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自称「スロースターター」実践学園、後半終盤に一挙3ゴールで高知中央を突き放す!!

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実践学園高は後半終了間際にFW牧山翔汰(9番)が決めて3-0。(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.14 インターハイ1回戦 実践学園高3-0高知中央高 三国運動公園人工芝グラウンド]

 令和3年度全国高校総体「輝け君の汗と涙 北信越総体 2021」(インターハイ)サッカー競技(福井)1回戦。三国運動公園人工芝グラウンドでの第1試合は、実践学園高(東京1)と、高知中央高(高知)が対戦。前半は互角も、後半に得点を重ねた実践学園が3-0で勝利した。実践学園は16日、三重高(三重)と2回戦を戦う。

 コロナ禍に加え、夏の猛暑……ではなく大雨の影響で前日にキックオフ時間変更が伝えられるなど、難しい対応を迫られた初戦。しかし、両チームとも緊張は隠せずともいきいきとしたプレーで試合が始まった。

 高知中央はボールの寄せを早く、奪った後はシンプルへ前を目指すことで圧力をかける。相手陣内深くでスローインを得れば、両SBがロングスローでプレッシャーをかける。近藤健一朗監督は「立ち上がりはシンプルに相手コートでプレーすること、相手の両SHがスピードに乗る前にアプローチすることをミーティングから話していました。お互いにゴール前までボールを運んでシュートまでいけていたシーンがあったと思います」と手応えを感じた前半だった。

 対する実践学園の深町公一監督は「緊張とピッチ状態の難しさも加わりなにもかも空回りしてた」と振り返る。「うちはスロースターターといいますか。逆に、最初調子がいいと前に出てしまいやられてしまうことが東京でもありました。それで失点することで崩れる。一方でうまくいかないと、守備の意識を高めることから始めるので逆に失点しない。そのうち相手が前に出てくるので、そこで高い位置でボールを奪うとリズムが出てくるんです」

「らしいといえばらしい」と深町監督が苦笑した実践学園の前半。本来は中央をコンパクトにして選手同士の距離を狭め、中盤でボールを奪うことから活路を見出すところが、GKからのビルドアップを意識したことで最初から陣形がワイドに広がってしまったことが原因と分析した。

 その点を修正した後半、チームが変わる。選手交代などをしつつリズムを変えていき、飲水タイム後の後半23分、途中出場のFW牧山翔汰(2年)のクロスをMF渡辺創太(3年)が頭で合わせ先制ゴール。これで勢いづくと、7分後には右CKからつなぎ、シュート性のクロスをまたも渡辺が押し込んで追加点。終了直前の35分にはFKのボールを今度は牧山が右足で合わせ、GKの頭上を抜くダメ押しゴール。後半ラスト7分間で3ゴールを挙げて見せた。深町監督は「後半投入した牧山が前線で走り回って起点作ってくれたり自分で点も取ってくれました。チーム唯一の2年生のあの子はポイントだったかなと」と嬉しそうだ。

 逆に高知中央の後半は、前半の寄せの勢いが影を潜めてしまった。左サイドに入るMF米崎希星(3年)がテクニックを活かして攻撃の起点として奮闘するも単発。じつは近藤監督が試合前に指示していたことがもうひとつあった。「相手が蹴ってくる長いボールに対するケア」だ。しかし結果は対応しきれず失点。「結局、前半は相手の守備力の高さを崩せず、後半にセットプレーからやられてしまった。相手の大きさ、高さ、強さは警戒していましたが」と悔しそうだ。「監督3年目で監督として初めて全国大会に連れてきてくれた選手たちにいい思いをさせてあげられなかった。少しでもボールを大事にする自分たちのサッカーは表現できたと思いますが、ロングボールの処理という課題も出たのでこれから修正していきたいと思います」

 勝利した深町監督は「この試合の開始までがまずひとつの戦いだった」と本音を明かしてくれた。「特にインターハイ出場を決めてから今まで、チームはもちろん関係者全員に感染対策を徹底してきて、これは本当に大変でした。これはみなさん同じだと思いますが、東京は特にリスクが高いですから…。いつどうなるか分からないけれど、やれることだけはやっておこうと。まるで練習で言うことを感染対策にも当てはめて。ある意味練習以上に取り組んできました。だから試合開始までがまず目標で、それを達成してから結果を出そうと…。そういう意味ではこの1勝は大きかったと思います」。いつもとは違う総体。訪れるのは歓喜よりも安堵か。いまだ渦中での戦いは続いていく。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校総体2021

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