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[MOM3464]神村学園MF大迫塁(2年)_延長V弾!「マジで」重ねたシュート練習、松木の助言…点獲る力覚醒へ

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延長後半5分、神村学園高MF大迫塁が決勝点

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.29 インターハイ鹿児島県予選決勝 神村学園高 2-1(延長)鹿児島城西高 OSAKO YUYA stadium]

 積み重ねてきたシュート練習の成果を発揮し、チームを救った。延長後半5分、神村学園高のU-17日本代表候補MF大迫塁(2年)は、左のMF畠中健心(3年)からパスを受けると、ドリブルで持ち出してから左足一閃。ややアウトにかける形で放ったミドル弾に対してGKは反応することができず、ボールはゴール左隅へ突き刺さった。

 左手を突き上げて走り出した背番号14は、ゴール裏スタンドで歓喜するチームメートの下へ駆け寄ると、祝福される中で吼えるなど感情を爆発させていた。「チームに迷惑をかけていた。点を獲ってチームを勝たせたいという気持ちはずっとあったので今日、それが実って良かったです」。今大会は初戦で2得点を奪った後、無得点。この試合前には有村圭一郎監督からアドバイスを受けていた。

「試合前に有村先生から『もっとわがままにやっていい』と言われていて、シュート、シュートという意識を持っていました」。ミドルレンジから積極的に足を振るなど、シュートへの意欲は強かったが、その一方、より良い形で打とうとしたことでDFに準備する時間を与えてしまい、ブロックされていた。

 だが、延長戦突入前に有村監督から1人呼ばれ、相手が準備する前に打つことを確認。決勝点のシーンも「早めに打つことを意識して打って、入ったので良かった」。DFが寄せて来る前に打ち切り、決めたことはフィニッシャーとしても覚醒中の彼の進化を加速させそうだ。

 大迫はU-17日本代表の中心選手。ボランチの位置で2つ、3つ先を読んでゲームメークする力は誰もが認めるところだ。スーパールーキーとして注目を浴びて神村学園中から神村学園高へ進学。1年時からエースナンバー「14」を背負い、主にトップ下を務めたが、満足の行くような結果を残すことができなかった。

 ベスト16で終わった選手権後、大迫は1歳上で目標とする選手の一人であるMF松木玖生(青森山田高、U-20日本代表候補)に相談。「玖生君自身も選手権でそこまで(活躍できなかった)という気持ちだったと思うし、僕もその気持ちはずっとあったので。これから自分がどうすべきなのかと感じて、大会が終わってからちょっと相談をしました。どこのポジションをやるべきなのかとか」。ボランチで自在にゲームメークできることは実証済み。そのため、自分はボランチに専念してチームのバランスを取ること、攻撃を組み立てることでチームに貢献した方が良いかもしれないという考えが頭の中にあった。

 だが、松木の考えに触れ、意識が変わる。「玖生君が今、意識しているのは得点。それを選手権が終わった瞬間から考えていたので、凄いなと思いました。自分はその時、(トップ下でプレーする)自信をなくしていて、ボランチでチームのためにというのを考えていたけれど、彼は個人で結果を残して昇格をして行くことを話していました」。大迫は有村監督に「トップ下で勝負したい」と直訴し、U-18日本代表候補FW福田師王(2年)と「マジで練習していました」というほどシュートを打ち込んできた。

 その成果が出て「コースに行くようになりました。FKも狙ったところへ行くようになりましたし」。今大会は初戦後にゴールから遠ざかっていたが、それ以前はプリンスリーグ九州や練習試合を含めて10試合ほど連続ゴールを決めていたという。そして、この日はその感覚を取り戻すような一撃。一緒に練習してきた福田は「威力が強くなったり、キックが上手いのでコースが良いところに行く。(決勝点は)『練習したかいがあったな』と見ていて思いました」と微笑んでいた。

 有村監督も「決め切る力はあるので。よく決めてくれましたね。自分がもっとレベルアップをしていかないと、代表や色んなところで活躍できない。点を獲ったり、点を獲らせることがまだ不十分だというのは分かっているので、そこにトライしてくれていると思います」。大迫が助言を受けた松木は今年、宣言通りにプレミアリーグEASTでゴールを重ねて得点ランキング首位。U-20日本代表候補に選ばれた松木について、「本当に凄いっす」と語る大迫だが、その背中から離されないように自分も努力と活躍を続けていくつもりだ。

「こういう大一番というか、決勝の舞台でゴールを取れたのは自信になるし、全国に向けても良い弾みになったのかなと思います」。この日は献身的な守備や味方を動かす声も。インターハイで青森山田との対戦を希望する大迫は、チームの中でやるべきことを最大限表現しながら、ゴールにこだわり、神村学園や年代別日本代表を勝たせる。


(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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