beacon

カナリア軍団の復権間近。帝京は終盤の2ゴールで大成を振り切り、10大会ぶりの全国へ王手!

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半ATにダメ押しゴールを決めた帝京高のFW伊藤聡太(右端10番)

[6.12 インターハイ東京都予選準々決勝 帝京高 2-0 大成高]

 難しい初戦を勝ち切った選手たちに向けて、日比威監督は労いの視線を向ける。「『もちろん厳しいこともあるけど、楽しく入っていけよ』と。『自分たちのリズムで、練習試合の気持ちでいい。ただ、頭は冷静に、心は熱く持ってやりなさい』ということを言ったら、一生懸命アイツらなりに頑張って、良くやってくれたなと思います」。12日、インターハイ東京都予選二次トーナメント準々決勝、帝京高大成高が激突したゲームは、試合終盤に2ゴールを決め切った帝京が2-0で勝利を収め、2010年以来となる10大会ぶりの全国出場へ王手を懸けている。

 前回大会に当たる19年度のインターハイ予選では準決勝で対戦し、その時は大成がPK戦で粘り強く勝利して、同校初の全国大会出場を勝ち獲ったという因縁のカード。加えて大成のコーチングスタッフは、豊島裕介監督を筆頭に大半が帝京出身という、様々な想いがぶつかり合う中でキックオフを迎えた一戦は、風上の大成が押し気味に立ち上がる。

 前半2分にはMF中村浩太(2年)の左CKから、最後はFW田中ハーディー啓秀(3年)が決定的なヘディングを放つも、ここはゴールカバーに入っていた帝京のMF狩野隆有(3年)が間一髪でクリアしたが、以降もFW原輝斗(3年)と田中の推進力を生かしつつ、シンプルに裏を狙う大成の攻勢が続く。

 ただ、「前半はプランとしてあえて風下を取って、『耐えろ、慣れろ』と。攻められていた方がウチは危機感があっていいよという部分もあったし、前半はゼロでいいと言っていました」と日比監督も明かした帝京は、DF藤本優翔(2年)とDF荻野海生(3年)のCBコンビを中心に、きっちりラインコントロールしながら、保った守備の安定感。その上、17分にはMF並木雄飛(2年)のフィードから、FW伊藤聡太(2年)がマーカーを振り切り、わずかに枠の左へ外れるシュートまで。一刺しの脅威を突き付ける。

 前半終了間際には大成にビッグチャンス。40+5分。原が左サイドで時間を作り、左SBの渡邊広大(3年)は果敢なオーバーラップから、最高のグラウンダークロスを中央へ。逆サイドから飛び込んだMF佐藤真之介(3年)のシュートはゴール右へ逸れるも、決定的なシーンを創出して、最初の40分間は終了した。

「大成高校の勢いが凄くて、自分たちも押されていたんですけど、そこをしっかり耐えて、自分たちの流れにできたかなと思います」と荻野が話した通り、後半は帝京が一気にペースを掌握。11分には左サイドを抜け出したFW齊藤慈斗(2年)が枠内へ収めたシュートは、町田への入団が内定している大成のGKバーンズ・アントン(3年)がファインセーブで阻むも、惜しいシーンを構築する。

 帝京は17分に指揮官も「ウチの看板」と評する中盤のキーマン、MF押川優希(2年)を1枚目の交代カードとしてピッチへ送り込み、さらにアクセルを踏み込むと、26分には再び齊藤が1対1の決定機を迎えるも、ここもバーンズがビッグセーブ。29分にも三たび齊藤がエリア内へ切れ込むも、鬼神のオーラを放つバーンズが超ファインセーブで仁王立ち。ゴールを許さない。

 試合が動いたのは、終了間際の37分。左サイドをドリブルで運んだ伊藤のパスから、上がってきた右SB島貫琢土(2年)が強烈なシュート。バーンズが懸命に弾き出したボールに詰めたのは「キーパーとの1対1を外してしまって、チームに迷惑を掛けてしまった分、点を獲らないといけない雰囲気があったので、自分を信じて、ゴールだけを意識してやっていたら、ボールが目の前に転がってきました」という齊藤。ようやくこじ開けたゴール。帝京が土壇場で先制点を強奪する。

 何とか追い付きたい大成も、2枚代えで最後の勝負に出たものの、40+3分には齊藤と伊藤の連携に耐え切れず、PKを献上してしまう。しかし、伊藤が右スミを狙ったキックは、バーンズが驚異的な反応でストップ。首の皮一枚で踏みとどまると、40+5分にパワープレーのこぼれ球を、DF渡辺誠史(2年)が叩いたシュートは枠の上へ。1点が遠い。

 10番の汚名返上は40+6分。攻めに出たい大成の意識の裏を突き、右サイドでボールを収めた伊藤は、冷静にGKの位置を見極めながらループシュートを選択すると、フワリと蹴り込まれた球体は、柔らかくゴールネットに包まれる。「『焦れるな』ということだけは言っていたので、良いゲーム運びができたんじゃないかなと。後半はスイッチを変えて、その中で点が入ったのも良かったと思います」と日比監督も口にした帝京が、きっちり終盤に2ゴールを奪う勝負強さを発揮して、準決勝へと駒を進めた。

「選手たちも絶対に苦しかったと思うんです。4月26日にアントラーズユースとプリンスリーグの試合をしたのが最後で、そこから2ヶ月近くも公式戦をやっていない訳ですよ。それでも50日ぐらい公式戦の間隔が空いた中で、良くやったなとは思います」と日比監督。その中で6月上旬には、高円宮杯プレミアリーグEASTに所属する市立船橋高と練習試合が組まれたという。

「市船さんに胸を借りて、そこでトレーニングできたのが今日の入りの自信に繋がったのかなと。高体連のトップトップのチームと試合をやらせてもらえたことに、凄く感謝しています」(日比監督)。この日のスタメンで臨み、内容面で一定の手応えを掴んだことが、難しい大会初戦の勝利に繋がったことを指揮官は強調していた。

 帝京は2014年の日比監督就任以降、インターハイでは1回、高校選手権では4回と、計5回も全国大会出場まであと1勝という所まで迫りながら、まだその晴れ舞台への切符を手にしていない。だが、今年の陣容と試合内容を鑑みれば、絶好のチャンスが到来していることは間違いない。

「今日の反省と、良い点をしっかり考えて、この1週間でしっかりまたチームを作り直して、来週の土曜日に頑張りたいと思います」(荻野)「自分たちの力をしっかり出し切って、悔いなく戦って、勝利という二文字を掴めたらいいなと思います」(齊藤)。全国にその名を知られたカナリア軍団の復権は、もう目前まで迫っている。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク

●【特設】高校総体2021

TOP