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ヴェルディ育ちのナンバー7。大成MF中村浩太が漂わせるブレイクへの予感

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大成高の攻撃を牽引するMF中村浩太

[5.30 インターハイ東京都予選二次トーナメント2回戦 大成高 0-0 PK4-2 関東一高]

 飄々とした雰囲気から繰り出すプレーは、そのどれもがハイレベル。間合いを見誤ると、瞬時に急所を突かれ、対峙した相手は無力化されてしまう。「今日の試合はそこまで自分の特徴が出せなかったので、もっともっとできると思いますし、東京都を代表できるような選手になりたいです」。見据える目線は、さらに上へと向かう。大成高に現れたニュースター。MF中村浩太(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)の可能性、無限大。

 ひとたびボールを持つと、何かを起こしそうな雰囲気が漂う。「ボールの置き場所から、持っているものは凄くあると思います」とは大成を率いる豊島裕介監督。左サイドハーフの位置で、周囲を見渡しながら、的確なプレーを選び取っていく。

 それでいて、“消える時間帯”もほとんどない。圧巻は後半のアディショナルタイム。左サイドでFW原輝斗(3年)のパスに走った中村は、そのまま縦にスプリントしながら完璧な左足クロスを中央へグサリ。FW田中ハーディー啓秀(3年)のヘディングはわずかに枠を外れたが、一番苦しい時間帯に繰り出した決定的な仕事は、実に秀逸だった。

 迎えたPK戦でも1人目のキッカーとして登場。右利きのキッカーとしては、ある意味で外す可能性も高いと言われる右スミのギリギリを狙い、きっちり成功。「自信を持って蹴りましたし、外す気はしなかったです」と言い切る強心臓ぶりを披露し、チームに勢いを付け、準々決勝進出に貢献してみせた。

 中学時代は名門の東京ヴェルディジュニアユースに在籍していたが、2年時に選手権予選決勝の会場となった駒沢陸上競技場で見た大成のサッカーが、不思議と印象に強く残る。「そのイメージが頭の中にあって、高校進学を考えた時に『練習会に行ってみよう』と思って、実際に練習会に行って、自分は大成1本だったので、すぐに決めました」。

 練習会から既に感じていた雰囲気も、このチームの大好きなポイントだ。「ふざけているとかじゃないんですけど、良い盛り上がりみたいな感じで、最高です。先輩たちも本当に優しいです」。自分の力をのびのびと発揮できる最高の環境の中で、着実に日々成長を遂げている。

 同年代に気になっている選手がいるという。「自分はライバル視とかはあまりしないですけど、帝京長岡の廣井(蘭人)選手は自分とプレーが少し似ていると思うので、凄いなと思います。同い年ですし、負けてられないなという想いはありますね」。年代別代表にも選出されている世代屈指のレフティを意識しつつ、さらなるステップアップを狙う野心も頼もしい。

「インターハイももちろん獲って、選手権も獲って、上の学年の中に入っていっても、通用するような選手になっていきたいと思っています」。大成のナンバー7。まだまだ底を見せていない中村がブレイクする瞬間は、おそらくもうすぐそこまで迫っている。

(取材・文 土屋雅史)
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