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中学1年から憧れていた赤と緑のユニフォームを纏い、正智深谷DF森下巧は全国での躍進を誓う

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正智深谷高のディフェンスラインを束ねるDF森下巧

[6.23 インターハイ埼玉県予選決勝 正智深谷高 1-0 武南高]

 きっちりディフェンスラインを統率したかと思えば、相手フォワードへ向かって、ガツガツとボールを奪いに行くアグレッシブさも頼もしい。「負けていい相手なんていないと思いますし、勝てると思ってデュエルすれば、自分はだいたい勝てるので、本当に気持ちで負けないことが大事だと思います」。正智深谷高のセンターバックを任されたDF森下巧(3年=FCコルージャ出身)は、憧れていた赤と緑のユニフォームを纏い、チームとともに全国の舞台へ乗り込んでいく。

 迎えたインターハイ予選準決勝。近年は全国レベルでもコンスタントに結果を残し、埼玉県内では常に優勝候補として君臨している昌平高と対峙する。「先輩たちが3個上ぐらいから選手権で3連敗していたので、今回も相手が昌平と決まってからは、『絶対に負けたくない』という気持ちで練習していました」。森下を中心にした正智深谷の守備陣は、相手の華麗なアタックに執念で立ち向かう。

 ファイナルスコアは1-0。「自分たちは本当にいつでもチャレンジャーという想いを持って、格上の昌平にも怯まずに、引かないで、前からガンガンプレスを掛けて、ということをできたのが、無失点の要因じゃないかなと思います」と森下。今大会4度目の“ウノゼロ”勝利を最大の難敵相手にも収め、決勝へと勝ち上がる。

「自分たちはチャレンジとカバーが強みで、お互いのことを信頼し合っていますし、小屋の動きや特徴はわかっているので、素早くカバーしてあげるのが自分の役目だと思っています。2人ともサイズがない中でも、息の合ったプレーが特徴で、失点する気はしないですね」。

 全国出場の懸かったこの日の一戦でも、立ち上がりから幅を使ったダイナミックな攻撃を仕掛けてくる武南のアタッカー陣に、センターバックでパートナーを組むDF小屋結世(2年)との好連携で、1つずつチャンスの芽を潰していくと、前半24分にFW山口陽生(3年)が40mロングを綺麗に沈め、大会5試合目にして初めて、前半のうちにリードを手にする。

「いつも終了間際に味方が点を決めてくれていて、均衡状態から『やっと入った』という感じでしたけど、今回は結構早い時間帯に入れてもらったので、逆に自分たちの心にも余裕ができたのかなと思います」。自分たちが失点しなければ、負けることはない。常に抱えてきたその強い気持ちを、1点のアドバンテージが頼もしく後押しする。

 タイムアップの瞬間。森下はピッチへ仰向けに倒れ込んだ。「80分間通して、走り切って、声を出し切って、本当にやり切ったという感じでした」。その左腕には、負傷離脱しているMF寺田海成(3年)から託されたキャプテンマークが巻かれている。「今大会はアイツがメンバーに入っていないので、自分がキャプテンになったからにはやってやろうという気持ちになりました」。5試合連続となる1-0で、全国切符を獲得。役割を果たせた安堵と、大きな目標を達成した喜びが一気に押し寄せ、感情が爆発した。

 中学時代は、高校の先輩でもある日本代表のオナイウ阿道(横浜F・マリノス)も在籍していたFCコルージャでプレー。その頃のある経験が、森下少年の心に刻まれた。「自分が中学1年の時が、正智深谷も選手権で全国ベスト8まで行った代で、試合の観戦にも行っていたので、その時ぐらいから『正智深谷に入りたい』という気持ちが出てきて、『選手権で“ベスト8超え”をしたい』と思って入学しました」。

 1つ上の“先輩”には、大きな感謝の念を抱いているという。「大塚(天翔)くんには仲良くしてもらった中で、自分は去年の選手権メンバーに運良く入れたんです。その時の先輩たちは本当に上手くて、実際対峙して見ると通用しない部分もあったんですけど、大塚くんにしっかり指導してもらったことが今に生きているんじゃないかなと思います」。全国大会でのピッチでは、指導を仰いだ大塚の分も躍動することを、自身に誓っている。

 中学生の頃から憧れてきた赤と緑のユニフォームへ袖を通すからには、晴れ舞台でも簡単に負ける訳にはいかない。「自分たちは守備のチームで、1人1人が粘り強くて、我慢強くて、戦える選手が多いので、それが大きいと思います。全国では『絶対負けない』という気持ちで、無失点で勝っていくのが理想ですね。阿道くんの代はベスト4まで行っているので、“ベスト4超え”を狙いたいです」。

 冷静と情熱を同居させることのできる、魂のディフェンダー。森下が信頼のおける仲間とともに強固な高い壁をゴール前に築き続ける限り、正智深谷を倒すことは、どんな相手にとっても困難極まりない。

(取材・文 土屋雅史)
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