。続く30分には、ドリブルで上がってきたFW中山幹太がディフェンダーをかわして右足を振り抜き、4点目。13年ぶりとは思えない圧巻の4ゴール無失点のスコアで、見事に優勝を掴み取った。

 これまで五條のサッカー部を指導してきた中で、最も「自信があった」という吉岡一也監督。これまでは秋の高校サッカー選手権大会の奈良県予選に向けてチームづくりをし、インターハイ予選は「チームづくりの通過点でしかなかった」というが、「今年は1人1人の能力も高かったので、『夏にも全国大会を目指そう』と選手たちに話し、目標の1つにしていた」。

 放課後の練習では、多くて3時間とれる練習時間のうち、概ね2時間はドリブルに関するトレーニングに費やす。「試合になれば当然ドリブルだけで勝てるわけではないが、個人の技術で打開することができれば、選手たちのゲーム内での選択肢も増える」からだ。実際、攻撃的なポジションの選手たちは、相手が寄せてきてもパスで回避するだけはなく、自分の力で振り切ってみようという姿勢も多く見せた。

 吉岡監督は、「たとえそれがミスに繋がっても、トライしようとする選手たちの考えや気持ちはとても大切だと思って日頃から指導している」という。試合になれば大きな声で指示を出すことはあっても、「練習試合ではほとんど何も言わず、選手たちがどう試みようとしているかを見守るだけ。おかげでこの決勝戦も含めて、選手たちが楽しそうにサッカーしているね、と声をかけてもらうことは少なくない」と話し、その表情からは、選手たちの伸び伸びとしたプレーを誇らしく感じていることを伺わせた。

 キャプテンの池田もまた、自分たちのチームの魅力の1つを「楽しくサッカーができるところ」と挙げている。五條は、前線の選手も含めて守備をするため上下動は激しく、チーム全体で豊富な運動量を要する。それでも池田は、「今日のように、試合中に苦しい時間やチーム内でお互いに厳しいことを言い合うことがあっても、これまでの楽しい会話や時間があるからこそ、足が止まりそうなときでも走りきることができる」と語った。

 今大会では「失点しないことが1つの課題だった」というが、この試合を無失点で終えることができたことで、自信に繋げることもできた。「みんな仲が良くて、毎日楽しくサッカーができている。このチームで全国大会に臨めることが、本当にうれしい」と話した池田は、「全国大会になれば上手い選手や強いチームばかりだとは思うけれど、五條の選手たちも能力は高いと感じている。チームとして、自分たち1人1人のプレーをしっかり見せてきたい」と意気込んだ。

 13年ぶりの全国の舞台でも、この決勝戦で見せたような選手1人1人の技術とチーム全体のハードワークをもって、“奈良に五條あり”を示したい。

(取材・文 前田カオリ)
●【特設】高校総体2019

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