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組織と“すっぽんディフェンス”で新人戦王者の攻撃封鎖!新鋭・創成館が悲願の全国、“下剋上”達成まであと1勝!

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後半6分、FW田中瑛修主将(8番)の先制点を喜ぶ創成館高

[6.6 インターハイ長崎県予選準決勝 鎮西学院高 0-2 創成館高長崎県立総合運動公園補助競技場]

 新鋭・創成館が初の全国へ王手――。令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)長崎県予選準決勝が6日に行われ、県新人戦優勝の鎮西学院高とプリンスリーグ九州に所属する創成館高が激突。創成館が2-0で勝ち、2年連続の決勝進出を果たした。

 今年からプリンスリーグ九州に参戦している新鋭・創成館が、鎮西学院の特長を消して快勝した。注目のMF柴原隆真(3年)をはじめ、キープ力のある選手が並ぶ鎮西学院はくさびのボールを入れてから次々とドリブル、コンビネーションでの崩しを狙おうとする。

 だが、創成館は元長崎DFの久留貴昭監督が、「相手の良さを消す。ドリブルのところにプレッシャーをかけるところを、あの子たちは本当によくやってくれた。組織のやり方はOK」と選手たちを賞賛する内容。DFリーダーの櫻田颯人(3年)を中心にいずれも対人に強い後藤翔(3年)、江崎智哉(2年)の両ストッパーによる3バック、10番MF石橋弓斗(3年)とMF新川翔太(2年)のダブルボランチの距離感と寄せの速さが良く、相手を素早く囲みこんで効果的な攻撃をさせなかった。

 久留監督が「(絶対に食らいつけという意味で)すっぽんの絵も見せました」という創成館は、相手MF柴原やMF福田壮汰(2年)らのドリブルに必死に食らいつく“すっぽんディフェンス”。今年、プリンスリーグで鍛えられている創成館は、ゴール前で存在感のあったGK橋口欧介(3年)含めて隙のない守りで試合の主導権を握った。

 鎮西学院は、CB松田大誠(3年)が素晴らしいスプリントからカウンターを狙うシーンなどもあったが、相手の好守の前に、この日はややロングボールが増えてしまう展開。逆にボールを握る時間を増やした創成館は、3バックや左右両足から好キックを見せていた新川から3トップにボールを入れる。そして、サイドからのラストパスで決定的なチャンスを作り出した。

 その創成館が前半27分に先制点を奪う。櫻田の右CKからゴール前に流れたボールをFW田中瑛修主将(3年)がGKよりも一瞬速くつつく。そして混戦から、最後は田中が右足でゴールに押し込んで1-0とした。田中らイレブンは応援席から飛び出してきた控え部員や同級生たちと歓喜を爆発。準々決勝で選手権出場校・長崎総科大附高を1-0で破って勝ち上がってきた鎮西学院から先手を取った。

 一方、鎮西学院は前半終了間際にMF松永昇磨(3年)が決定的なヘッドを放ったほか、後半から投入されたMF野口晴虹(3年)の左足シュートなどで反撃。だが、好調なFW島澤翼斗(3年)の抜け出しや186cmの大型FW平川尚樹(3年)のポストワークからチャンスを作っていた創成館が2点目を奪う。後半8分、タイミング良くPAへ抜け出した田中がPKを獲得。これを田中が自ら右足で決めてリードを広げた。

 鎮西学院は相手の守りを揺さぶって打開しようとする。だが、櫻田が「(Jクラブユース勢や強豪校と戦う)プリンスリーグでは自分たちがリードしていても、自分たちで慌てて自分たちのミスで失点したりした。自分たちが勝っている状況でも最後まで気を引き締めて、失点しないということをプリンスリーグでやってきた」という創成館は後半もほとんど隙を見せない。

 そして3点目を狙う創成館は、28分に左ロングスローのこぼれを繋いで石橋が右足ミドル。これは微妙な判定でオフサイドで得点とはならなかったが、その後も相手をPAに近づけなかった創成館が、2年連続での決勝進出を決めた。

 近年、継続して長崎の優勝争いに加わっている創成館の今年のテーマは“下剋上”だ。昨年のように前評判が高い世代でも惜しくも全国に届かなかった経験、また今年のチームは県新人戦準々決勝で敗退した経験から、よりチャレンジャー精神を強めて今年に臨んでいる。

 田中は「自分たちはまだ県を一回も獲ったことがないので、チャレンジャー精神を常に持って、“下剋上”と言っているんですけれども、『下剋上をみんなで起こしてやろう』と、そういう気持ちでやっています」。全国切符を勝ち取るまでは油断せずに挑戦者として臨むだけ。昨年、全国への道を断たれた長崎日大高とのリベンジマッチとなる決勝は、累積警告のために大黒柱の田中が不在となる。だが、そのピンチを全員で乗り越えて、新たな歴史を刻む。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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