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[MOM3503]流通経済大柏DF田口空我(3年)_覚悟が見えてきたディフェンスリーダー。目指すは無失点での日本一

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流通経済大柏高のディフェンスリーダー、DF田口空我(15番)はチームメイトの得点を喜ぶ

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.20 インターハイ千葉県予選決勝 流通経済大柏高 6-0 暁星国際高]

「覚悟が見えてきた。まさにディフェンスリーダーにふさわしいね」。

 試合後、榎本雅大監督が絶賛したように、流通経済大柏高の無失点優勝の原動力となったCB田口空我(3年=ジェファFC出身)の存在感は際立っていた。

 173cmと上背はない。だが、抜群のバネを生かした空中戦の強さと、球際に激しく行ける出足の鋭さ、カバーリングセンスとビルドアップ力と、CBとしての総合能力は高い。スピードもあり、SBの特性も持っているが、榎本監督は将来的にはSBの道も考えつつも、「技術と能力があるあまり、ちょっと淡白なところがあった。それを流通経済大柏のCBという責任ある立場を全うさせることで、精神的にも成長して欲しかった」と昨年からCB固定で起用し続けた。
 
 この指揮官のメッセージを真摯に受け止めた田口は、昨年こそむらっ気が残り、集中力を欠くプレーも見せていたが、今年になると安定感は格段に向上した。

「今年に入って、『俺がいるから大丈夫』と周りに思われるようなCBにならないといけないと思うようになったんです。ただ自分の守備をするのではなく、常に周りの状況を見てコーチングをしたり、『守備を統率するのは自分だ』という意識でやるようになりました」。

 彼のこの言葉通り、今年に入ってからの彼の『声』の質は間違いなくチームの堅守の礎となっている。コンビを組むCB萩原聖也(2年)のポジショニングをコントロールしながら、SBの攻め上がるタイミング、ボランチの立ち位置など、細かくコーチングをしている。

 暁星国際高との決勝戦でも立ち上がりに相手のポジションを見ると、キャプテンのMF渋谷諒太(3年)の「(ダブルボランチを組む)松本のポジションを上げていいか」という提案を受け入れ、ワンボランチになった渋谷の負担を減らすべく、「右にいるぞ!」「後ろにいるから前に出ろ!」と渋谷のポジショニングを声でサポート。

「空我の声によって自分が見えていない場所に気づくことができる。凄く守りやすいし、後ろにあいつがいるからこそ、僕らも前への意識を持ってプレーすることができる」と渋谷が語ったように、まさに『ピッチ上の目』として攻撃的なサッカーを強力サポート。相手のシュートを後半の1本のみに抑え込んで、「大会前から絶対に達成しようと思っていた」予選全4試合クリーンシートを達成した。

 有言実行を果たした彼にとって、忘れられない試合がある。それはプレミアリーグEAST第6節の青森山田高戦。首位を快走する青森山田の前に、前半はスコアレスで折り返すも、後半立ち上がりに自分たちのミスから失点をすると、相手の勢いに押し切られる形で0-3の敗戦。「ボランチと連動して相手の2トップ(名須川真光と渡邊星来)とトップ下の松木玖生を抑えないといけないのに、警戒をしすぎて僕がカバーリングへの意識が強くなってしまい、逆にラインが下がって名須川と渡邊の2枚にボールを入れられてしまった」と唇を噛んだように、自分の未熟さと課題を痛感した。

 青森山田との一戦を機に、田口と渋谷を中心にGKデューフエマニエル凛太朗(2年)も交えてよく話すようになった。守備陣としての意思疎通を深めたこともまた、彼の存在感を際立たせる要因にもなった。

「全国でも無失点優勝を狙っています。そのためには今のままじゃダメだし、青森山田という壁もあるからこそ、より『あいつがいるから大丈夫』と思われる存在になりたい。もうあの時の僕らではないことをインターハイで証明したいと思います」。
 
 たぎる思いがヒシヒシと伝わってきた。4年ぶりのインターハイに向けて、頼れるディフェンスリーダーのモチベーションはこれからさらに上がっていくだろう。それが4年ぶりの優勝の狼煙になるかもしれない。

(取材・文 安藤隆人)
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