beacon

前橋育英戦の完敗から得た新たな気付き。実践学園は粘る早稲田実を1-0で下して、準決勝へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

実践学園高はMF渡辺創太(8番)の決勝弾でウノゼロ勝利!

[6.13 インターハイ東京都予選準々決勝 早稲田実高 0-1 実践学園高]

 決して楽な展開ではないゲームでも、1-0で勝利を収めてしまうあたりに、今年のチームの強さがよく現れている。「もっと内容にこだわっていければ、もっとチームも強くなっていくと思いますし、こういう試合を勝ち切れたことは大きいと思います」。絶対的なキャプテンのDF土方飛人(3年)は力強く言葉を紡いだ。13日、インターハイ東京都予選二次トーナメント準々決勝、早稲田実高駿台学園高の一戦は、実践学園が1-0で粘る早稲田実を振り切り、17年以来のインターハイ出場まであと1勝に迫っている。

 ファーストシュートは前半6分。チャンスメーカーのMF村田拓己(3年)が右へ振り分け、上がってきたDF長友星澄(3年)のクロスを、ファーでMF田村英一(3年)がフィニッシュ。ここは早稲田実のGK木庭正太郎(3年)のファインセーブに阻まれるも、まずは惜しいシーンを作ると、9分にもMF和田葵生(3年)の縦パスをFW清水大輔(3年)が残し、村田のシュートは枠の右へ外れたが、実践学園が良い形でゲームに入る。

 勢いそのままに奪った先制弾は14分。清水のポストプレーから、前を向いたMF渡辺創太(3年)は「トラップはちょっとズレたんですけど、ディフェンスがしっかり付いてきているのが見えていて、シュートコースが最初はなかったので、ちょっとずらして股を狙いました」と冷静なステップワークから、ゴール右スミへボールを流し込む。この日はシャドーの位置に入った8番の技ありゴール。実践学園がスコアを動かした。

 早々にビハインドを背負う形となった早稲田実も、右のMF久米遥太(1年)、左のMF中田圭一郎(3年)のサイドハーフの仕掛けに、1.5列目からMF戸坂修人(3年)が関わるアタックで、少しずつ攻撃にリズムが。32分にはFW前田篤之介(2年)が時間を作り、久米のシュートは実践学園のGK齊藤陸(3年)が丁寧にセーブ。得点の可能性を漂わせる一連を披露した中で、前半は実践学園が1点をリードして終了する。

 後半5分は早稲田実。左サイドをSB金指功汰(2年)が駆け上がり、久米が浮かせたラストパスに、金指はわずかに届かなかったものの、躍動感のあるチャンスメイク。25分には実践学園も途中出場のFW丁大修(3年)が裏に流し、走った渡辺がシュートまで持ち込むも、早稲田実のボランチを務めるMF中安亮平(2年)が果敢なタックルで阻止。追加点は奪えない。

 30分は早稲田実にセットプレーのチャンス。左寄り、ゴールまで約25メートルの位置から、キャプテンマークを巻くDF宮寺政茂(3年)が直接狙ったキックは枠を襲うと、齊藤がファインセーブで応酬。見応えのある攻防が繰り広げられる。

 同点を狙う早稲田実は終盤にラッシュ。31分に金指が蹴り込んだ右CKに、ファーへ走り込んだMF関紀信(2年)のヘディングはゴール左へ。32分には左サイドを戸坂が単騎で剥がしてクロス。FW戸祭博登(1年)のシュートは齊藤にキャッチされるも、10番のドリブルに滲んだ勝利への執念。33分にも右サイドから中田がカットインしながら、齊藤にキャッチを強いる枠内シュート。あわやというシーンを作り続ける。

 それでも、「声をしっかり出して、集中力を切らさないということと、実践は1点を守り切るチームなので、そういう所をしっかり意識してプレーしました」とCBの狩野希匠(3年)が話せば、「流れが悪い所で、しっかりゼロで抑え切れたというのは良かったと思います」とは渡辺。最終盤の80+3分に右から宮寺が蹴った渾身のFKは、壁に入ったMF笹原勘太郎(3年)が気合のブロックでストップ。ファイナルスコアは1-0。実践学園が早稲田実をウノゼロで押し切り、準決勝進出を決めた。

 1週間前の6月5日。実践学園は大きな衝撃を味わっていた。東京王者として臨んだ関東大会。初戦で対峙した前橋育英高(群馬)に、1-4と完敗。「正直、こんなに差があるのかというのは感じました」と土方が振り返ったように、一定の自信を持って挑んだ一戦で、その力の差をまざまざと見せ付けられる。

「ヘディングも相手は大きく返してくるんですよ。だから、僕たちはあまり返せなくて、手前に落ちちゃったりして、そこを拾われたりしたので、全体で言うとセカンドボールの処理、個人で言うとヘディングの迫力が足りないなと思いました」(狩野)「パスの質とかも違うんですけど、一番違うと感じたのはセカンドボールとか、球際とか切り替えの部分で、自分たちの強みだと思っていたんですけど、そこで上回られてしまったので、そこは差を感じました」(渡辺)。各々がもう一度自分たちの強みと弱みを見つめ、短期間ではあったものの、トレーニングから、改めて意識改革に着手する。

 効果は確実にあった。「全体でまとまってやろうというのは意識していますね。負けてからは、普段あまり集中できないメンバーも、あの敗戦があったからこそ集中して、意欲的に練習へ取り組むようになりました」(土方)。悔しさは、糧にするために味わうものでもある。この日も決して思うようなゲーム運びができない中で、勝ち切れる守備の安定感と波立たないメンタリティはチーム全体から漂っていた。

 準決勝で対戦する駿台学園高には、関東大会予選で1-0と勝利しており、相手がリベンジと全国切符を同時に手に入れるべく、気合を入れて立ち向かってくることは想像に難くない。「駿台学園さんには1回勝っているんですけど、いつも自分たちは挑戦者という意識でやっているので、甘くゲームに入らないように、最初からしっかり気合を入れてやっていきたいと思います」と渡辺は気を引き締める。

 東京制覇と、屈辱的な完敗と。この1か月強の期間で幅広い経験を積み上げてきた実践学園が、チーム全員で心を整え、駿台学園との決戦に向かう。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク

●【特設】高校総体2021

TOP