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C大阪内定の桐光学園FW西川潤主将、「有言実行」の日本一

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優勝カップを手に笑顔の桐光学園高FW西川潤主将。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.1 総体決勝 富山一高 0-1 桐光学園高 金武町フットボールセンター]
 
 「有言実行」の日本一だった。桐光学園高のFW西川潤主将(3年)は高校日本一を勝ち取ったことについて、「歴代の(桐光学園の)人は準優勝に終わっている。優勝ということで、桐光の歴史を塗り替えることができたので、嬉しかったですね」とコメント。自らが前線で潰れ役になる形から生まれたゴールを見届けて直後に優勝が決まると「去年の借りを返したという思いで」左手でガッツポーズし、静かに喜びを噛み締めていた。

 西川は、大会開幕一週間前の練習後に「自分がいる間に優勝できれば良いと思います」と語っていた。名門・桐光学園はMF中村俊輔(現横浜FC)を擁した96年度選手権で準優勝。そして昨年のインターハイも準優勝に終わっている。中村やMF藤本淳吾(現京都)、FW小川航基(現水戸)ら偉大なOBたちでも実現できなかった日本一を彼は「自分がいる間に」勝ち取った。

 昨年のインターハイでは“伝説的な”5人抜きのスーパーゴールにハットトリック。その後AFC U-16選手権MVPやJ1デビュー、U-20ワールドカップへの“飛び級出場”と同世代の高校生ではできないようなことを次々と経験してきた。今年も“得意”の夏に活躍するつもりだったが、重圧が無かった訳ではない。

「考えないようにやろうと思いながら」ピッチに立った西川。だが、昨年以上に厳しいマークの中でゴールを決めることは容易ではなかった。特に相手はドリブルをさせまいとスピードに乗る前にファウル覚悟のタックル。西川自身も「なかなか決められないな」という思いがあったという。

 それでも彼は、「マークが来るのでドリブルで仕掛けてシュートまで行くことも大事ですけれども、クロスやこぼれから獲るパターンも増やしていかなければならない」とゴール前でしたたかに得点することを目指し、準々決勝、準決勝で計3ゴール。決勝でも折り返しを狙ったり、クロスからのヘディングシュートでゴールに迫った。

 そして、40mの超ロングシュートを撃ち込んだり、得意のドリブルで相手DFを剥がして一気に前進したりするシーンも。力を温存しながらここぞのところでそのパワーを発揮していたレフティーは、より点取り屋としての怖さが増した印象だ。

 昨年の決勝は後半アディショナルタイムに自らのシュートがGKに止められ、そこからのカウンターで失点。延長戦の末に敗れている。その悔しさを1年間持ち続けてきた。今大会開幕後、勝ち上がるたびに「どんどん気持ちが高ぶってきたり、去年敗退した思いがまた蘇ってきたりしました」。そして強い思いを持って臨んだ決勝で昨年の借りを返し、日本一に立った。

 C大阪やU-20日本代表合流のためにチームを留守にする期間の長かった西川とチームメートのコンビネーションは、まだまだ向上の余地がある。鈴木勝大監督も「彼に関しては、半分しか力を出していないと思っています。彼の力を引き出すボクの責任でもあるし、彼の立ち振る舞いもそうですし、何としても冬にあの子の良さを出せるようにもっと練習してコンビネーションを上げたい」と語っていた。

 インターハイの借りを返して全国制覇を成し遂げた西川には、もう一つ借りを返したい大会がある。昨年度は選手権1回戦で大津高に0-5で完敗。「インターハイの借りは返しましたけれども、選手権初戦で敗退した借りはまだ返してないですし、全員で切り替えて選手権に向けてまた頑張っていけたらと思っています」。高校サッカー界を代表するスーパーエースは、夏冬連続日本一という快挙も実現させて、高校生活を終える。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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