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[MOM3484]高岡一DF渡辺赳仁(3年)_優勝を手繰り寄せた今季公式戦初ゴール。途中出場のウイングバックが大仕事

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高岡一高を決勝弾で全国に導いたDF渡辺赳仁(2番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.6 インターハイ富山県決勝 高岡一高 2-1(延長) 水橋高 高岡スポーツコア]

 あえてシュートではなかったと“自己申告”するあたりに、実直な性格が滲み出る。ただ、その一撃がチームを全国へ導いたことに変わりはない。「シュートというより、クロスを狙って蹴った感じでしたけど、『もう行ってくれ!誰も触るな!』みたいな感じで、ゴールに入ったので嬉しかったです」。途中出場で決勝点の大仕事。高岡一高のDF渡辺赳仁(3年=FCひがしJY出身)は持っている男だった。

 水橋高と対峙した決勝。後半15分。攻め続けているのに、なかなか点が入らない1点ビハインドの状況で、アップエリアにいた渡辺に声が掛かる。「もうどんな形でもいいので、味方に点を獲ってもらって勝とうと思っていました」。強い覚悟を携えて、ピッチに走り出す。

 21分には鋭いクロスを左サイドから送り込み、MF麻生輝斗(3年)のシュートに繋げると、後半終了間際の33分にも完璧なクロスをニアへグサリ。飛び込んだFW高畑裕輝(3年)のダイビングヘッドは枠を外れたが、その左足には確かな感触を掴んでいた。

 そして迎えた延長前半7分。右サイドで得たスローインのシーン。そこまで再三ロングスローを投げていたDF高田峻輔(3年)がボールを持ち、ゴール前に両チームの選手が集まる中、高田は中央ではなく、近くにポジションを取っていた渡辺に素早く付ける。

 少し陣形の崩れたエリア内を見ながら、得意の左足を強振すると、「自分のキックミスで、変な回転でゴールの方に行った感じですけど、軌道は綺麗にまっすぐ見えました」というボールは、最高のコースを辿って左スミのゴールネットへ到達する。

「最初は何があったのかわからなかったんですけど、ちょっと経ってから『ああ、自分が決めたんだ』って嬉しかったですね」。すぐには状況を理解できなかったが、笑顔で駆け寄ってくる仲間を見て、自分の成し遂げた仕事の大きさに実感がこみ上げてくる。

「今大会も、今シーズンも初ゴールですし、トップチームでは初ゴールです。持ってるなと思いました」と笑った渡辺のゴールが、そのまま決勝点に。途中出場の2番が、高岡一を16年以来の全国大会へ鮮やかに導いてみせた。

 現在の立ち位置は、試合の流れを変えるスーパーサブ的なもの。準々決勝の富山一高戦では延長後半から出場機会を得ると、緊迫のPK戦でも2人目のキッカーとして、「自信はあります」というPKを見事に成功。今大会は自分に与えられた役割をきっちりこなしてきたという自信も、少しずつ渡辺のプレーを進化させている。

「左足のキックでチャンスメイクをするのが特徴です」と自ら言い切るように、その左足は目を惹くキック精度を有している。もともとはフォワードをやることもあったが、「自分はスピードがないので、ウイングバックの方が合っていました」とのこと。サイドから視野の広さとキックを生かして、チャンスを作ることに喜びを見出している。

 参考にしている選手は、国内最高峰のレフティとして知られる横浜FCの中村俊輔。「じゃあ、高岡一の中村俊輔を目指しているの?」と話を振ると、「いえ、それはさすがに怒られます」と即答するあたりに、マジメさが透けて見える。

 ただ、全国での目標を尋ねると、強気で彩られた言葉が口を衝く。「とりあえず一戦一戦を大切に戦いたいですし、歴史を自分たちの代で変えたいなと。歴史をどんどん作っていきたいです。最後の試合まで行きたいですね」。

 謙虚さと大胆さが同居する男。高岡一が苦しい時には、いつも渡辺の左足が猛威を振るう。

(取材・文 土屋雅史)
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