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抜群のリーダーシップ誇る主将に率いられメンタル面充実。“東北のドリブル軍団”聖和学園が仙台三下し、8年ぶりV:宮城

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“東北のドリブル軍団”聖和学園高が8年ぶりに夏の全国へ

[6.3 インターハイ宮城県予選決勝 聖和学園高 2-0 仙台三高 ひとめぼれスタジアム宮城]

 令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)宮城県予選決勝が2日、ひとめぼれスタジアム宮城で行われ、聖和学園高と仙台三高が対戦。前半は仙台三の激しい守りとカウンターに苦しんだ聖和学園だったが、後半は右サイドを起点に決定機を量産し、MF局田真伸(3年)の2ゴールで2-0で勝利し、8年ぶり3回目の全国大会出場を決めた。

 聖和学園は2回戦で東北高、準々決勝で仙台城南高、準決勝で仙台育英高と対戦するという死の山を勝ち上がってきた。東北戦や仙台育英戦は、ここぞの決定機でエースMF古賀楓真(3年)がゴールを決め、存在感を見せつけた。

 一方の仙台三は宮城県内屈指の進学校。昨年4月、国体宮城県少年男子監督も務めた村岡正良元監督が県庁勤務となり退任し、1年間高体連サッカー専門部所属の教員がいない状況に陥った(今年4月からは多賀城高前監督の角田善繁監督が就任)が、この苦境を救ったのが、村岡監督時代のエースで、現在宮城教育大4年の増田和也コーチ。学業、バイト、教員採用試験勉強の合間を縫って、昨年からは実質的な監督として戦術・技術指導に当たり、3-4-3システムに布陣を変えると、昨年の選手権県予選はベスト4進出。今大会は準決勝で県新人大会優勝校・東北学院高にPK戦の末勝利しての決勝進出と、急激な躍進を遂げている。

 前半は仙台三の球際に強く行く守備がハマり、そこからカウンターを仕掛けて何度か決定機をつくった。「リーグ戦で選手たちもこういうふうにやれば良いとつかめていて、僕自身も分析して道筋を持って戦えていました。ハードワークもしてくれて良かったです」と増田コーチも手応えを語っていた。

 しかし、0-0で前半を終えると、ハーフタイムで聖和学園・加見成司監督が「前半から右サイドが空いていたので、なぜそこを狙わないんだと指示しました」と攻撃を修正。後半に入ると右サイドハーフ・局田がDFラインからのダイアゴナルパスを受け、何度も仙台三ゴール前に迫り決定機をつくり出していく。

 そして後半18分、古賀とMF梅田隆之介(3年)が左サイドでパス交換。「マークがついていたのでシュートはできませんでしたが、(局田が)中に走り込んでいるのが見えた」と古賀が右サイドにパスを出す。そこへ飛び込んで来た局田が「良いボールが来て、あとは流し込むだけでした」と左足でシュートを決めて聖和学園が先制に成功した。

 これで勢いに乗った聖和学園は後半28分、途中出場FW伊勢本貴翔(3年)からパスを受けた局田が「ボールを受ける前からワンタッチでファーに打つと決めていました」と左足シュート。狙いすました一撃がゴール左上ポストに当たってゴールに吸い込まれ、試合を決定づけた。2-0で勝利した聖和学園が久々のインターハイ出場を決めた。

 一昨年、昨年と全国大会から遠ざかっていた聖和学園。それでも加見監督は「自分たちのベースは崩さない」とドリブル、個人技を軸に戦うスタイルは崩さなかった。その中でも「パスが好きな子やスピードが好きな子もいるので、そうした子の良さが出るようコミュニケーションを取って引き出してあげています」と選手の個性を活かし、今年は局田のようなスピードやパワーのある選手を効果的に使って勝ち上がった。

 今年のチームは古賀やGK高山梓(3年)などタレント豊富だが、着目すべきは強いメンタリティだ。その中心にいるのがキャプテンDF金子力丸(3年)。エスポルチ藤沢時代からキャプテンを務め、1年生の頃から学年を仕切るリーダーとして、時には仲間へ厳しい要求も辞さず、圧倒的なキャプテンシーでチームをまとめ、「大人と会話ができ、言うだけのことはやる」と加見監督からも絶大な信頼を寄せられている。

 金子は「県の1番に立つならば強いチームは全部倒したかったので、やりがいもありました」と厳しい組み分けになったことをプラスに捉え、自身も2回戦の東北戦で試合終了間際に古賀の決勝ゴールをアシストするなど、プレーでもチームに貢献。金子を中心にチームは鉄の結束を最後まで崩さなかった。「自分たちの目標は全国優勝なので、その権利を得られて良かったです」と今度はインターハイ優勝という大目標を現実に変えるべくチームを牽引する。

 一方の仙台三は大健闘を見せたが、後半左サイドの守備の綻びを突かれてしまった。増田コーチは「相手のドリブルの質が高くて、相手の攻撃のギアが上がって最後は苦しくなりました」と振り返った。それでも「土日試合を見る度に刺激をもらっていて、選手たちは本気で全国を目指してやっていました。僕自身もどういう指導者になるべきか勉強できた期間でした」と奮闘を見せた選手たちを讃え、7月以降に行われる教員採用試験に合格し、教員という夢を達成した後のことも見据えていた。若き学生コーチと共に歩んだ選手たちは、大舞台で悔し涙を見せ、選手権でのリベンジを心に誓った。
   
(取材・文 小林健志)
●【特設】高校総体2019

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