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“挫折”経験したことも前向き。神村学園MF大迫塁はより上を見据えて変化し、覚醒中

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“覚醒中”の注目レフティー、神村学園高MF大迫塁

“挫折”が進化の原動力になっている。7月、インターハイへ向けた神村学園高(鹿児島)のトレーニングでMF大迫塁(2年=神村学園中出身)が特に目立っていた。U-17日本代表候補の技巧派レフティーは、ミニゲームで「常に最終局面から見ているので、近くは反射とかで何となく見えるので。一番チャンスのエリアをずっと見ながらプレーしていると空いてくるところが自然と見えてくる」という視野の広さと技術力を表現。「トラップして相手が準備しようとした瞬間に出すプレーは得意」と語るテンポの速いパスや、チームメートも驚くようなスルーパス、そして鮮やかなループシュートでのゴールで違いを示していた。

 プロ入りや、代表入りするような選手は高校時代、普段のチームトレーニングでも目立っている印象だが、大迫もそのステージにいる一人。本人も成長を実感し、周囲の評価に自分の実力が追いついてきている感覚を口にしていた。

 神村学園中時代から年代別日本代表の主力を務めてきた大迫は昨年、非常に大きな注目の中で高校サッカー生活をスタートした。日本代表FW大迫勇也(鹿児島城西高出身)を輩出している鹿児島県から現れた“新たな大迫”。同じレフティーの青森山田高MF松木玖生(現3年)が高校1年目の選手権で大活躍したこともあり、期待感は大きかった。

 入学直後から神村学園のエース番号である14を背負い、選手権16強入りに貢献。だが、内容は明らかに物足りなかった。成長を促すために強度の高いトップ下で起用されていたが、高校サッカーのプレッシャーの速さの中で終始“まあまあ”のプレー。選手権で結果を残し、今年に入って日本高校選抜、U-18日本代表候補へステップアップした盟友、FW福田師王(2年)とは明暗が分かれていた。

 チームで公式戦に出続け、年代別日本代表にも継続して選出されていたこともあり、まだ危機感は無かった。だが、同時に「チャレンジすることにも躊躇してしまっていた」。自分でシュートを打てる状況でもパスを選択。だが、その結果、選手権などで活躍できないまま1年目を終えてしまう。
 
「今まで、挫折みたいなものがなかったんですよ」

 これまで壁にぶつかるようなことがなかった。昨年1年間に関しては、自身の進化も感じづらかったという。これまで大迫は常に世代の先頭を走ってきたが、福田に先を行かれる形となった。サッカー人生で初めてと言える“挫折”を経験。だが、本人はプロへ進む前にこの経験ができたことに前向きだ。加えて、先を見据えてトレーニングしてきたMFは、“覚醒”の瞬間を迎えようとしている。

「凄い選手の動画とか見ていたら、自分の意識の低さとかめちゃくちゃ感じるので。彼らは成功のために失敗を多く繰り返している。ここ(現在いる環境)でできるためではなくて、上で成功するために、プレッシャーなくてもすぐシュートを打ってみたりとか。その姿を見て、確かにそうだなと」。

 先人たちのように、慌てずに上のレベルを意識した取り組みが今、自身に成長を実感させている。インターハイ鹿児島県予選決勝では延長戦で決勝点となる左足ミドル。プリンスリーグ九州では得点ランキング5位タイの4得点、アシストランキングでは首位タイの5アシストを記録している。

「結果ではまだ物足りないんですけれども、自分の中では成長している感覚がある。もっとやれる部分があると思うので、突き詰めていきたい」。評価を得ていた中学時代は「自分の感じたのと周りの評価が違った」という。だが、現在は評価に自分の実力が追いついてきた手応えがある。次は全国大会で結果を残すだけだ。

「自分がいかにボールを持つかというのが神村の勝利の鍵。プロで活躍するというのは大事ですけれども、選手権とか(高校の大会)で活躍できなかったらダメだと思う。いかに自分を出して自信を持ってやれるかだと思う。もちろん、自分が結果にこだわりながらですけれども、まずはチームが勝つことのために自分が何できるか考えながらやれたら。神村学園の勝利のためにやりたいです。正直、(優勝も)行けると思います」。神村学園初の全国制覇へ。“挫折”を感じた1年から成長を遂げた大迫が、日本一へ導く。

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(取材・文 吉田太郎)
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