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[MOM3554]旭川実DF柏木楓雅(3年)_背番号3のフォワードが「観察と本能」の合わせ技で決勝ゴラッソ!

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3番を背負う旭川実高のDF柏木楓雅は決勝弾で勝利に貢献!(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.15 インターハイ1回戦 新田高 1-2 旭川実高 テクノポート福井総合公園芝生広場]

 3番を背負って最前線に投入されたフォワードが、利き足とは逆の左足で振り抜いたミドルシュートは、綺麗な軌道を描いてゴールネットへ吸い込まれていく。突然生まれたゴラッソ。だが、本人の中には観察に基づいた確信があった。「前半の自分はベンチでキーパーの位置を見ていても、ちょっと高めにいたんですよね」。旭川実高(北海道1)のセンターバック兼センターフォワード。DF柏木楓雅(3年=旭実FC出身)が、この日はフォワードとしてゴールという結果で、鮮やかに主役の座をさらっていった。

 前半3分にセットプレーからキャプテンのDF中村大剛(3年)のゴールで先制したものの、後半に入るとやはりセットプレーから失点。スコアを振り出しに引き戻された旭川実は、23分に2枚代えを敢行する。

 MF領家滉人(3年)とともにピッチへ解き放たれたのが柏木。メンバー表ではDF登録になっていたが、向かったポジションは交代したFW門馬誇太郎(3年)と同じフォワード。「監督からは『しっかり前で収めて、自分で行けるところは行っていいよ』と言われていましたし、途中交代は期待されて出されていると思っているので、しっかりゴールを決められるように準備して入りました」。自分の為すべき役割を整理して、その時を虎視眈々と狙う。

 31分。最終ラインでDF串田優斗(3年)とDF渋谷一樹(3年)が残したボールは、柏木の足元へ届く。ゴールまでの距離は約35メートル。普通に考えればシュートレンジとは言い切れない位置だったが、「いろいろな意味で“動物”みたいなヤツなので。どこからでも打つし、どこにでも行くし、みたいな(笑)。そういうところはたぶん本能ですね」と富居徹雄監督も独特の表現を用いた“本能”が、突如として左足に宿る。

「ちょっとキーパーに止められそうな予感はしたんですけど、綺麗に入ってくれて良かったです。自分が持った時に、相手のディフェンスが一歩下がって距離を取れたので、打ったら入りました」。

 にわかには信じ難い一撃に、チームメイトも叫び声を上げながら殊勲のスコアラーへ全速力で駆け寄ってくる。「普段はセンターバックとフォワードの両方をやっていて、フォワードで出る時はだいたい点を獲れています」と胸を張った柏木のゴラッソがそのまま決勝点。旭川実が厳しい接戦をモノにして、2回戦への進出権を勝ち獲った。

 もちろん指名されたポジションで全力を尽くすことは言うまでもないが、併用されている2つのポジションで言えば「点を決めて活躍したいので、フォワードの方がやりたいです」ときっぱり。ただ、この日のゴールを見てしまえば、やはり指揮官もまたフォワードで起用したくなるはずだ。

「自分はサッカーをやってきて、全国大会は初めてでしたし、その試合でゴールを決められて勝てたので、まずは安心しました。メチャメチャ嬉しいですね」。

 チームも、監督も、そして誰よりも柏木自身が、ゴールの確かなイメージを脳裏に刻み込んだ。果たしてDF登録の3番が、どのポジションに投入されるのか。2回戦以降の旭川実を見る時には、富居監督が下す決断にもより注目する必要がある。

(取材・文 土屋雅史)
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